「とうほくIPPOプロジェクト」支援先活動レポートシリーズは、第4期の支援先である「南三陸ツーリズムネット」高橋未來さんに、お話をうかがいました。
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2011年3月11日。大阪にある建築設計会社で働いていた高橋未來さんの事務所も大きく揺れたのだそう。〝何かできることはないだろうか?〟と漠然とした想いを抱いたその日から5年後の2016年の夏。とうほくIPPO第4期の支援を受けて藍の栽培をベースにした事業をスタートした高橋さんのいる南三陸町を訪ねました。高橋さんは、このまちの人たちと共にまちの未来を明るく広げるまちづくりのプランを私たちに話してくださいました。
生まれは東京。職場は大阪。縁もゆかりもなかった東北が活動の場所に。
■南三陸との出会いは何ですか?
震災後、直ぐにでも現地入りしてボランティアに参加したかったのですけど、実際に気仙沼を訪れたのはその年の夏休みの4日間だけでした。畑の中の小さながれきやガラスを取り除く作業だったのですけど、実際に自分の目で確かめられてよかったです。当時メディアでは哀しい場面ばかりが取り上げられていましたが、気仙沼で感じたことは〝震災でたくさんの哀しみを背負ったこの場所で暮らし続けることを決心して、前へ進もうとしている人たちがたくさんいる〟に心が打たれました。もともとまちづくりに携わっていきたかったので、何か東北でそのような仕事に携わりたいと思い、仕事を探したんです。そしたらある機関を介して南三陸町の観光協会の窓口の女性に会いました。そのかたのまちづくりに対する考え方に共感して、「この方と仕事がしたい!」と思い、その日の夜にはここに来ることを決めていました。当時、任期は一年間となっていたんですけど、2~3ヵ月このまちに住んでみたら、すっかりまちの人たちにすっかり魅了されてしまったんです。当時はまさかここで起業することになるなんて予想もしていませんでしたから。
■藍をテーマに起業することになった背景は何ですか?
南三陸町の観光協会に携わってからまちの人たちと話していくうちに、震災による復旧復興よりも前にこのまちが抱える潜在的な地域課題がみえてきました。人口減少や少子高齢化による耕作放棄地問題。このままこの問題を解決しないでいくと学校の存続も、さらにはまちの存続自体も厳しい。海も山も里もあるすばらしい場所です。そして、豊かな自然の中で生きている人たちのエネルギーに私はどれだけ勇気づけられたことか……。なんでこんなにパワーがあるのだろうって思うのです。こんな魅力的な人たちが暮らす、この自然豊かなまちを残して行きたい。次第にこのまちが抱える課題を解決していきたいって思うようになりました。それには、女性が子育てをしながら働けて、持続可能な事業を立ち上げる必要があります。まずは、有志数人で耕作放棄地の再生から土作りを始め、野菜を植えたのですが、折角やるならば地域をつなげるものがいいんじゃないかと考えるようになりました。そんな中、仲間の一人が藍はどうかと提案したのです。馴染みのなかった藍をいろいろ調べていくと、古くから日本各地では栽培されていた植物だったということ、染料以外に解毒作用、冷え性によいとされ漢方としての食材としての広がりが見えて来ました。さらに調べてみると藍染めは今再注目されているのに、生産者は減少しているそうなんです。藍を栽培することで、多くの可能性やつながりが見えて来たんです。それならば本格的に基盤を整備して、持続できる事業プランを進めていく必要がある。しかし、スタートップする資金はない……。そんなときに出会ったのがフェリシモさんのとうほくIPPOプロジェクト でした。
■とうほくIPPOプロジェクトの支援を受けて、これからのことを教えてください。
2015年の春から苗や必要な道具などを購入させていただきました。そして農業専属のスタッフやボランティアのかたたちと一年間通して藍の栽培と染織を行いました。年間の流れが見えて来たので次のプランとしては、発酵で染織するための室を建てたいなと思っています。藍畑を広げるためにもう一つ耕作放棄地を畑にして行く予定です。東北には藍染めのクラフトが数軒あるので、原料としてうちの藍を使っていただくことでまちのラインを超えて、東北産の藍染めとして広げられたらと思っています。もちろん、自分たちも今後商品化していきますので、スタイリッシュなデザインを考えて世の中に求められるものを提供するようにして行きたいですね。町内のレストランとも提携して藍の食事を共すことも提案中です。経営やデザイン、販売のことなど学ぶべきこともまだまだたくさんあります。
南三陸町に来るまで農業未経験の高橋さん。無農薬の藍畑は雑草とかたつむりとの戦い。
煮出し染めしたTシャツ。男性の客人も多い。天気、湿度で染め状態に変化が生じる。
本から染織の技法を見ながら、棒や紐、洗濯バサミなどを使って模様をデザインしていく。「オリジナル模様も作ってみたりもします。デザインを考えるのが好きです」と言う高橋さん
【2016年取材:羽鳥靖子(ライター)】
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高橋未来
南三陸ツーリズムネット「藍監査室」
https://www.facebook.com/AI.
◆「とうほくIPPOプロジェクト」の第7期事業を募集中です。 (~10月2日まで)
以下のページをご参照願います。
http://www.felissimo.co.jp/s/tohokuippo7/
または、「とうほくIPPO」と検索してください。
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