こんにちは、フェリシモしあわせ共創事務局のFukuです。
「SAANA JA OLLI for kraso」は、フィンランドで最も古い町であるトゥルクを拠点に活動するデザインユニット・サーナヤオッリとフェリシモのコラボライフスタイルブランド。サステナブル先進国であるフィンランドの豊かな自然、文化から着想を得たテキスタイルを使ったアイテムとともに、フィンランドの今の暮らしをお客さまにお届けしています。
サーナとオッリは、正直であること、タイムレスであること、人の手を感じることをモットーに、地球へ配慮したテキスタイルを手がけています。
また、彼らは、「平和な心を持つために、自然からバランスを得ることが必要」と言うほど、自然とともにある暮らしがあたりまえであり、それと同時にアートのある日常というものをとても大切にしています。
「SAANA JA OLLI for kraso」に携わることで、暮らしにも変化があったという、プランナーの岡田結衣さんと吉田恵さんにお話を聞きました。
話し手:岡田結衣さん、吉田恵さん
聞き手:フェリシモしあわせ共創事務局
Q1、「SAANA JA OLLI for kraso」は、どんなブランドですか?
吉田:フィンランドの自然のなかに暮らすデザインユニット・サーナヤオッリとフェリシモがコラボしたブランドで、現在は年に2回、春夏と秋冬にブランドカタログを発刊し、お二人のテキスタイルを使ったアパレル商品や生活雑貨を販売しています。フィンランドは、人と自然との距離が近かったり、家で過ごす時間も人と共有する時間もどちらもとても大切にしていたり。そうした、フィンランドならではの価値観や暮らしぶりを、日本でも取り入れていただきたいなという思いから、ファッションアイテムから生活雑貨まで幅広くご提案しています。
Q2、カタログをみていると、フィンランドの暮らしぶりを垣間見ることできますね。
岡田:サーナとオッリの暮らしごとお届けできればと考え、カタログでは、サーナとオッリにモデルもお願いしています。フェリシモでは、これまでも北欧のテキスタイルを使ったグッズ企画などもありましたが、現地のデザイナーがモデル役も務めてくださるケースはおそらく初めてだと思います。
吉田:サーナとオッリは、カタログを見るお客さまとも、私たちプランナーとも同じ時代を生きている。そのお二人が描くテキスタイルからは、きっと、リアルなフィンランドを感じることができると思うんです。さらに、その暮らしぶりをお届けすることで、フィンランドをいっそう身近に感じることができるのではないかという思いから、あえてデザイナーのお二人にモデルを務めていただくことになりました。
岡田:現地では、サーナとオッリのご友人に撮影をしていただいています。そうすることで、より自然な生活風景が映しだされているのかもしれません。撮影するアイテムとフィンランドの季節が逆なので、夏のアイテムを撮影しようと思ったら外に雪が積もっていたり、日本よりも照明が控えめなので暗いと感じたりすることもあります。そうした事情は、本来のカタログ制作においてネガティブなポイントにはなりますが、「SAANA JA OLLI for kraso」の場合、それもまたフィンランドのリアルであって、そうした違いがあるからこそ、フィンランドの“風”をより感じられるのでは、と考えています。
Q3、「SAANA JA OLLI for kraso」の企画を手がけるなかで、フィンランドという国やサーナとオッリに共感したことや、日本とのギャップに驚いたことはありますか?
吉田:フィンランドは、サステナブルな思考が進んでいます。サーナとオッリも、環境問題にとどまらず、あらゆる事象に目を向けてご自身なりの考えをしっかりと持っていて、テキスタイルをつくる際にはその感性をとても大事にしておられます。
岡田:例えば、サーナとオッリはカーボンニュートラルな暮らしを目指しているそうです。特に、飛行機はCO2の排出量が多いのでなるべく使わず、列車や船で移動することが多いのだとか。ゆっくり移動できるから、その分、移りゆく景色をじっくりと体感できる、というメリットもあるそうで、環境負荷への意識に加えて、情緒的なことも大事にされているんですよね。
吉田:フィンランドは、7月の1ヵ月間が夏休みということもあって、昨年の夏にはスペインのポルトまで列車で旅行されたとおっしゃっていました。あと、私が驚いたのは、ヘルシンキでは環境問題への取り組みの一環で公共イベントでの肉類の提供が禁止になったということ。賛否両論あるようですが、政府が先陣を切ってそうしたアクションを起こすところにサステナブル先進国としての意気込みを感じました。
岡田:あと、サーナとオッリと企画を進めていると、長いスパンでものごとをみているのだなと感じることが多々あります。環境負荷が少ないということは大前提ですし、買ったときだけではなくて買ったあとも長く使えるものになっているのかという視点や、子どもが大きくなった時に「どうしてこれを買ったの?」と聞かれたらちゃんと説明できるよう、ものを作ったり買うときにかしこい選択をしたいという意思もお持ちです。
吉田:そうしたお二人の思いがちゃんと伝わるものを私たちもつくりたいと常々思っています。
Q4、アイテムの幅がとても広いですね。どのような点にこだわって企画をしていますか?
