「とうほくIPPOプロジェクト」支援先活動レポートシリーズは、第3期の支援先であるまごころ就労支援センター「mago×Lab」小谷千恵さんに、お話をうかがいました。
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2011年の震災のとき、最も早い段階で被災地での情報、ボランティアスタッフの整備と調整を行った「遠野まごころネット」。今まで約9万人のボランティアスタッフを受け入れ、岩手県遠野市をベースに釜石市、大槌町、陸前高田市など被害の大きい地域で復興活動を行って来ました。
まごころ就労支援センターは、障害をもつ人たちに目を向け、自立に向けた支援を目的とした遠野まごころネットの新たな事業として2013年に立ち上がりました。小谷千恵さんは旦那さまの雄介さん、遠野まごころネット理事長の臼澤良一さんをはじめ、多くの人に支えられながら新事業のリーダーとして約3年間活動をされてきました。雪国で暮らしたことが今までなかった小谷さんは、釜石で4度目の冬を越しました。小谷さんに現在の活動についてお聞きしました。
一番大切なことは続けることです
■まごころ就労支援センターを立ち上げるまでのことを教えてください。
震災当時、私たちは静岡に住んでいました。震災直後に主人が先に岩手県にボランティアとして入り、遠野まごころネットの下で活動していました。長期間帰って来なくなったので、私もこちらに何度か来てボランティアに参加したんです。そのうち、主人がいい物件を見つけてきて、それなら、引越そうとことで、2012年に思い切ってこちらに来ました。翌年の春、大鎚町議会で就労支援センターを作るべきだという意見があがりました。何もしないでいると気が滅入ってしまう人たちに、手仕事などの働く場を作ることが大切だと臼澤さんは考えていて、遠野まごころネットではずっとその礎を作っていたんです。それならばそれを私たちが立ち上げようということになったんです。そのとき、主人がゆうちょ財団の方より女性向けの支援プログラムがありますと紹介していただいて、とうほくIPPOプロジェクトに申請しました。彼は神戸出身ですからフェリシモのことはよく知っていました。神戸で震災に遭った時何もできなかったことをずっと気にしてきたから、震災直後に被災地に動いたんです。
■実際に立ち上げてどのように活動を進められたのですか?
当時は、福祉の知識もありませんでした。盛岡市の就労支援をされている団体のところで実習させてもらったり、自治体に提出するべき書類や申請方法のことも教えていただきましたが、それは嫌だったんです。いろいろ調べていくうちに、自分たちのビジョンが見えてきたとき、誇りをもって活動できるような仕事づくりの場にしたかったので、企業の下請けではなく、自主製品を作る場にすることを決めました。とうほくIPPOプロジェクトの支援金でこの場所の改修と地元の業社から職業用のミシンを購入しました。誰も職業ミシンを扱う事ができなかったので、業社さんから使い方を教えていただくところから始めました。2013年の夏にここの施設を開業してみたのですが、最初は誰も見学に来なかったんです。3ヵ月くらい経ちやっと1人、最初の半年で約5人くらいでした。今ではここで働いている人は22人になりました。
■事業を立ち上げて3年がたちました。このプロジェクトを続けてきた中で、
大切なことは何だと思われますか?
そうですね……。根気づよく続けていくことでしょうか。ここにいる人たちは障がいをもった人たちです。昨日出来たことが、今日は出来なかったり、心の病の人は突然休むこともあります。最初は苛立ったりもしていました。でも、私が心がけていたことは、ここで作業をしている人に孤独な思いをさせてはいけない、独りにはしないということでした。作業が出来たときは一緒に喜び、達成した喜びを味わってもらうことが大事だと思ったんです。そんな風にみんなの顔色を見ながら日々過ごして行くと、週一回しか来なかった人が週五回来るようになったり、笑顔が増えて来たりと徐々に変わってきました。
■これからとうほくIPPOプロジェクトの支援を受けようとする女性にメッセージを
お願いします。
最初にこの申請を受けようと言ったのは主人でした。申請書に書いた当初の内容ではありませんが、それでも続けていくうちに軌道修正して道は開いて行きます。困ったときに助けてくれる人は必ずいます。あとは、続けて行くためには自分の心が折れないようにすることも大切です。たまにはお化粧したり、マニュキアしたりして出かけたりして気分転換しています。
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遠野まごころネットが目指すのは、一度壊れたコミュニティーをもう一度築くこと。今度、助け合いセンターという新しい施設に引越すことが決まりました。そこは地域の人たちも集まって、みんなでモノ造りができる場所になるそうです。今まで経験したことのない就労支援センターで、チャレンジとしなやかに軌道修正を重ねながら、一歩づつプロジェクトを膨らませてきた小谷さん。〝しなやか〟であることの強さを教えていただきました。
mago×Labの商品は、ジュエリー販売をしていた小谷さんの目をクリアしたものだけが納品されます。洗濯バサミのねこぴんち、ポケットティッシュケース、ブックカバーと多彩。遠野まごころネット、丸井各店などで購入できます。
作業をするスタッフ。現在はスタッフをいれて20人。事業もふくらみ、手狭になってきたそうです。
支援金で購入した機材の一つ。毎日、フル稼働中。
「今でも大切に使わせていただいています。メンテナンスで部品を地元のミシン業社さんから購入することも、地域とつながりをもてることが嬉しいんです」と小谷さん。
小谷さんもここで4度目の冬を過ごしたそうです。小谷さんと遠野まごころネット理事長の臼澤さん。
釜石の港近くはまだ大規模な工事が行われていました。「目に見えるものが出来たから復興ではなくて、目に見えない復興はまだこれからもずっと続くんです。「〝最大級で最上級の幸せ〟を求めて何ができるか」臼澤さんの言葉が残ります。
【2016年取材:羽鳥靖子(ライター)】
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遠野まごころネット/まごころ就労支援センター >>> 詳細はこちらから
◆「とうほくIPPOプロジェクト」の第7期事業を募集中です。 (~10月2日まで)
以下のページをご参照願います。
http://www.felissimo.co.jp/s/tohokuippo7/
または、「とうほくIPPO」と検索してください。
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