はじめまして、シャプラニール=市民による海外協力の会の藤目です。
私たちは、南アジアの貧しい人々の生活上の問題解決に向けた活動を、現地と日本国内で行い、「すべての人々がもつ豊かな可能性が開花する社会の実現」を目指して、活動しています。1972年の設立以来、長年にわたって、農村の貧しい人々への教育・保健衛生、収入向上などに取り組んできました。特に2000年以降は社会、経済的に「取り残された」人々への支援に取り組み、中でも、バングラデシュでは、社会的に疎外されがちな「障害者」に対する支援を行っています。
バングラデシュ・ノルシンディ県ノルシンディ中央郡およびライプーラ郡は、社会的インフラが著しく遅れた農村部です。舗装されていない道も多く、行動手段も満足にありません。ある女性は身体的障害がありながらも、一般のリキシャ(自転車でこぐ人力車)を利用し、かなりの時間をかけて自宅まで帰宅しています。日本であれば、家族が迎えに来たり、お迎えのバスが手配されるなどの支援があるでしょうが、この地域に住む障害者たちはバリアフリーとは無縁の生活を送っています。
また自分たちに関わる権利や支援制度についての知識も乏しいため、普通の生活を送るために必要な支援を得られず、経済的にも厳しい状況に置かれています。
この地域には、何らかの支援が必要な障害者が286名存在し、そのうちリハビリテーションが必要な障害児は80名います。しかし、障害者に対して専門的なリハビリを行う社会機能がほとんどなく、また行政や地域の人々の、障害者に対する理解も充分とは言えない状況です。障害者が住んでいる地域も広範囲にわたっているため、対応するスタッフの数が足りず、支援が行き届いていないという課題もあります。
こうした現状の中で、シャプラニールでは、長年、地域密着型で最貧困層の支援を行なってきた現地パートナー団体のPAPRIとの協働により、障害者支援に取り組んでいます。障害者に対し、地域資源を活用した専門的なリハビリの機会や補装具(歩行具など)を提供します。また、障害者の家族は一般の家庭以上に緊張度の強い生活を強いられているため、その家族へのサポートも必要です。さらに地域住民や行政へ働きかけ、人々の理解を深めることも重要です。
今後は、基金を活用してさらに活動を強化し、地域の資源を活用しながら、障害者の自立と障害者が暮らしやすい地域づくりを目指し、次の事業に取り組みます。
〈主な活動内容〉
1.障害者に対するリハビリテーションの充実
リハビリテーション担当のスタッフが障害者の家を個別訪問し、リハビリを行ないます。スタッフが直接行うだけでなく、障害者の家族に手法を指導することで、家族が日常的にリハビリを行うことができるよう支援します。
2.障害者の家族に対するサポート
障害者の家族に対してのカウンセリングを行ないます。また家族同士が交流する機会を設け、生活上の不安やストレスを軽減し、障害者支援についての情報交換の場を提供します。
3.障害者グループを通じた地域への働きかけ
さまざまな障害がある人々が集まるグループをつくり、当事者同士の交流の場を設けます。グループ活動を通じて、学校、行政、NGO、地域のリーダーたちと活動を共有したり、ミーティングを重ねることで、障害のある子どもが通いやすい学校の環境づくりや、障害者への理解を深めます。また、担当児童数が増加傾向にあり、障害者のさまざまなニーズに対応するためにも、今後は担当スタッフの育成とスキルアップを図る技術研修などを行っていきます。
〈期待される効果〉
障害者が、専門的なリハビリや家族による日常的なリハビリを受けることで、状況の改善が期待できます。生後6ヵ月目に脳性麻痺であることが分かった女の子は、月に1回は担当スタッフが直接リハビリを行い、1日に数回、両親が教えたリハビリを行なったところ、「ご飯をちょうだい」「また来て」といった簡単な文章なら話せるようになり、自分の気持ちも表現できるようになりました。
足の不自由な女の子は、リハビリと補装具のおかけで、また歩けるようになりました。
また、障害者が当事者グループに参加することで、外出の機会が増えたり、前向きに社会に参加するきっかけへと繋がります。グループ活動を通じ、障害者自らの抱える課題を地域住民や行政に直接声を届けることで、人々の障害者に対する理解が深まり、障害のある子どもたちが新たに学校に通えるようになったり、学校にスロープが設置されるなど環境の改善も期待できます。
私たちは、障害者自らの力で暮らしやすい地域づくりに取り組めるよう自立を支援して行きます。障害者やその家族が、「どうせ障害があるのだから」と諦めることなく、夢を持ち、学校に通い、社会に参加できるよう、ぜひみなさまも応援をよろしくお願いいたします。
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