フェリシモCompany

カカオ農家さんも、食べる私たちも。チョコレートに関わるみんなを笑顔にしてくれる「幸福のチョコレート」と「LOVE&THANKS基金」にまつわる15のこと。ー後編ー

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Q7、お客さまから2600万円以上の基金が集まっています(2010年~2021年の10月時点)。その中でも、「スマイル・ガーナプロジェクト」では、どのように基金が活用されているのでしょうか?

白木:こどもたちを危険な労働から守ること、みんながちゃんと学校に通える環境をととのえていくために、地元のNGOと協業して支援を行なっています。
経済的な課題を抱えている家庭であれば、学用品一式を無償で提供してこどもがすぐに学校にいける体制を整えていきます。そして一時的ではなく継続して教育を受ける体制をつくるために、農家さんたちが経済的に自立できるよう、カカオの収穫量をあげて収入を増やしていくための技術トレーニングを行います。

「スマイル・ガーナプロジェクト」について話す白木さん

また、コミュニティレベルで児童労働をなくしていくために、村ごとに見守り体制(モニタリングシステム)を導入し、「こども保護委員会」という組織をつくって、定期的に村の中を観察しています。学校へ行くべき時間にこどもが働いているのを発見したら、こどもやご家族とコミュニケーションをとり、その家庭の課題を抽出して支援策をたてます。
さらに、学校環境が整っていないことが、教育機会をなくす一因になっているケースもあります。ですから、私たちが行政へ働きかけて学校建設と教育環境の整備を促すこともあります。私たちが寄付を募って校舎を立てることも可能ではありますが、それでは依存度を高めてしまいますから、地域の教育システムが現地の人たちの力でまわっていくように、側面からサポートするという方法をとっています。フェリシモさんはじめ、個人や企業の方たちからの支援により、これまで555人のこどもたちが児童労働から抜け出して学校に通えるようになりました。(*1)

*1 ACEが支援を手がけているのはアシャンティ州とアハホ州で、メインとなるコミュニティの数は10村、小さなコミュニティを合わせると80〜90ほどのコミュニティ支援を手がけてきました。

Q8、長きにわたり支援を手がけてこられて、どのような変化を感じますか?

白木:こどもたちの教育に対するモチベーションの変化です。それまでは、こどもも大人も学ぶことの意義をあまり感じていない部分があったんです。けれど、教育を受けたこどもたちの成長ぶりを目の当たりにし「こどもの教育は大人がみんなで守っていくもの」という考えが浸透したと思いますし、なにより、こどもたちに「学び続けていいんだ!」という思いが広がっています。高校や大学に進学するこどもたちが増えるにつれ、幼いこどもたちが憧れるようになるこどもが増えたとも聞いています。就学率はプロジェクトスタート時の就学率は70%ほどだったのが、今はおおよそ98%になりました。

Q9、数字からもみてとれる、大きな変化ですね!労働や教育環境を整えていくことが人の気持ちを変えていったんですね。農家さんたちの仕事ぶりにも影響しているのでしょうか?

白木:先ほどみりさんが、ショコラティエの方たちが誇りを持って仕事をしているとおっしゃっていましたが、カカオ農家の方たちはもともと自分たちがつくっているカカオがチョコレートになって日本に届いていることを知らなかったんです。農家さんがつくったカカオがチョコレートになり、「LOVE&THANKS基金」を通してチョコレートを食べてくださるみなさまの寄付をいただくことで、支援できているのだということを伝えました。それが「自分たちももっとおいしいカカオをつくろう!」というモチベーションにつながったと思うんです。「チョコレートがみんなをハッピーにしている!」という事実が伝わり、農家さんたちが自分の仕事に誇りを持てるようになったことは、とても大きな変化だと思います。

Q10、農家さんたちも含めて、世界規模で、生産プロセスに携わるすべての人たちが誇りを持ってお仕事ができるようになりつつあるのでしょうか。

みり:特にヨーロッパやオーストラリアのショコラティエは意識が高くて、環境問題をはじめ、社会で起きていることに対して課題意識を持っている人が多いんです。チョコレートって生きるか死ぬかの時に必要なものではないんですよ。なくても生きていける。けれど、カカオの生産地である赤道直下の国から、北半球へ送るので、そこで戦争が起きたらカカオの生産も輸送も止まってしまうんです。インフラの整備ができていないと、私たちのところへチョコレートは届かなくなってしまいます。だからある意味、世界が安定していないとチョコレートは食べられないはずなんですよ。世界中の人が普通にチョコレートを食べられる世の中は、最高の文明が存在していること、そして社会が平和である証なんですよね。

白木:2000年代初頭に、カカオの生産量第一位のコートジボワールで内紛が起きた時に、カカオの輸出がストップしたことがありました。カカオの価格が高騰してしまい、先進国でビジネスをする人たちも、そして食べる消費者も影響を受けたんですよね。そういう意味において、私たちが普通にチョコレートが食べられるという状況は、世界が幸せである裏付けでもあると、私も思います。

Q11、社会情勢がダイレクトに影響するのだということを実感しますね。コロナ禍における影響も大きかったのではないでしょうか?

