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とうほくIPPOプロジェクトレポート -ふっくら布ぞうりfrom陸前高田、南三陸、石巻、東松島-

シリーズ11回目のレポートは、第1期の支援先、布ぞうりの製造・販売を行う「一般社団法人あゆみ」の代表理事 工藤 賀子(くどう のりこ)さんと、理事の相沢 由佳(あいざわ ゆか)さんにお話をうかがいました。
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被災地の編み手の方々と、支援するスタッフの思いがこめられたあゆみの「ふっくら布ぞうり」は、たくさんの布がしっかりと編み込まれていて、厚手でふかふかです。

「布ぞうりが、大切な誰かへの”とっておきのプレゼント”として選んでもらえる。そんな存在になれるよう、大切に育て、売り続けてゆきたい。そしていつか、布ぞうりのファンクラブを作りたい!」

そう語ってくださったのは、代表理事の工藤 賀子さん。
工藤さんは震災後、ふんばろう東日本支援プロジェクト(以下ふんばろう)という被災地支援の団体に参加し、活動していました。2011年8月に宮城県南三陸町でふんばろうが開催した布ぞうりの講習会をきっかけに、被災地で布ぞうりの編み手を育成し、作品を販売するプロジェクトがスタート。都内のイベントなどで布ぞうりを販売すると、たちまちに売り切れに。その販売に参加した工藤さんは「この商品には可能性がある!」と確信したそうです。
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(写真左:理事の相沢さん 右:代表理事の工藤さん)

「繰り返し洗って使えて、健康的な布ぞうりは、大切にしたい和文化のひとつ。だからこそ、スリッパと同じくらい市民権を持たせたい。」

そう語る理事の相沢さんは、ファイナンシャルプランナーとして陸前高田市の被災者支援にたずさわっていました。
仮設住宅に住むお母さんたちから、手仕事で収入を得られるようになりたいと相談を受け、同時期に南三陸の布ぞうりの評判を聞いたことをきっかけに、2012年1月、工藤さんや布ぞうりのプロジェクトを支援するボランティアの方々とともに、陸前高田市で布ぞうりのワークショップを開きました。

「布ぞうりを編めるようになった方から、これでボランティアさんにあげるものができた、と言われたことがとても印象的でした。」と相沢さんは教えてくださいました。

「岩手県は、おすそ分けやお返しの文化が根付く地域です。しかし街にはまだ、お土産を買えるような店はまったくありませんでした。せっかく来てくれたボランティアの方にお礼のひとつも渡せないことを心苦しく思われていたお母さんたちにとって、自分たちが手づくりしたものをプレゼントできることは、大きな喜びだったのです。」

工藤さんと相沢さんは、布ぞうりの編み手の育成や販売に関わる中で、このプロジェクトを長く続けていくためには、ボランティアに頼るだけではなく、現地の人が続けられる仕組みを作らなければならない、と考えるようになります。

「ボランティアは、いつ終わってしまうかわからない不安定なものです。編み手のお母さんたちが安定的に収入を得られるようにするために、法人化し、利益の出る会社にしたいと考えました。」(相沢さん)

IPPOプロジェクトへのエントリーは、おふたりの思いを実現させる大きなきっかけとなりました。IPPOプロジェクトからの助成金は、一般社団法人設立の際の登記料やホームページの立ち上げ費用、現地へ通うための交通費などとして活用され、2012年11月7日に会社組織としてスタートしました。

現在は、被災地の布ぞうり職人会「ふっくら布ぞうりの会」に所属する5つの編み手チームの活動を支援し、布ぞうりの販売を行い、また支援者のチーム「ふんばろう布ぞうりサポーターズ」の運営を行なっています。布ぞうりの編み手は25名にまで増えて、南三陸町と陸前高田市に続き、石巻市や東松島市でも編み手が育っているそうです。
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あゆみの「ふっくら布ぞうり」は、厚手で、洗っても型崩れしない丈夫なつくりと、中に入っているロープを内側で始末していることで見栄えよく美しく仕上げられている点が大きな特徴です。被災地支援という背景も大切ではありますが、品質がよく、気に入ったから買おうと思ってもらえるよう、編み手の育成に時間をかけ、高い品質を維持することに特に力を入れられています。

「ワークショップを一度受けてもらっただけでは、販売できるレベルの布ぞうりは編めません。何足も練習し、細かな指導を受け、ようやく品質の高い布ぞうりが編めるようになります。当初は、作った布ぞうりを東京に送ってもらい、直すところや注意点を書いて戻すということを何度も繰り返しました。」(工藤さん)

そして、修業中の編み手さんが編んだ布ぞうりの販売先と、材料となる古着のTシャツを安定的に確保するために、あゆみでは企業や団体に向けて「循環型支援」を呼びかけています。

修業中の編み手さんたちは、古着のTシャツをリサイクルして布ぞうりを編んでいます。
1足作るのに、メンズサイズのTシャツで3~4枚分が必要です。材料となるTシャツを社内や地域で回収してもらい、被災地の編み手に送ってもらう、その布で作られた布ぞうりを支援先に送り、社内や地域で販売会を行ってもらう、というのが循環型支援です。修業中の編み手さんにとっては、自分が編んだ布ぞうりが売れることでモチベーションがあがり、支援側はリサイクル活動と被災地支援のどちらも行うことができます。

「法人化したことと、定期的に素材の提供と社内販売会を開いてくれる企業が出てきたことで、編み手も増え、安定した生産量を確保できるようになりました。また後進の育成やフォローも、現地で育った編み手さんの横のつながりでできる体制が整ってきています。」(相沢さん)

次の目標は、付加価値のある新商品を企画することだそうです。これまでにも、ロックフェスでアーティストとコラボレーションした布ぞうりをオリジナルで製作し販売したり、猫柄の鼻緒がついた布ぞうりを猫カフェで販売したりするなど、さまざまな取り組みを行っています。

「放っておいても売れる販路なんてありません。大切なのは企画です。そこにある売り場、そこにいるお客さまにとって価値のある商品を企画し、ご提案していきたいと思っています。」(工藤さん)

「会社組織として続けてゆくには、収益性が大切です。品質の維持と量産体制の維持のためにも、新しい商品の開発には、今後もっと力を入れてゆきたいと思っています。」(相沢さん)

あゆみの「ふっくら布ぞうり」について、詳しくはこちらから
>> http://www.fukkura.jp/

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