吉田:フィンランドの空気を感じながらも、日本の暮らしにフィットするものづくりを目指しています。
岡田:北欧は寒い国なので、室内で過ごすことが多いんです。だから、暮らしの中にアートを取り入れる習慣があって、照明やキャンドルなどこだわりのプロダクトがたくさんあります。けれど、日本に暮らす私たちにとって、日常にアートを取り入れることが心地よさを生むかというと必ずしもそうではありません。日本では、デザインは素敵でありながらも、着心地がいいことやUVカットなど、機能性が備わっているものがニーズとして高い傾向にあります。ですから、フィンランドの文化を取り入れつつ、実用的なものづくりを目指しています。
吉田:フィンランドと日本での文化の違いや時差があるなかでのやりとりですし、サーナとオッリの考え方など、いくつか制限はありますが、それもブランドの個性でありメッセージだと私は思っています。その制約があるからこそできる、おもしろいものづくりを考えていきたいです。
Q5、テキスタイルもいろいろなタッチがありますね。
吉田:そうなんです。この豊富さは、サーナヤオッリの特徴だと思います。フィンランドの自然、街並み、生活をモチーフに描かれていて、細く繊細なラインのもあれば、太くて大胆なタッチのイラストもあって、作風が一通りではないんです。それもすべてお二人で共作して描いていらっしゃるそうです。
岡田:同じ植物を描いていても、シリーズによって雰囲気がぜんぜん違っていて、テキスタイルごとに丁寧なメッセージが込められています。例えば、「毎日使うものだから使いやすさにこだわった スリムなL字ファスナー長財布の会」などに使用している「The Thin Ones(ザ シン ワンズ)」というテキスタイルであれば、「ランダムな植物の形から、予測不可能な人生の美しさをほのめかしています」とあったり、あるいは、子どもの頃の思い出が詰まっているテキスタイルがあったり。フィンランドの文化、お二人の個人的な歴史を感じられるあたたかみのあるメッセージが込められているんです。
吉田:テキスタイルデザインのコンセプトも幅広いので、どのテキスタイルであればお客さまによろこんでいただけるのかを考えるのが楽しいんです。また、サーナとオッリは、パターンになっているテキスタイルの一部を抜き出したり、並び替えたりしてもかまわないと言ってくださるので、アイデアが無限に広がります。そこまで柔軟に対応してくださるデザイナーさんはめずらしいと思います。
Q6、日本ならではの技術を生かしたアイテムがたくさんありますが、どのような背景があるのでしょうか?
吉田:サーナとオッリの日本への特別な思いがあって、「SAANA JA OLLI for kraso」の商品は、一部をのぞいて、ほとんどの製品を日本でつくっています。
岡田:サーナは、京都の大学で半年間テキスタイルデザインを学び、その後も数回日本に滞在する機会があり、日本をとても好きになったのだそうです。将来的には日本に暮らしたいと言うほどの思いがあって、日本の細部へのこだわりや“もの”に込められた美学に対してすごくリスペクトされています。
吉田:サーナとオッリは、長く安定して使えるものをつくりたいという思いが強いので、長い時間かけて培われてきた日本の技術力や繊細な手仕事との相性は抜群だと思います。
岡田:フィンランドにはない日本の技術と、フィンランドの文化や風土のなかで作られたテキスタイルとが混ざり合うことが「SAANA JA OLLI for kraso」の価値やおもしろさだなと思います。
Q7、今シーズンおすすめのアイテムは?
岡田:「植物の息吹を感じる ふんわり5重織りガーゼのコットン100%ハーフケット」は、約130年の歴史を持つ大阪・泉州のタオル屋さんに作っていただきました。ガーゼが5重になっているのですが、内側の3枚をさらに密度を粗く空気を織った5重織りで、空気を含んでふんわりとした風合いになっています。サーナとオッリのご自宅で出しっぱなしにしていても、違和感なくおしゃれに見えるデザインを意識しました。
吉田:それから、「シャトル織機で丁寧に織り上げた 甘織りガーゼが空気のように軽い コットン100%のストールの会」も、同じく大阪の泉州エリアで織られています。縦糸と横糸をぎゅっと詰めずに織る「甘織り」という技術は、糸と糸の間に隙間ができるのが特徴です。昔から使われているシャトル織機という織機でゆっくり織らないとできないのだそうです。
吉田:一般的には端の処理は三つ折りなどにして縫製しますが、このストールではからみ織りという織り技法で処理しています。一見、処理がほどこされていないように見えるほど繊細な技法ですが、織ってあるからもちろんほつれないし、縫っていないからその分軽くてやわらかい。ほんとうに空気みたいにふんわり巻けるので、暑い季節でも使いやすい1枚です。
岡田:ちなみにこれは「After The Storm(アフター ザ ストーム)」や「Flowers(フラワーズ」などの細いタッチのテキスタイルを使っています。よく見るといろいろなモチーフが描かれているんです。
Q8、フィンランドの文化やサーナとオッリの日常がより濃く反映されているアイテムがあれば教えてください。