みり:コロナでも、飛行機が止まったのでそれは大変なことになりましたよね。現地ではいかがでしたか。

白木:カカオの需要も落ち込みましたが、それでも農家の人たちはカカオをつくり続けてはいます。また、ガーナの学校がコロナで休校になってしまい、テレビやラジオを使って授業を行っていたようですが、その環境が整っていないことが多く、授業についていけないこどもが増えてしまったようなんです。ただでさえ状況のよくない農村地帯に、必要な支援や対策が届かない問題は常につきまといます。零細な農家さんたちの収入を安定させていくことは継続した課題で、最近ではカカオ農家としての収入に頼りすぎない、リスク分散が大事だということで、女性が職能を身につけるためのトレーニングプログラムをつくって、働ける機会を増やしています。
世界規模で考えて、支え合って生き続けていくためには、人も社会全体も健康であることが不可欠だと痛感します。

Q12、世界的な課題はいくつかありますが、チョコレートづくりに影響している要素はありますか?

みり:私は以前からずっと気になっていたのですが、地球温暖化の影響はいかがでしょうか?

白木:あります。ここ数年は、森林破壊の影響による気候変動のインパクトは大きくて。生産量を増やすためには農地が必要で、そのために森が破壊されています。特にコートジボワールでは森林破壊の速度が早まってきているということで、NGO業界もがビジネスセクターに働きかけています。世界のチョコレート企業を束ねてフォレストイニシアチブをつくり、植林活動を行うケースもあれば、森林破壊に加担していないか調査をしてから(カカオの)調達を行うよう企業に求めるような流れになってきています。
また、温暖化による気温の上昇でカカオをつくれる地域が変わってきていますし、雨季のシーズンがずれはじめて、雨量も読めなくなってしまい生育が悪くなったり、カカオが病気になりやすくなったりと、気候変動がダイレクトに影響してきています。

Q 13、みりさんは2021年のカタログでアジアに注目していますね。チョコレートの生産がさらにグローバルに展開しつつあるのでしょうか?

みり:これまでヨーロッパ一辺倒だったのが、タスマニアとかバルト三国などといった国の人里離れた場所にまで、天才的なショコラティエが誕生していて! その流れがいよいよアジアにもやってきています。アジアの特徴は、ツリートゥーバーといって、カカオ農家さんがチョコレートまでつくれること! そのクオリティも高くて。チョコレートの歴史的に新しい流れだと感じています。

白木:実はガーナではこれまでカカオは輸出するのみでしたが、ビーントゥーバーをつくる都会の若手の人たちが出てきました。ガーナのショッピングモールにショコラショップができていたりと、国内で生産する機会が増えているように思います。農家の人たちにとっては、まだ近所で売っていないし、高くて食べられないという現実ではありますが、ガーナ政府も国内消費を増やそうと力を入れています。

Q14、みりさんと、白木さんにとって、「LOVE&THANKS基金」とはひとことで言うと、どんなプロジェクトですか?

みり:私の夢と言えます。微力かもしれないけれど、仕事をするからには人や社会の役に立ちたいですし、自分の仕事が未来のためになる仕事をしたいと思っているので、それを叶えてくれるものです。

白木:笑顔の連鎖、という言葉が浮かびました。児童労働の問題も、誰かが悪意を持って意図的に行なっているわけではなくて、みんなが生き延びるために自分の目の前にあることに取り組むうちに、気が付かないところで結果的に問題を引き起こしているようなところがあって。人にはいろんな面があるけれど本来はいいハートを持っているはずなんですよね。
そして、ビジネスで世の中をよくしたいと純粋に思える企業はとても素敵だといつも思っています。そういう思いを素直に言える場があって、自然体で自分がいいと思えることを行動に移して、それが連鎖していった先に、幸せがあるような気がするんです。

笑顔のみりさん
笑顔の白木さん

Q15、今後の展望をお聞かせください。

みり:農家さんたちにチョコレートでみんながしあわせになっていることを、もっとお伝えしていきたいです。これだけのよろこびを生み出しているんだよ、って。食べた人の思いを届ける、橋渡しをしていきたいですね。

白木:みりさんや支援してくださるみなさんと一緒にガーナへ行って、あの空気を肌で感じていていただく機会をつくりたいとずっと考えています。お客さまも交えてツアーができたらいいねとお話をしていたのですが、コロナ禍で実現がむずかしくなってしまいましたが、いつか必ず実現したいですね。

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