シリーズ第9回目のレポートは、宮城県 東松島市、支援対象事業名「ひまわり元気プロジェクト」の代表 内海 聡子さんを訪ねました。
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― グループ名の「おがるスターズ」とは、どんな意味なのですか?
「おがる」は育つこと、「スターズ」は英語の星ではなくてこの辺のなまりで「人たち」のこと、成長する人たち、 という意味でつけました。この”グリーンタウンやもと”は、東松島市の中でいちばん最初にできた仮設住宅です。
そのため、支援物資や、ボランティアの人たちが開設当初から数多く集まる場所でした。
最初は、支援物資が届いても置き場がないということで、まだ自治会も組織されていなかったのですが、市にかけあって集会所の鍵を開けてもらって、物資の保管場所に使わせてもらいました。
そして、引きこもりがちな住民たちが気軽に足を運べるようにと、集会所の中に「みんなの図書室」を作りました。管理は私たち住民の何人かで自主的に行い、9時半から夕方5時頃までは誰かが常駐することにしたのです。そのことで、住民の人たちも集まりやすくなり、「この仮設に来れば必ず窓口になる誰かがいる」ということでボランティアや視察の人たちも大勢訪れるようになりました。
― さまざまな復興グッズを手作りするようになったのは、どういう動機からですか。
ボランティアの人たちや有名人の訪問など、たくさんの方がこちらを訪ねてくれたのですが、せっかく来てくれても、このあたりにはお土産を買う店もなにもありませんでした。
感謝の気持ちを添えて、ここに来たという証しになるようなものを持って帰ってもらいたいなあ、と考えたのがきっかけです。
最初は、折り紙を折って色紙に貼って渡していました。裏には、被災したこの町のことや、仮設に暮らす私たちの気持ちなどをメッセージにして書き添えました。
そのうち、買わせてください、という方や、地元に持ち帰って被災地支援のグッズとして売りましょうという方が出てきました。
私たちの活動はみんな自腹で、なんの資金援助もなしにやっていました。集会所で開くお茶会や誕生会など、イベントをするにもお金が必要です。では、活動資金を得るためにも、売れるものを作って販売しよう、と本格的に手作り品の製作に取り組み始めました。
折り紙の次は、しじみの貝殻をくるんだかわいいストラップを作りました。こちらは、あちこちのお寺の社務所などにも置いてもらっています。ほかにも支援物資として寄せられた着物や洋服の布地をつかって、ブックカバーやつまみ細工の花、などみんなのアイディアでつぎつぎと、みなさんに買っていただけるような商品作りを進めてきました。
― みなさん、手仕事をしながら楽しそうですね。
せまい仮設住宅の中で一日中ひとりで暮らしていると、将来への不安で押しつぶされそうになります。
でも、みんなで集まっておしゃべりしながら手作業するのは、楽しい時間です。だれもが同じような悩みを抱えた被災者だから、かえって気を遣わないで済むのかもしれません。30代のお母さんグループは子育ての話、60代以上は健康上の話など、それぞれの話題でおおいに盛り上がっています。
― これからどんなことをしてきたいですか。
支援のために買ってくださる、というのはとてもありがたいことなのですが、商品そのものが魅力的だから、欲しい、買いたいと思っていただけるものを作っていきたいと考えています。今は、20種類ぐらいあって、中には美術大学の学生さんがデザインして、私たちがていねいに手作りした獅子の小箱など、人気の商品もあります。
ここは、仮設住宅ですから、やがてはみんな出て行って、もとの更地になる場所です。新しい生活に歩み出せるというのは、いいことです。ここでの活動にも、終わりがあることが前提なので、そのことを念頭に、限りある期間を精一杯頑張って、やりたいことを実現させる資金作りに励みたいと思っています。そして将来、この場所でつながった関係を大切にして、みんなが前にむかって共に歩んでいければと考えています。
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「とうほくIPPOプロジェクト」では、第3期の募集(2013年10月末まで)を行っています。責任者・主体者メンバーが女性であることを条件に事業提案を公募し、審査の結果選ばれた個人・団体に支援金を支給して、被災地の産業復興のきっかけづくりにつなげることを目的としています。
詳しくはこちらをご覧ください。
(取材協力:シュープレス)
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