2015年度に次の基金より拠出した認定NPO法人 ACE(エース)さまの活動レポートをご紹介します。
■スマイル・ガーナ プロジェクト
ガーナのカカオ生産地域で、児童労働をなくし、子どもの教育を支援するスマイル・ガーナ プロジェクトに対し、ご支援をいただきまして心より感謝申し上げます。
2014年9月1日より、新たにガーナ共和国、アシャンティ州アチュマ・ンプニュア郡の4村(カロンゴ村、ジュレソ村、タノドゥマセ村、ンスオテム村)で、活動を開始しました(活動期間:2014年9月1日~2016年8月31日)。昨年ご支援いただいたご寄付は、新たな4つの村での活動費の一部として活用させていただきましたので、ご報告させていただきます。
1.対象地:
ガーナ アシャンティ州アチュマ・ンプニュア郡
カロンゴ村、ジュレソ村、タノドゥマセ村、ンスオテム村
2.プロジェクトの概要
1)実施期間: 2014年9 月1日~2016年8月31日(2年間)
2)目的:
ガーナのカカオ生産地域で子どもを危険な児童労働から守り、すべての子どもが質の良い教育を受け
られるようにします。また住民が自らの力で児童労働を未然に防ぎ、子どもの教育や生活環境など、
村を継続的に改善していけるよう自立を促します。
3)主な活動内容:
①住民のボランティアグループ「子ども保護委員会(CCPC)」を組織し、児童労働が行われていないか
見回ります。また人身売買の被害を受けている子どもを保護し、心理ケアを行い親元に返すために必要な
措置を行います。またその後フォーアップも行います。
②通学していない子どもを見つけた場合は、家庭訪問を行って親に対して教育の重要性や児童労働の
問題点などを伝え、子どもを学校へ通わせるようにします。就学が困難で支援が必要な家庭に対し、
学用品を支給します。
③「子ども権利クラブ」を設立し、子ども自身が子どもの権利や学校、教育環境の質の改善などについて
定期的に話し合い、解決策を提案することに取り組みます。
④PTA・学校運営委員会の運営を支援し、住民が話し合い、協力し合って学校改善に取り組むように
します。
⑤「ファーマー・ビジネス・スクール」を開講し、カカオ農家の技術向上のためのトレーニングを行い、
カカオの収量増加と農家の収入向上を目指します。
⑥相互扶助や小規模貯蓄・融資の仕組みを作り、カカオ農家や住民の家計を安定させ、教育への
支出を促します。
⑦子どもや住民の健康を維持するために、定期的な健康診断や健康ワークショップ、国民皆保険への加入の
呼びかけを行います。
⑧学校でのイベントなどを通じ、子どもや親たちに児童労働の問題点と教育の大切さを知ってもらう
機会を作ります。
⑨学校環境の改善や電気、道路などのインフラ整備について行政へ働きかけます。
3.2015年6月から2016年5月までの活動と主な成果
①子ども保護委員会による見回りと啓発活動
住民によるボランティアグループである、子ども保護委員会(Community Child Protection Committee、
通称CCPC)は、見回り活動と家庭訪問を通じて、多くの人が児童労働の危険性を訴え、子どもを働かせて
いる親への説得などを行っています。その結果この1年間で、11人の子どもを児童労働から救い就学を実現
しました。これにより、児童労働をやめて学校に通えるようになった子どもの人数は、プロジェクトを開始
した2014年9月から合わせて201人になりました。
また、委員会のメンバーは、子どもたちとその親たちに、国民健康保険(NHIS)への加入を呼びかけて
います。親が病気やけがで働けなくなり、子どもが働かざる追えなくなるケースもあるため、保険に入る
ことで病気やけがをした時に急の出費をする必要がなくなり、迅速に手当てを受けられるようになります。
それが人々の健康維持につながり、結果として子どもたちが安心して学校に行けるようになります。
2016年8月末を持ってこのプロジェクトは終了する予定ですが、その後は委員会のメンバーを中心に、
住民たちの手で子どもを守る村を維持していくことが期待されています。
以前働いていた子ども(左から2人目)とその親(左から3人目)と話し合う
子ども保護委員会のメンバー(右から3人目)と現地スタッフ
②人身売買被害者の保護
先述のとおり、現在活動している4村では、2014年9月のプロジェクト開始以来、合計201人の子どもが
児童労働をやめて学校に通えるようになりました。一方で、親元を離れ人身売買の形でプロジェクト地に
連れて来られるケースも後を絶ちません。
ガーナ北部から連れて来られたアマドゥ君とモハマド君は、ジュレソ村のカカオ農家に労働目的で連れ
て来られました。2人は同じ出身地ですが、兄弟ではありません。2人のお父さんが、それぞれ生活が
苦しく、面倒を見てもらうためにジュレソのカカオ農家に引き取ってもらったとのことです。
この農家は、当初は学用品の支給などをしてくれれば彼らを学校に行かせてもよい、と言っていま
したが、その後も彼らを働かせたり、学校に行くことに反対する態度をとるなどをしたため、子ども保護
委員会ボランティアと現地NGOスタッフで議し、彼ら2人を引き取ることにしました。
現在2人は、パートナー団体CRADAの事務所があるクマシ市に設けられた養護施設(チルドレンズホー
ム)で生活をしています。今後は彼らの親がきちんと教育を受けさせることができるかを判断したうえで、
親元に戻すかどうかを判断する予定です。
このように、血のつながらない子どもを労働目的で引き取る地主やカカオ農家は後を絶ちません。また
血縁関係があったとしても、就学年齢の子どもを労働目的で親元を離れて預けることは人身売買取引となり
