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違いってほんとは美しい。アートの力で感性を育み、みんなの生きやすさを応援する「てのひらを太陽に基金」とは?

「てのひらを太陽に基金」とは?

こんにちは、フェリシモ基金事務局のmotoです。

「てのひらを太陽に基金」は、東日本大震災をきっかけに設立し、「臨床美術」をベースとしたアートプログラムを展開する活動を支援しています。
アートセラピーの一種である「臨床美術」は、創作活動を行うことで脳を活性化する芸術療法で、フェリシモでは芸術造形研究所の監修のもとオリジナルのアートプログラムを開発し、おもに子どもたちの夢や感性をはぐくむ活動を行っています。
基金のネーミングは、みなさんご存知の童謡「手のひらを太陽に」に由来します。作詞を手がけられた「アンパンマン」でおなじみのやなせたかし先生とは、オリジナルキャラクターを用いた商品を展開してきたご縁もあり、基金の名称に曲名を使わせていただけることになりました。
この基金を設立したのは、フェリシモチョコレートバイヤーみりとして活躍している木野内美里さんです。臨床美術士の資格を持ち、自宅でアートプログラムを体験できる「脳がめざめるお絵かきプログラム」、誰もが身近な人や地域でワークショップを行うことができる「Rin-b!(リンビー)」の生みの親でもあります。
「てのひらを太陽に基金」誕生の経緯と、基金にかける思いを聞きました。

​​話し手:木野内美里さん
聞き手:フェリシモ基金事務局

みんながしあわせになる商品づくり

やなせたかし先生とは「神戸学校」にご登壇いただいたご縁から、「やなせたかしさんとのコラボで金太郎飴」という基金付き商品を一緒につくらせていただき、その後もさまざまな企画でイラストを描いていただきました。金太郎飴をつくったときは、「20のキャラクターを描いてください」とお願いをすると、その倍の数のアイデアを提案してくださるほどの、圧倒的な創作意欲をお持ちの方でした。とても気さくなお人柄で、常に“子どものために“ということを一番に考え行動されていました。やなせ先生の人を安心させる力ってすごいんです。隣にいらっしゃるだけでみんながハッピーになるし、やなせ先生が描くキャラクターは人々をしあわせにしてくれる。私たちも、お客さまへ商品をお届けする際は「誰かのしあわせにつながりますように」と願いながら送り出します。プランナーとして、やなせ先生のように人をハッピーにできるようになりたいとあこがれます。

「やなせたかしさんとのコラボで金太郎飴」

独自のアートプログラムを被災地へ

金太郎飴を発売しからまもなく、東日本大震災が発生しました。私の臨床美術士の資格を生かしてなんとか復興のお力になれないかと考えていたときに、「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」さまが声をかけてくださって、「東日本大震災100円義援金」を活用して岩手県遠野市を拠点に活動できることになりました。私自身、阪神・淡路大震災での経験から、震災の記憶やストレスが数年ではなくならないことも身をもって実感していたので、今こそ臨床美術の力が必要だと思ったんです。しかし、「せっかく岩手県まで来たのだから、できる限りいろいろなところで活動しよう!」と意気込んでいたものの、1日1件訪問するのが精一杯。というのも、リアス式海岸ってとっても広いんです。岩手県が四国とほぼ同じ大きさだってみなさんご存知でしたか?私はそれまで知らなくて。その後も何度か訪問しましたが、移動に時間がかかり、その分交通費や宿泊費などの経費がかかるものでしたから、「てのひらを太陽に基金 100円義援金」を通して活動費を募らせていただくことになりました。そして、アートプログラムを行うための基金付き商品として、2012年には「やなせたかしさんとコラボ 非常食にもなる ふわふわおいしいパンの会(15回予約コレクション)」を企画しました。実はこのパンを製造してくださったパン工場の工場長がやなせ先生の大ファンで、とてもよろこんでくださったことを覚えています。やなせ先生のもと、みんながいい活動をできたなという実感があり、おかげさまでたくさんのお客さまに手に取っていただけました。

「やなせたかしさんとコラボ 非常食にもなる ふわふわおいしいパンの会(15回予約コレクション)」
「やなせたかしさんとコラボ 非常食にもなる ふわふわおいしいパンの会(15回予約コレクション)」は阪神・淡路大震災のとき「非常食のパンはおいしくない」という声に動かされたパン屋さんが、試行錯誤して開発されました。

みんなで育む基金を目指して

基金のネーミングに使わせていただいた「手のひらを太陽に」は、ほんとにすばらしい歌ですよね。多様性を尊重しよう、みんなのいのちを大事にしようという思いにあふれていて。この名前ならば、みなまで言わずとも基金の趣旨が伝わり、みんなが大事にしてくれるような気がしたんです。そこで、やなせ先生に事情を説明して「子どもたちへ、臨床美術のアートプログラムを提供するために『てのひらを太陽に』という言葉を基金の名前に使わせてください!」とお願いしました。快諾していただいたときは、机の下でガッツポーズしましたね。なお、やなせ先生は、東日本大震災が起きてすぐ、さまざまな復興支援のための取り組みを展開されていました。「奇跡の一本松」を見たときに、「身近な人たちは先に亡くなってしまって、ぼくだけが取り残されている。自分と同じだと共感した」のだとやなせ先生が話してくださいました。

