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2016年度基金活動報告 ー ガーナで児童労働をなくすための活動支援(認定NPO法人 ACE(エース) ー

2016年度に次の基金より拠出した認定NPO法人 ACE(エース)さまの活動レポートをご紹介します。

 

■スマイル・ガーナ プロジェクト

 ガーナのカカオ生産地域で、児童労働をなくし、子どもの教育を支援するスマイル・ガーナ プロジェクトに対し、ご支援をいただきまして心より感謝申し上げます。
 2014年9月1日より活動を開始した、ガーナ共和国アシャンティ州アチュマ・ンプニュア郡の4村(カロンゴ村、ジュレソ村、タノドゥマセ村、ンスオテム村)では、2016年8月31日に一連のプロジェクト活動を完了することができました。
 その後は、2009年2月から2016年8月までに活動を実施してきた合計8つの村で、フォローアップの活動を行っています。この8村では、フォローアップ終了後に「児童労働のないカカオ生産地」を宣言することをめざしています。昨年ご支援いただいたご寄付は、この8村での活動費の一部として活用させていただきました。

 

1.対象地:
 ガーナ アシャンティ州アチュマ・ンプニュアの8村(カロンゴ村、ジュレソ村、タノドゥマセ村、
 ンスオテム村、クワベナ・アクワ村、アナンス村、ウルベグ村、パソロ村)

 

2.プロジェクトの概要

1)目的:

  ガーナのカカオ生産地域で子どもを危険な児童労働から守り、すべての子どもが質の良い教育を受けられ
 るようにします。また住民が自らの力で児童労働を未然に防ぎ、子どもの教育や生活環境など、村を継続的
 に改善していけるよう自立を促します。

 

2)主な活動内容:

 ①住民のボランティアグループ「子ども保護委員会(CCPC)」を組織し、児童労働が行われていないか 
  見回ります。また人身売買の被害を受けている子どもを保護し、心理ケアを行い親元に返すために必要な
  措置を行います。またその後フォーアップも行います。
  ②通学していない子どもを見つけた場合は、庭訪問を行って親に対して教育の重要性や児童労働の問題点
  などを伝え、子どもを学校へ通わせるようにします。就学が困難で支援が必要な家庭に対し、学用品を
  支給します。
  ③「子ども権利クラブ」を設立し、子ども自身が子どもの権利や学校、教育環境の質の改善などについて
  定期的に話し合い、解決策を提案することに取り組みます。
  ④PTA・学校運営委員会の運営を支援し、住民が話し合い、協力し合って学校改善に取り組むように
  します。
  ⑤「ファーマー・ビジネス・スクール」を開講し、カカオ農家の技術向上のためのトレーニングを行い、
  カカオの収量増加と農家の収入向上を目指します。
  ⑥相互扶助や小規模貯蓄・融資の仕組みを作り、カカオ農家や住民の家計を安定させ、教育への支出を
  促します。
  ⑦子どもや住民の健康を維持するために、定期的な健康診断や健康ワークショップ、国民皆保険への加入の
  呼びかけを行います。
  ⑧学校でのイベントなどを通じ、子どもや親たちに児童労働の問題点と教育の大切さを知ってもらう機会を
  作ります。
  ⑨学校環境の改善や電気、道路などのインフラ整備について行政へ働きかけます。
  ⑩子どもを守る条例を制定し、住民自身の手で上記の活動を行うためのサポートとアドバイスを行います。
  ⑪上記すべての活動が、住民達自身の手で行われる体制を作り、児童労働のないカカオ生産地宣言を行い
  ます。

 

3.2016年6月から2017年5月までの活動と主な成果

 ①子ども保護委員会による見回りと啓発活動

  住民によるボランティアグループである、子ども保護委員会(Community Child Protection Committee、
 通称CCPC)は、見回り活動と家庭訪問を通じて、児童労働の危険性を訴え、子どもを働かせている親への
 説得などを行っています。フォローアップ活動を行っている8村では、2016年8月までに児童労働のほとん
 どはなくなりましたが、この1年間では4人の子どもを新たに児童労働から救い出し、就学を実現すること
 ができました。これにより、児童労働をやめて学校に通えるようになった子どもの人数は、プロジェクトを
 開始した2009年2月から合わせて454人になりました。