ます。今後は住民や行政と協力して、人身売買を防ぐための活動をしていきます。
保護される前のアマドゥ君(左)とモハマド君(右)
表情は緊張したまま(中央は子ども保護委員会メンバー)
チルドレンズホームでのアマドゥ君(右)とモハマド君(左)、
以前とはうって変わって表情は明るい(中央はACEガーナプロジェクトマネジャーの近藤)
③学校インフラ改善の取り組み
子ども保護委員会、子ども権利クラブ、さらには学校運営委員会などが話し合い、村の学校環境の改善
に向けた取り組みが行われています。2015年以降、カロンゴ村では新たな教員住宅が建設されました。
これまで教員たちは近隣の町から村までの長い距離を歩きや乗り合いバスなどで通勤していたため、雨が
降ったり車両が故障したら学校に来られないといことがよくありました。教員住宅が完成したことにより
そのような心配はなくなり、毎日授業ができるようになりました
またカロンゴ村の小学校ではこれまで小学5年生までの教室しかありませんでしたが、6年生用の教室を
増築しました。これによりこの村の小学生は1年生から6年生まで同じ校舎で学べるようになりました。
村の人たちは、将来は是非中学校も建設したいと考えています。
これまで中学校がなかったンスオテム村でも、村の長老会とPTA / 学校運営委員会の話し合いの結果、
新たに中学校の新設が決定しました。2017年8月頃の完成をめざしています。
完成したカロンゴの教員住宅
④教員向けトレーニングの実施
現在活動しているの4村では、合計8つの学校があり、おおよそ30名の教師が働いています。子ども
たちに質のよい教育を受けられるためには、教師たちが適切な指導をすることが必要です。プロジェクト
では、支援地域にある学校の教員を集め、ガーナ教育局の専門家による教員向けトレーニングを行いま
した。トレーニングでは教え方のテクニックだけではなく、学校の教員としての心構えや、生徒への接し
方、さらには保護者の関係のあり方などについて講義を行いました。さらにグループワークを通じても
理解を深めました。
ガーナでは、教員が一方的に教えるだけで、生徒の細かいケアなどをすることはあまりありません。
また講師を務めた教育局の専門家によると、教員による生徒への体罰や性的な虐待も課題となっています。
生徒と真剣に接し、さらに保護者との関係を密にすることで、このような問題を防ぐことができ、それが
結果的に子どもの学力の向上にもつながります。
これからも教員と子ども、親たちがそれぞれ協力し合うことで、良い学習環境を作っていきたいと思
います。
グループワークを通じて、生徒との関係のあり方を考える教師たち
⑤カカオ農家へのトレーニング
プロジェクトを実施している地域は、大半の人がカカオを栽培して生計を立てていますが、なかには十分
な知識がないまま栽培をしている人がいます。そのような人々は非効率な農法を行っているケースが多く、
カカオの収量も、それに伴う収入も低いままのケースもあります。プロジェクトではそのような農家を対象
としたトレーニング「ファーマー・ビジネス・スクール」を実施し、効率的なカカオ栽培を広め、収量と
収入の向上に役立ててもらうようにしています。
ンスオテム村に住むアダクアさんとサラさんは、6人の子どもを育てていますが、以前は十分な収入と
収量が得られず、子どもたちを学校に通わせるのが経済的に大きな負担となっていました。「2015年に
トレーニングに参加してからは、収量が3倍に増え、それに伴い収入も2倍に増えたので、生活がとても
楽になった」と笑顔で話してくれました。
トレーニングに参加したアダクアさん(左)とサラさん(右)
⑥互助会の活動
住民同士がお互いに助け合い、また小規模融資制度を作ってお互いに助け合う互助会(現地名:
ボブラパ・ミューチュアル・スキーム)の活動を行っています。互助会ではそれぞれ「預金通帳」を
作り、お金の管理をするように講習を行います。これによって想定外の支出があった時も家計を圧迫
せずにすみ、またお金がなくなって子どもたちが学校に行けなるなることを防ぐことを目的としてい
ます。
互助会のメンバーは月に1~2度集まり、村の行事に関わるお金の管理や、カカオの収穫期での共同作業
を行うための方法を話し合ったりします。また家計や貯蓄、お金の運用についての勉強会なども行います。
タノドゥマセ村に住む、5人の子どもの母親であるジョナ・フォスさん(41歳)は、2015年から互助会
に参加しましたが、それまではお金を預金したことがありませんでした。入会後、貯蓄したお金と小規模
融資で借りたお金を元手に洋裁の仕事をはじめ、新たな収入を得るようになりました。また3人の子どもの
母である、ジャネット・アモワコ(45歳)さんもこれまで貯蓄をしたことはなかったのですが、ジョナさん
が加入しているのを聞いて興味がわいて加入しました。今では貯ためたお金を子どもたちの教育費用に充て
ているとのことです。2人は「互助会では他のメンバーやNGOスタッフからアドバイスをもらえるので、
家計のやりくりうまくいっている」と笑顔で答えてくれたのが印象的でした。
子どもたちが安心して暮らせる社会の為に、その親たちが経済的に安定することが大切です。そのため
にも、互助会の役割はこれからますます大きくなっていくと考えています。
貯金通帳を手にしたジョナさん(中央)とジャネットさん(右)
<支援者のみなさまへ>
おかげさまで、村の子どもたちや学校環境、カカオ農家の生活などさまざまな面で成果が出ております。
あらためまして、みなさまに心より感謝申し上げます。
子どもたちの笑顔が広がっています
学校で学ぶ、元気な子どもたち
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