ダッカで生き抜くストリートチルドレン
ダッカには、30万人以上の子どもたちがストリートチルドレンとして路上生活を送っていると言われています。30万人というのは、新宿区の人口とほぼ同じ。それだけ多くの子どもたちが日々を食いつなぐために生きているのです。
生活のために厳しい労働を強いられ、学校にも通えず、毎日を生き抜くストリートチルドレン。不当な賃金での重労働や人身売買など、彼らの生活には様々な危険が伴います。路上やけんかでできた傷や打撲も絶えません。栄養不足や不衛生な環境での生活から、皮膚病や感染症などの身体的症状も多く見られます。
家庭の経済的な貧しさなどを理由に路上で暮らす子どもたち。親からの虐待や仕事の強要がきっかけとなり、家を飛び出すケースも少なくありません。
国境なき子どもたちは2011年9月より、ストリートチルドレンを対象に週5日・朝の9時から夕方5時までの間、彼らが自由に立ち寄れるドロップインセンターをダッカ市内で運営しています。ソーシャルワーカーを含むスタッフが、日々ていねいに子どもたちに接しています。今では月にのべ約730人もの6歳~14歳のストリートチルドレンがセンターを利用しています。
このプロジェクトで、子どもたちに教育と安らぎ、そして何よりも愛情を感じ取れる場所を提供したいと願っています。具体的には、以下の活動を通して子どもたちを保護・支援しています。
1)基礎教育とレクリエーション・課外授業
センターに通う子どもたちの多くは、学校に通った経験がないか、小学校を低学年で中退しています。学習レベルに適したシラバスを作成し、基礎教育を提供しています。搾取の危険から自分を守り、安定した職業に就くためにも、読み書きや計算などの教育は不可欠です。
子どもらしい時間を過ごせるように、絵画やスポーツなどさまざまな遊びの時間も提供しています。また、自分の国の歴史・文化や集団行動を学ぶために、年に数回の遺跡や国立美術館での課外授業を行っています。
勉強をする機会に恵まれなかった子どもたちにとって、集中力を長く保つことは簡単ではありません。スタッフは根気よく時間をかけて教えていきます。
2)朝食・昼食の提供
ダッカのストリートチルドレンの大半は、一日一食もしくは二食しか食べることができません。それも、食事をごみ箱から拾ったり、物乞いで得ていることが少なくありません。健全な成長を促すため、栄養価が高くバランスにも気を使った食事を提供しています。
センターのご飯は「おいしい!」と大人気! 盛り付けや片付けは当番制で、集団のなかでルールを守る大切さも学びます。
みんなが大好きな食事の時間! センターでは誰にも奪われず、ゆっくり、おなかいっぱいに食べられます。
3)栄養・健康・衛生に関する啓発活動
路上で生活する子どもたちの多くは、自分を守るための基本的な知識を持っていません。栄養・健康・衛生に関するワークショップを定期的に開催し、正しい知識を伝え、食生活や生活環境の改善を促しています。例えば、センターでは「栄養価の高い食材」や「薬物の依存とからだへの悪影響」などについて学ぶことができます。
また、ストリートチルドレンやセンターの運営に対する理解や協力を促すために、近隣住民(大人)に対しても啓発活動を行っています。
子どもたちからは、「以前はタバコを吸っていたけどからだに悪いと知ってやめた」、「食べ物に気をつけるようになった」などの声が聞かれます。
4)応急処置および定期的な健康診断の実施
子どもたちにとってセンターのスタッフは家族のような存在。スタッフは爪切り、耳かき、縫製など子どもたちの身の回りの世話をします。路上やけんかでできた傷や打撲の手当ても行います。愛情をもって接することで、子どもたちのストレスを少しずつ和らげ、精神的な成長を促します。
また、子どもたちの健康状態の変化を把握するため、体重、身長、病状の有無、食生活などについての健康診断と調査を定期的に実施しています。
スタッフは毎日のように怪我の手当をしています。子どもたちにとって、心配してくれる大人の存在はとても貴重で大きなものです。
〈主な活動内容〉
ストリートチルドレンに寄り添うため、みなさまの応援が必要です。
今回のプロジェクトで2015年1月から1年間、引き続きドロップインセンターを運営できれば、のべ8,800人ものストリートチルドレンを支援することができます。
プロジェクト実施のため、「地球村の基金」は以下のようなドロップインセンター運営費に大切に活用させていただきます。
・教材費:ノート、ペン、テキスト、教材など
・レクリエーション費:画材、スポーツ用品、楽器、課外授業費
・食費:肉、野菜、卵、牛乳、飲料水など
(朝食は食パンとバナナや、ナンと煮豆など。昼食は日替わりで通常4~5種類の野菜か魚か肉のカレー、レンズ豆のスープ、食後の果物を提供)
・ワークショップ費:子どもたちと地域住民に対する啓発活動時の教材、軽食、外部講師の交通費など
・医薬品・衛生消耗品:薬、治療代、石鹸、洗剤など
・寝具:子ども用マットレス、フロアマット
〈期待される効果〉
これまでの成果
2011年9月にドロップインセンターを開設してから約3年がたちました。自分のなまえすら書けなかった子どもたちが、センターに通い続けることで文字を少しずつ覚えられるようになりました。
栄養価の高い食事をとり、正しい食生活や生活環境を学ぶことで、多くの子どもたちのからだが成長し、熱や下痢、皮膚病の症状に大きな改善が見られるようになりました。
また、以前は路上生活のストレスからよくけんかをしていた子どもも、スタッフからの愛情を受け、自分を気にかけてくれる大人の存在を知ることで少しずつ落ち着き、今では配膳や掃除のお手伝いをしてくれています。
さらに充実した支援を
今回のプロジェクトでは従来の活動に加えて、子どもたちが社会の一員となれるように、さらに充実した支援を行います。具体的には、より頻繁な課外活動、道徳観念(よいことと悪いことの区別)をより積極的に学ばせる、子どもたちが身の回りの問題を考え、対処策を話し合う「子ども会議」を発足させる、ゴミ拾いなど地域活動への参加などを計画しています。
これからも子どもたちと共に
普通の子どもが持つべき教育を受ける権利や、守られる権利を与えられなかったストリートチルドレン。彼らが安心して子どもらしく成長できる場所がドロップインセンターであってほしい。そう願いながら、スタッフは日々子どもたちに愛情を注いでいます。
支援を必要とするストリートチルドレンのため、みなさまの応援をよろしくお願いします!
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