絵を描いて集中し、心緩まるひとときを提供

その後、日本臨床美術協会監修のもと、東京の芸術造形研究所さまとともに、フェリシモの「500色の色えんぴつ」をベースにしたオリジナルプログラムを開発し、500色の色えんぴつと共にプレゼントしました。場所を選ばず、四季を問わず、「500色の色えんぴつ」だからこそできるプログラムは、東日本大震災の被災地にて、学童保育などを中心に実践しました。現地での活動には、地元の臨床美術士の方に出張していただきましたが、私が参加した頃は、津波の被害がそのまま残っているような時期でした。子どもたちは表面上はしゃいではいるけれど、内面的にはストレス溜まっているであろう状態。けれど、このプログラムを実践している時間は絵を描くことにすごく集中しているから、一瞬でも被害の広がる景色を忘れられたのではないかと思います。また、子どもたちの保護者も大変な状況下におられて、子どもたちをほめる余裕もなかったと思うんです。だからこの時間は、心から子どもたちをいっぱい称賛しようと決めていました。

絵を描いて集中し、心緩まるひとときを提供

プログラムを終えると、ともに体験をした指導員の方から「今度はいつ来てもらえますか?」と切実な表情で聞かれることがよくあったんです。まだ余震が続き、指導員の方々も大変な状況でありながらも、子どもたちを預かるという使命があり、きっと心の負担も大きかったと思います。だから、指導員の方たちも、久しぶりにほかのことを忘れて集中し、自分と向き合うことができて、癒しの時間になったようでした。基金は、これらの活動の交通費や人件費に使わせていただいたり、関東の児童養護施設や、病院で行う障がいのある方たちへのワークショップなどにも活用しています。

みんなちがって、みんないい!

同じ頃、基金つき商品「脳が目覚めるお絵かきプログラム」も発売しました。誰でも気軽に臨床美術のプログラムに挑戦できるキットで、これまで1万5000人もの方が申し込んでくださっています。うまい・へたは関係ないというと、「ほんとかな?」思われるかもしれませんが、絵を描きたいけれど苦手だとか、子どもと一緒に描くことを楽しみたいというお客さまが多く、12ヵ月トライしてみた結果、「日常を忘れて集中することが出来ました」「私も臨床美術士の資格を取得しました」などと、うれしいご報告をいただくこともあります。また、プログラムとしてお客さまにご提供するだけではなく、企業や学校にて臨床美術士がワークショップを提供する「Rin-b!(リンビー)」という活動もフェリシモの部活動として行っています。リンビートという社外部員も100人を超えてきました。多様性のある社会とはいうものの、人との違いに苦しんでいる方や、しんどい思いをしている方は、ごまんといると思うんです。「Rin-b!」のアートプログラムは、人それぞれバラバラでいいということを視覚化できるのがいいところ。絵を描くことに没頭する時間は平等だし、年齢も立場も関係ない。ひとりの人間として輝けるのがアートであって、みんなちがってみんないいって思えるんですよね。

脳がめざめるお絵かきプログラム」は、親子のコミュニケーションツールや自分を癒す時間にも。ニーズにあわせたさまざまなプログラムを展開しています。

“違い”はとても美しいことば

実は私は、3歳の頃から絵を描いていて、大人になってからも個展を開催していたほどアートが身近にありました。その後、アートの世界から離れていた頃に、母ががんを患い、ストレスが溜まってつらそうにしているのをみて、「お母さん、絵でも描いてみたらいいのに」という感情が自然と湧き上がってきたんです。けれど、自由に絵を描ける人なんてなかなかいません。美術教育を受けてきた私ですら、アートの楽しさを伝えることはむずかしく、どうしたものかと考えていました。しかし、母が亡くなってから、「臨床美術」に出会って「これさえあれば世界中の人を救えるかも!」と、アートワークショップの活動を始めました。

「臨床美術」との出会いについてはなす木野内さん

アートって、人間に必要な要素なんですよ。以前、脳科学者の茂木健一郎さんとお仕事をさせていただいた際、「食事をしたり、睡眠をとることと同じくらい、アートは人がしあわせを感じる要素です」と教えてくださって、私もすごくそう感じています。“違い”って、ネガティブなものに捉えられがちですが、本当は褒め言葉であって、とても美しい言葉です。「Rin-b!」では、ワークショップを通じてもっと「人との違いが美しく輝く未来社会」をつくっていきたいと思っています。「てのひらを太陽に基金」は、そういう場をつくるために使わせていただいて、「自分はこのままでいいのだ」ともっとたくさんの方に感じていただくためにこれからも仲間とともに活動を続けていきます。

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コメント

  • 宮城県民 より:

    気仙沼は宮城県ですし、奇跡の一本松は陸前高田で岩手県です。

    • フェリシモ社会文化活動担当 より:

      宮城県民さま

      ご連絡をいただきましてありがとうございました。
      事実関係を確認しまして、さっそく本文を訂正いたしました。
      地名を間違えており、大変失礼いたしました。
      今後はこのようなことがないよう、充分注意してまいります。

      これからもどうぞよろしくお願いいたします。
      ありがとうございました。

      フェリシモ基金事務局

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