「フェリシモ 地球村の基金」が今年支援したい6つの自立を支援するプロジェクト。
その中から、世界をよりしあわせにするためのプロジェクトの1つをみなさまにご紹介します。
はじめまして、難民を助ける会(以下、AAR)タジキスタン事務所駐在員の大澤由恵です。私たちは、中央アジアに位置するタジキスタンで障がい者支援を行っています。
タジキスタンは、旧ソビエト連邦から独立した中央アジア諸国の中で唯一内戦を経験した、経済的に最も貧しい国です。
≪タジキスタンの障がい者を取り巻く課題≫
タジキスタンの国としての障がい者への取り組みは立ち遅れています。2018年に世界177ヵ国が批准する障害者権利条約に署名はしたものの、国内法の整備が進まず、条約の加入までには至っていません。国の厳しい経済状況と障がい者への支援が行き届いていないことから、障がい者は大変厳しい環境に置かれています。
加えて、タジキスタンでは、障がいのある子どもは健常者と異なる学校に通うべき、障がい者は家の仕事をすればよいという差別や偏見が根強く残っています。そのため、学校に通えない障がい児が多く、実際、タジキスタン全体では初等教育の就学率は97.5%である一方、障がい児の就学率は34%に留まっています。
たとえ学校で教育を受けられたとしても、学校卒業後の就職口がなく、社会との接点を絶たれてしまい、貧困に陥るという課題もあります。
≪タジキスタンにおけるAARの取り組み≫
AARは、2014年より障がい児の教育支援を継続し、これまでに280人の障がい児が新たに就学の機会を得ました。障がい児と健常者がともに学校で学ぶ環境は進んできているものの、卒業後の支援はまだ行き届いていません。そのため学校を卒業した障がい者は家の手伝いをして生活し、障がい者の社会参加の機会はほとんどありません。保護者や学校、障がい児支援を行う現地団体からは、障がい児が卒業後に自立して生活していけるよう、手に職をつけるための職業訓練を求める声が多く挙がっています。
≪プロジェクトの全体像≫
このような背景から、AARは障がい者がより多く居住し、障がい者が職業訓練を受ける機会のないヒッサール市で、縫製技術を通じた障がい者の自立と社会参加を後押しするプロジェクトを実施します。
タジキスタンでは、女性のワンピースを仕立てる文化があります。縫製技術を身につけると、近所から仕立てを依頼され、地域と繋がりながら生計を維持することができます。また、洋服の仕立ては、障がいのある人にとって体力をあまり使わず、家に居ながらでも作業できるため、仕事として始めやすいという利点もあります。
実際に、縫製で生計を立てて活躍している障がい者がいるのを見て、他の障がい者からも仕立ての技術を学びたいという要望が多く寄せられています。
少しでも仕事に結びつけられるように、縫製技術だけでなく、ビジネススキル(会計や顧客対応など)の研修も行います。受講対象に障がい者だけでなく、その家族を含めることで、普段障がい者の身の回りの世話のため働きに行くことが難しく貧困に陥りやすい家庭の支援にもつなげます。また、作品の展示会を開催し、地域の仕立て屋を招いて仕事に繋がる機会を提供します。
一方、障がい者が地域で活躍していくには、周囲の理解が不可欠です。そのため、縫製研修には学校の家庭科の教師や学生ボランティアを受け入れ、障がい者の作業の補助を行うことで、地域における障がい者への理解も促進します。特に家庭課教師には事前に障がい児教育の研修を行い、一人ひとりに合った教授法の実践を積み、知識の定着を図ります。会場を障がい者教育に熱心な学校で行うことで、教師が知見を活かし、この活動を継続できるよう支援します。
〈主な活動内容〉
①障がい者・家族への縫製・ビジネススキル研修
- 15歳以上の対象者15名に1日3時間、週3回、6ヵ月実施します。加えて、2ヵ月の技術フォローアップを行います。
- 講師は、縫製を仕立て屋が務め、ビジネススキルを首都にある職業訓練校教師が務めます。月に1回、縫製技術を持つ障がい者が指導補助にあたります。
- 研修で必要なミシンや教材を購入します。
- 作品展示のイベントを2回開催し、雇用に繋げるマッチングを行います。
②障がい者への理解促進のための活動
- 関連団体のヌリオフトが、学校の家庭科教師を対象に障がい者教育研修を実施します。
- 家庭科教師・学生/地域のボランティアを障がい者の縫製研修へ受け入れます。障がい者にとって難しい作業を補助することで、障がい者への理解を深めます。また、家庭科教師は事前に学んだ障がい者教育を実践し、知識の定着を図ります。
- 作品展示のイベントに地域住民を招待し障がい者への理解を図ります。
〈期待される効果〉
この活動を通して、障がい者とその家族は縫製技術とビジネススキルを習得することができます。9ヵ月の期間を通じて、受講者同士の関係が構築され、障がい者と家族が社会から孤立することを防ぎます。また、作品展示のイベントを通じて、受講者の仕事に結びつく雇用者や発注者と接点をもつ機会を得られます。
一方、縫製・ビジネススキル研修に作業補助として参加する家庭科の教師は、事前に障がい児教育の教授法を学び、障がい児教育の実践を重ねることで、知識の定着を図ることができます。
家庭科教師と同様、このプロジェクトで障がい者作業補助を担う学生ボランティアや地域のボランティア、作品展示イベントに招待する地域住民は障がいへの理解が深まり、地域内で障がい者と健常者が共に協力して生きる環境が後押しされます。
障がい者は、社会から取り残されやすい存在です。このプロジェクトで活用する学校は地域のコミュニティーセンターの役割を担い、職業訓練を続けていく姿勢を見せています。AARタジキスタンは、フェリシモ地球村基金のみなさまのご協力を賜りながら、現地団体とともにこのプロジェクトが持続発展するよう支援していきます。
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■タジキスタンにおける職業訓練を通じた障がいへの理解促進事業
実施場所:タジキスタン・ヒッサール市
実施期間:2020年2月~2020年10月(9ヵ月間)
・プロジェクト報告はこちら(中間・実績)
・難民を助ける会さまのその他の支援活動はこちらから
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「フェリシモ 地球村の基金」より、世界をよりしあわせにするための6つの自立を支援するプロジェクトの応援投票を2019年11月1日から11月14日まで行います。
期間中、応援したいプロジェクトを選んで投票することで、そのプロジェクトを応援することができます。(投票の数は、各プロジェクトへの拠出金額の参考にさせていただきます)
➡ 応援投票は終了させていただきました。
みなさまから、たくさんの応援(投票)をいただきありがとうございました。
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