  カロンゴ、ジュレソ、タノドゥマセ、ンスオテムの4村では、委員会の啓発活動が積極的に行われた
 ため、今では児童労働の危険性と教育の重要性を理解する住民がかなり増えました。いまだに学校に通って
 来ていない子どもが6人いますが、住民の働きかけによりカカオ畑での危険な労働はやめています。

  2014年までに通常プロジェクトを終了したクワベナ・アクワ村、アナンス村、ウルベグ村、パソロ村で
 は、委員会のメンバーが他の地域に引っ越してしまったり、長老会や学校などとのコミュニケーションに
 問題が発生していたり、いくつかの課題があることがわかりました。

  児童労働がおこらない状態を、村の中でこれからも維持していくためには、村の住民が自発的に見回り
 や家庭訪問をする機能が必須であり、子ども保護委員会が持続可能な形で運営されていく必要がありま
 す。現在は、委員会メンバーの任期や改選の制度を新たに作り、村の人たちが平等に役割を分担していく
 しくみを再構築すべく、話し合いを行っています。ACEは現地スタッフとともに、住民が持続的な活動を
 行うためのアドバイスをおこなっています。

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子ども保護委員会の会合

 

 ②子ども権利クラブの活動

  プロジェクト地の学校では、すべての学年で子ども自身の問題を話し合う「子ども権利クラブ(Child
 Dignity Club/ CDC)」が活動しています。小学校の低学年までは担当の先生が活動を指導し、高学年と中
 学校では生徒が主導となって活動を運営します。おもに児童労働の危険性や、衛生、病気などの問題を学び
 合うこと、さらには学校の環境を改善する提言を先生やおとな達に提案したりすることも行っています。

  生徒たちは自分たちの問題を話し合うことを通じて、学校が抱える問題、村が抱える問題を理解するよう
 になります。そしてそれに対する解決策も学びます。病気や衛生について学んだ子どもは、家に帰って家族
 に病気の危険性や病院の重要性などを伝えたりもします。また児童労働の危険性について学ぶことで、近所
 で働いている子どもを見かけると親やおとな達に伝えて、その後学校来られるように働きかける子どもいま
 す。

  2016年の6月にはカロンゴ、ジュレソ、タノドゥマセ、ンスオンテムの4村の子ども権利クラブが中心と
 なって、児童労働の危険性について話すディベート大会が行われました。また児童労働の危険性と子どもの
 権利の大切さについてアピールするためのパレードも行いました。日ごろ学校で話し合われている内容を、
 長老会のメンバーや村の農家の人々などに伝えることで、村の人々の意識が深まる機会となりました。

  子ども権利クラブは、子どもたち自身が自分たちを守る役割を果たしているのみならず、おとなたちに
 子どもの権利の理解を促進する役目も果たしています。今後も住民と学校でクラブの活動を継続し、より
 発展させていくための取り組みをおこなっていきます。

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児童労働反対パレードに参加した子どもたち

 

 ③学校インフラ改善の取り組み

  子ども保護委員会、子ども権利クラブ、さらには村のPTA/学校運営委員会などが話し合い、村の学校
 環境の改善に向けた取り組みを行ってきました。

  これまで中学校がなかったンスオテム村では、村の長老会とPTA/学校運営委員会の話し合いの結果、
 新たに中学校の新設が決定しました。2017年9月の開校を目指し、現在校舎の建設が進んでいます。また
 カロンゴ村では、小学校の教室を増築と、新しい中学校の建設も始まりました。

  2014年9月にプロジェクトが終了した3村でも、学校インフラの向上と改善が進みました。アナンス村で
 はプロジェクト終了時には建設途中だった小学校の校舎が完成し、それまで教会を使って授業を受けていた
 小学4年生も教室で勉強できるようになりました。ウルベグ村でも、村人たちの手で教室を増築し、幼稚園
 のクラスが使用できるようになりました。通常プロジェクトが終了した村でも自分たちの手で学校環境を
 改善する取り組みが続けられていたことは、プロジェクトの効果が続いているひとつの証拠といえます。
 これからも住民の自立的、自発的な取り組みが継続するような側面支援を続けていきます。

