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とうほくIPPOプロジェクトレポート ―チーム王冠(宮城県 石巻市)―

シリーズ第8回目のレポートは、石巻へ、第1期の支援対象事業名「チーム王冠」の代表志村 知穂(しむら ちほ)さんを訪ねました。
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― 志村さんは神奈川県から石巻市に来て、支援活動を続けてらっしゃると伺いました。

宮城県に母の実家があり、私自身も仙台で輸入雑貨の仕事をしていたことがあります。祖母が田代島出身で、石巻には親戚がたくさんいたので、最初はその安否確認と、何か困っていることがあれば手助けしたいと思ってこちらに参りましました。

当初は、食べ物がない、赤ちゃんのおむつがない、そうした個別のSOSに応じて物資を調達して届けようとしましたが、保管場所がなかったり、分配する人手が足りないなど、現場は必要なものが必要としている人のもとに届かないというミスマッチが起こっていました。
― せっかくの支援物資が、有効に使われていなかったのですね。

避難所に入れた人たちはまだよかったのですが、いわゆる在宅の被災者は、災害後1ヶ月経っても想像を絶する悲惨な状況でした。水や食べ物の配給は届かない、泥やがれきが散乱し水もまだ引かない中、かろうじて居場所がある2階に身を寄せ合い、濡れた布団で寝起きする生活。衛生状態も最悪で、悪臭とハエに悩まされる劣悪な環境でした。
― 1ヶ月経ってもそんな状況だったのですか。

まさかここに人はいないだろう、という倒壊家屋にも助けを待ちながら大勢の人が住んでいました。実態が分かるにつれ、これは早急に対策が必要だと思い、こちらで知り合った、志を同じくするふたりの仲間とともに、在宅被災者の救援を中心に支援活動を始めました。それから2年半、毎晩欠かさずにミーティングをして、問題点を共有しながら現場にとって必要な支援を模索しています。
― 時間の経過とともに、必要とされる支援の内容も変わってきてるのでしょうね。

現地の人が今、何をいちばん必要としているか、私たちは常にそこに目を向けることが大切だと考えています。当初はばらばらで実態が把握できなかった在宅の被災者の状態は、地域ごとにグループを作り、取りまとめできる人材をリーダーにして、困っていることや欲しいもの、煮炊きができているか、など細かな調査を行いました。これによって、ガス台や炊飯器など、その家で本当に必要としているものを届けることができました。

食事や衣類が不足していた当初の状況は解消されてきましたが、時間が経つにつれ、違う問題が出てきています。
そのひとつが、子どもたちの放課後の過ごし方です。地域の小学校を対象にアンケート調査をしたところ、子どもたちの生活は被災後一変し、現在も友達と遊んだり、習い事をしたりという以前の状態にはまったく戻っていないことが分かりました。

狭い仮設住宅と学校の往復だけで毎日が過ぎ、子どもたちにストレスがたまっていることも見てとれました。仕事に出るお母さんたちも増え、子どもたちが夕暮れまでひとりでいるのが心配だ、という声も多くあったのです。
― 子どもたちが子どもらしくのびのび暮らせていないのですね。

そこで始めたのが「放課後ひろば」です。このプレハブは2教室分ほどの広さがありますが、建築資材が不足している被災地周辺では調達が難しく、東京から中古のものを運んでやっと完成させることができました。費用も予想以上にかさんだので、「とうほくIPPOプロジェクト」の支援は本当にありがたかったです。
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こちらでは、放課後毎日小学生が集まってきて、宿題を終わらせたあとは、友達と思い思いに遊んでいます。そろばんや英語の教室も随時開催し、みんな楽しみながら勉強しています。
 
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先日は、統廃合で今年限りでなくなってしまう小学校の生徒たちが、この場を使ってお別れ会を開きました。地域の人たちが集まって手仕事をする場所にもなっています。
 
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今後はますます、物質的な支援から心のケアに支援の重点が移ってくると思います。子どもが安心して過ごせる場所をこれからもいっそう充実させていきたいと考えています。
 
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「とうほくIPPOプロジェクト」では、第3期の募集(2013年10月末まで)を行っています。責任者・主体者メンバーが女性であることを条件に事業提案を公募し、審査の結果選ばれた個人・団体に支援金を支給して、被災地の産業復興のきっかけづくりにつなげることを目的としています。

詳しくはこちらをご覧ください。

(取材協力:シュープレス)
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