福島の花咲かお母さんたちとの出会いは昨年の春でした。とうほく帖Vol.3の表紙にも使われた「花咲かお母さんが楽しんで描いたアートキャンドルの会」(現在販売終了)に「絵付け」をお願いしたのが、福島県会津若松市に避難されているお母さんグループでした。
この商品は、宮城大学との産学協同プロジェクトである「フェリシモ・ラボカレッジ」という取り組みの中で、「会津の絵ろうそく」にヒントを得て学生から企画提案されたものです。若い学生たちの「この商品が被災した人たちの就労支援にもつながるようにしたい」という思いもあって、これを花咲かお母さんプロジェクトの商品として扱うことを決めました。そして、その絵付けの作業への参加を企画のルーツになった会津若松に避難されているお母さんたちに呼びかけてみようということになりました。
当日集まっていただけたお母さんたちはもともと福島県の「大熊町」というところに住まれていたのですが、原発事故の影響によってこの会津若松に避難されているということでした。僕は恥ずかしながら、このお母さんたちとお仕事をするまで、あまり大熊町のことを知りませんでした(全国区のニュースではあまり取り上げられていることが少ないように思います)。しかし、いっしょにお仕事をさせていただくことが決まってからいろいろと調べてみると、大熊町はあの福島第一原発のある町であり全町民が避難を余儀なくされている状況であること、一部除染作業が進んではいるもののまだまだ帰還する目処が立っていないことなど、厳しい現状を知りました。
津波の被害を免れて、家や町並みがそのまま残っているにも関わらず遠く離れた場所に避難せざるを得ないお母さんたちの気持ちを思うととても苦しい気持ちになります。しかし、お母さんたちは会津に訪れた僕や学生たちを明るく迎えてくれました。時には冗談を言いながら終始明るい雰囲気を作っていただいたみなさんの人柄にとても救われたのを覚えています。
そして、僕はこの日お母さんたちにどうしても聞いておきたかった質問をしました。
「このお仕事を通じて貯めた基金で、どこにお花を植えたいですか?」
「そうだねぇ、私はやっぱり……、大熊に植えたいなぁ。」
故郷を思い出すように遠くを見つめながら、しみじみと言われたお母さん。
この答えを聞いた時に、「絶対にこの願いを叶えてあげたい。」と思いました。例え現地に入るのが自分ひとりだったとしても、絶対に叶えてあげたい。それは「覚悟」にも似た感情でした。しかし、僕はこの大きすぎる問題に対してまだまだ無知で、その時口に出して「約束」をすることができませんでした。でもこの気持ちは絶対に忘れません。
ただ、今はまず、魅力的な商品を学生やお母さんたちといっしょに作って、全国のお客さまにそれを伝え、販売していくことに全力を注ごうと、そう決意しました。
おかげさまで、このかわいいキャンドルたちは当初の予想数を超えて生産・販売することができました。お母さんたちも家事や子育てで忙しい時間を調整しながら追加生産の作業に取り組んでくださいました。また、商品に同封していた「私が作業しましたカード」への返信メッセージも徐々に届くようになって、全国のお客さまとのつながりも感じてもらえるようになりました。
そして昨年の初秋、Kraso 2013秋冬号に掲載された新商品「DMC×東北の花咲かお母さん 帯電防止もできる糸巻きチェーンブレスレットの会」を第2弾のお仕事としてお願いすることになり、2度目の会津訪問をしました。
作業の説明をしながら交わしたある会話からニュースではあまり聞かない大熊町の現状を知ることになります。
「私の家のあるところは中間貯蔵の場所になるんだぁ。だからもう帰れないの。」
中間貯蔵。みなさんはこの言葉を聞かれたことはありますか?
これは除染作業などで発生した放射線量の高い土や落ち葉などを最終処分方法が確立、確定されるまでの間貯蔵する場所のことです。福島県内で発生したものを双葉町、大熊町、楢葉町の原発近辺の土地に設置するというものです。中でも現在検討されている候補地の半分以上が大熊町内にあります。
やはり僕はこの話を聞くまでそういう計画を進んでいることを知りませんでした。毎度毎度自分の無知を痛感します。また別のお母さんは、笑いながらこう言いました。
「うちの旦那が、もし大熊町の自宅に桜の木植えるんだったら、俺は防護服着てでも植えに行くぞって言ってんのよ。」
ああ、そうか。それを聞いた時に、やっぱりみなさんの故郷に花を植えることには、間違いなく意味があると確信しました。そこで大熊町役場の会津出張所の担当さんを教えてもらい後日花植えについてのお話をしにいくことにしました。
2013年11月、3回目の会津。今回大熊町役場会津出張所の産業建設課の担当者の方にお話を聞いていただくことができました。最初にこのプロジェクトの趣旨説明と手仕事をしてくれているお母さんが「やっぱり大熊町に植えたい」と言っていたことを伝え、なんとか植える場所を確保できないか聞きました。
すると、話を聞いてくださっていた二人の担当者に加え、後ろのほうで業務されていた若手の方も含めいろんな方が
「あのダムの周りだったら線量もかなり低いし、立ち入り制限されているエリアじゃないからいけるよな?」
「その先の幹線道路もありじゃないですか?」
と、大きな大熊町の地図の上でアイデアを出してくれました。役場のみなさんも、あのお母さんたちの願いをなんとか叶えてあげたいと思ってくれている。それがひしひしと伝わってくるのを感じながら、僕は胸が熱くなりました。
この日おおよそ候補地として絞られたのは大熊町の外れにある「坂下ダム周辺」のエリア。ここは通常でも線量が低く、立ち入り制限もないそうです。担当者の一人が「では、明日早速現地に入って、何本くらいまで植えられるか見てきます!」と言ってくださり、翌日には植樹の候補地の写真を何枚か送ってくださいました。すごい行動力!
あとは……、
植樹に参加していただくボランティアの募集をどうしようかという点です。
このダムの周辺に、2014年の春(4月~5月ごろ)に桜を80本ほど植えたいのですが、いつもの花植えボランティア募集のように参加を募ってもいいものかまだ迷っています。確かに線量はかなり低いとはいえマスクを着用して作業していただいたり、小さなお子さまの参加はお断りしないといけないなど、いつもとは違う部分で気を使わないといけない植樹になります。
まだ実際にボランティアの募集をする段階ではありませんので詳細や応募条件などをこれから検討していきたいと思っています。もちろんボランティアに参加せずとも、プロジェクトの商品をお買い物したり、返信メッセージを送っていただくだけでもたくさんの笑顔が広がっていきます!!!
今回のレポートによって、少しでも今現実に起きている問題やその中でがんばっているとっても魅力的なお母さんたちの存在、このプロジェクトを後押ししてくれる大熊町役場のみなさんがいることを伝えられればと思いました。
これからもたくさんの魅力的な商品を企画していきますので、引き続き応援よろしくお願いします!!
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