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完成したアナンス村の小学校新校舎

 

 ④カカオ農家へのトレーニングと新しい苗木の配布

  プロジェクトではこれまで十分な栽培の知識がなかったカカオ農家を対象とした「ファーマー・ビジ
 ネス・スクール」を実施し、効率的なカカオ栽培を行い、収量と収入の向上に役立ててもらうようにしてき
 ました。

  今年度はトレーニングを受けたことにより技術を向上させた農家が、新しく加入した経験が浅い農家に
 対し、アドバイスをしたり実際に農作業を手伝いながら指導を行うなど、住民同士で技術を教え合う姿も
 見られるようになりました。これはプロジェクト終了後も、住民達の手でより効率的なカカオ栽培の技術
 と経験が普及されるための素地ができていることの証でもあります。

  近年ガーナではカカオ樹の老齢化や気候変動などが理由で、カカオの収量が減少傾向にあり、ACEの
 活動地域でも大きな課題となっています。そこでプロジェクトではガーナの政府機関のひとつであるカカ
 オ協会と協力して、10万本の新しい苗木を農家に配布することにしました。現在はプロジェクト実施地
 の農家に土地を提供してもらい、苗木を保管しながら育てているところです。ある程度成育した後6月末
 までを目途に、トレーニング参加者を中心に各農家に配布していく予定です。カカオは苗木を植えてから
 実をつけるまで5年以上かかると言われています。しばらくは大切に苗から樹を育て、5年先の安定した
 生産をめざしてトレーニングを続けていきます。

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配布する予定のカカオの苗木

 

 ⑤子どもの保護に関する地域条例の制定

  先にプロジェクトを実施したクワベナ・アクワ村、アナンス村、ウルベグ村、パソロ村の4村では、
 2014年8月に子どもの保護に関する地域条例を制定しました。これと同様の条例を、カロンゴ村、ジュ
 レソ村、タノドゥマセ村、ンスオンテム村の4村でも制定する準備を進めてきました。

  2016年8月、アチュマ・ンプニュア郡の政府関係者、警察、裁判所、社会福祉局、教育局の立ち会い
 のもと、4村の村長、長老会メンバー、校長先生、学校運営委員会、子ども保護委員会、互助会、
 ファーマー・ビジネス・スクールのメンバー、そして子ども権利クラブの代表者が一堂に集まって会議
 が開催され、条例の批准と発効が決議されました。出席した長老の一人は「プロジェクトを通じて子ど
 もの権利と教育の大切さを学んだ。今後は自分たちの手ですべての子どもたちに教育を受けさせるよう
 にしたい」と意気込みを語りました。

  過去に条例を制定した4村(クワベナ・アクワ、アナンス、ウルベグ、パソロ)では、フォローアップ
 の活動を通じて、住民の中には条例の存在をまだ知らない住民が一定以上いることが明らかになりまし
 た。今後どのように条例を周知し、遵守していくように住民の行動を促すかが課題となっています。
 これは新たに制定した4つの村にもあてはまる課題であり、その対策について、現地スタッフと住民、
 行政との話し合いを続けています。

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地域条例の制定のための会合

 

<支援者のみなさまへ>

みなさまのご支援に心より感謝申し上げます。ご支援のおかげで、2009年のプロジェクトスタート以来、450人以上の子どもが危険な児童労働から抜け出し、教育を受けられるようになりました。プロジェクトを行った村では、子どもたちがイキイキと学校で勉強し、おとなたちもそれまで以上にやる気をもってカカオ生産に取り組むようになりました。カカオ生産地における児童労働問題の解決は、ガーナのみならず世界レベルでの関心事項となっており、このプロジェクトはそのモデルとなる可能性を秘めています。カカオ生産地、そして他のあらゆる児童労働をなくすために、チョコレートを通じたご支援を、これからもどうぞよろしくお願いいたします!

 

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元気いっぱいの村の子どもたち

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前回の報告はこちら

■ ACE(エース)さまのその他の活動はこちらからご覧いただけます。

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