吉田:「アートと共にカハヴィタウコなひとときを マグカップと国産桜材のトレイセットの会」は、まさにフィンランド独自の文化からインスピレーションを得てつくったアイテムです。フィンランドには「カハヴィタウコ」という、コーヒーや軽食とともに休憩をとる文化があり、国の労働法で定められているほど定着しているんです。人の団らんを生むひとときとして大事にされていて、職場での交流を生むためという目的もあるそうなんです。その影響もあってか、フィンランドは一人当たりのコーヒーの消費量が世界一だと言います。
吉田:コーヒーカップのデザインに採用したテキスタイルは、「Bon appetit(ボナペティ)」。果物や野菜、キノコのモチーフを抜き出してデザインしています。そして、日本の桜材で作ったトレイは、熱や水に強いという機能性に加え、年数を重ねるごとにあめ色になっていくという特徴があって、経年変化を楽しんでいただけるアイテムになっています。ドリンクと軽食をちょこんと乗せるだけで絵になって、朝食などにもおすすめです。
岡田:ボナペティ柄には、「友人や家族と一緒に料理をし、食事をする瞬間から着想を得たパターンです。 親しい人たちとの祝いの場は、食べるという行為以上の、人生最大の喜びのひとつです。」というメッセージが込められています。日本以上に家族や友人との食事を大事にされていますよね。
吉田:日本でも「カハヴィタウコ」のような文化が広まって、団らんのひとときをもっと素敵にしてもらうためにトレイセットがお役立てばうれしいです。
Q9、岡田さんと吉田さんが、「SAANA JA OLLI for kraso」に携わるなかで取り入れた、サステナブルな行動や考えはありますか?
吉田:ささやかな変化ではありますが、ものを選ぶときにどのような素材が使われているのかなど、背景を確認するようになりました。あと、私はもともと古着が好きなのですが、それもサステナブルな選択の一つだと思えるようなって、よりポジティブに大好きなヴィンテージアイテムをお買い物できるようになりました。
岡田:お買い物をするときに、最後まで使い切ることができるのかをじっくり考えてからものを買うようになって、ものを買いすぎないようになりました。また、食事を残さないこと、旬のものを食べる、使えなくなった布を雑巾として再利用するなど、日常の細やかなところに気を配れるようになったかもしれません。でも、よく考えたら、繕いをはじめ、ものを長く使う文化は、日本人がもともと持っている精神とすごく近いものであって、フィンランドと日本は、そういう生活文化が似ているのかもしれないなと感じます。
吉田:サーナとオッリは、お二人ともヴィーガンなのですが、SNSなどに掲載されている食事を見ていると、とてもおいしそうだし、カラフルなケーキなんかも出てきて楽しそうなんですよ。ヴィーガンって、どこかストイックなイメージがあったけれど、しんどい思いを伴うものではなくていいんだなと感じました。
岡田:基本的に、無理なくというスタイルがあたりまえのこととして、サステナブルな生活をされていますよね。
Q 10、今後の展望をお聞かせください!
吉田:日本製の技術を使ってものづくりを行うなかで知ったことなのですが、今、日本のあらゆる生産の現場において高齢化が進んでいます。70歳の縫い子さんが“若手”と言われる現場もあって、「10年後には日本でものづくりができないのでは」とおっしゃる方もいるほど、技術の継承が難しくなってきています。だから、日本の技術を生かしてものを作り続けることはとても重要なことで、結局、日本製でものを作ることこそが“文化の継承”になっていくと思うんです。そうした日本の危機に気づくことができたので、これは一つの使命だと思って日本製のものづくりを継続していきたいと思っています。
岡田:これからもっと、サーナとオッリの思考をより取り入れたものづくりをしていきたいです。私たちも、サーナとオッリとご一緒することで、ものや環境に対する意識が変わったり、しあわせにしてもらっている感覚があるので、二人の価値観をもっとお客さまにお届けできればいいなと思います。
吉田:環境に対する意識しかり、ジェンダー平等に対する意識も高くて、私も、フィンランドのことを知ったからこその憧れがあります。けれど、そういう未来に向かうための判断は、日本に暮らす私たちにもできることだと思うんです。その判断をするため大事なことは、“知る”こと。「SAANA JA OLLI for kraso」を通してフィンランドの文化をお届けすることで、お客さまが新たな視点を得るきっかけにもなればいいなと思います。ものづくりや流通の背景には、環境負荷や労働問題などたくさん課題があります。けれど、私はやっぱり買い物が好きです。だから、買う“もの”がそういう課題をクリアしていて、気持ちよく買えればベストだと思うんです。そういう未来に向けて、「SAANA JA OLLI for kraso」でも努力し続けたいです。
SAANA JA OLLI for kraso
深い自然との絆、そこから着想を得たテキスタイルを日常に取り入れることで、あたりまえの生活も、美しい情景のひとつになる。
おだやかな自分に戻り、心を寄せる人との時間を色濃く過ごせる。
「自然と私」「家と外」が、繋ぎ目なく交わる。
フィンランドの今の暮らしを伝える、サーナヤオッリのコレクションです。
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