こんにちは、フェリシモしあわせ共創事務局のFukuです。
2023年に始まったフェリシモが贈るコレクション「夢中天国」。“ひそやかなる蒐集(しゅうしゅう)の愉悦にひたる、大人のためのコレクション”をキーワードに、紙ものや天然石など、さまざまなコレクションシリーズを紹介しています。その中で今回取り上げるのは、今はもう手に入らない「明治から続くCherry Brandのヴィンテージガラスビーズコレクションの会」。明治創業以来、ガラス玉や人造真珠などを製造してきた株式会社松若硝子真珠工業所が、主にアメリカへの輸出用に立ち上げたブランド「Cherry Brand」。ヴィンテージビーズとして世界中で高額で取引されるなど、多くのファンの心を惹きつけています。今では生み出すことができないこのビーズに着目し、商品を企画した小林勇介さんにお話をお聞きしました。Cherry Brandのビーズの魅力、そして「夢中天国」で繰り広げられるコレクションの世界をお楽しみください。
話し手:小林勇介さん
聞き手:フェリシモしあわせ共創事務局
Q1、大好評が続き、「メーカーさんの倉庫が空っぽになった!」と話題の「Cherry Brandのヴィンテージガラスビーズコレクションの会」。この企画は、どのように始まったのですか?
小林:お取引先のアクセサリーメーカーさんから、松若硝子真珠工業所さんをご紹介いただいたのが、そもそもの出会いでした。このガラスビーズは、大阪の泉南市にある松若硝子真珠工業所さんが、大正10年に始めた輸出ブランド「Cherry Brand」のビーズです。硝子づくりの技術を使って日本の職人さんたちが生み出したさまざまなデザインのビーズは、アメリカでとても人気があり、1993年に製造を終えたのちも、ヴィンテージ品として高値で取引されてきました。そんな華やかな歴史を持っているものの、自社の倉庫では品番管理されていない大量のビーズたちが保管されていて、「これをどうやって今後売っていこうか?」という課題があったそうです。実際にビーズを拝見すると、一点一点が個性的かつバリエーション豊かなビーズたちが並んでいる様子がとても素敵で、これをコレクションという形にできないか?と考えるようになりました。
Q2、なぜ、このような個装体裁にしようと思ったんですか?
小林:倉庫で管理されているビーズは、袋やバケツに入れて保管されていて、それだと雑多な感じで、ビーズひと粒ひと粒の表情や高級感が見えにくかったんです。特にこのヴィンテージガラスビーズは、1粒1粒がそれぞれ違う1点もの。ひとつずつワイヤーで留めて標本のように見せることで、このビーズがもつ歴史の深さや貴重さ、デザインの美しさが伝わるようにと考えました。また、全てが異なるデザインであるがゆえ、品番で管理ができないという懸念点もあり、そこを逆に楽しんでもらえるようなお届け方法を選ぶことが課題でした。
Q3、職人さんによる商品だからこその課題ですね。どのようにお届けしたんですか?
小林:ひと箱ずつ異なるビーズの組み合わせを楽しんでもらいたい、と考えた時に、実は既存の販売の仕組みだけではその売り方ができなかったんです。すでにあったお届けパターンは「ワンパターン」や「回数限定」「エンドレス」など、いくつか種類がありますが、必ず「1番の柄はこれ」というようにデザインを決めて、まとまった数量の同じ商品を用意しないといけない。でもCherry Brandの場合、1点ものなのでそれができないんです。1ケースに6つのビーズが入っているのですが、そのセットはひとつしか作れない。そこでこの販売を実現するために、「おたのしみワンパターン」という売り方を提案しました。
Q4、商品の魅力を生かすために、新たな販売方法が! 具体的にどのようなパターンなのでしょうか?
小林:このヴィンテージビーズで言えば、毎月6つのビーズが入ったケースが届くのですが、すべてが一点ものなので、基本的にカタログには掲載されていないデザインのものが届くことになります。お客さまには、今月はどんなものが届くのだろう?と、ワクワクしながら、コレクションが届くのを待っていただきます。今までになかった販売方法なので、新たな表示をWEB上に作ったり、注意表記の文言を考えたりと、他の社員の協力を得て実現することができました。いざ商品の販売がスタートすると、本当にたくさんの方がご購入くださって。毎月継続してご購入くださる方も実に多く、楽しんでいただけたことを心から感じました。ビーズって、どう使うかということや、使えるスキルがあるか?ということが求められる、ニッチなジャンルなのではないか?と考えたこともあったんですが、僕自身、これをどう使うかよりも、デザインがめちゃくちゃきれいという魅力に惹かれたので、お客さまにも同じように感じていただけるのではないかと思ったんです。美術品や工芸品のように、コレクションとして集めていく、そういう楽しみ方を多くの人にしていただけたのではないかなと感じています。おかげさまで発売してから約1年で、松若硝子真珠工業所さんの倉庫が空っぽになったと連絡が。うれしい驚きでした。
Q5、ないならば作ろう!という志が素敵ですね。「おたのしみワンパターン」を作ったことで、何か他の商品にも変化などはありましたか?
小林:メーカーさまとのご商談の中で、これまでのやり方だと、最低ロット分は同じデザインで量産ができる必要があるという暗黙のルールがあったんです。一方で「おたのしみワンパターン」の販売方法をご説明すると、「それならこんなものがあります」とさまざまなご提案をいただけるようになりました。その結果、商品の幅も広がり、今はドイツのヴィンテージカボションのコレクションを企画中です。
Q6、新たな扉が開けたんですね。このヴィンテージガラスビーズは「SeeMONO」の商品として始まりましたが、その後「夢中天国」でも販売されています。「夢中天国」はどのようなショップですか?
小林:「夢中天国」は2023年にできたショップで、「ひそやかなる蒐集の愉悦にひたる、大人のためのコレクション」をテーマに商品を企画したり、他ブランドの蒐集向き商品を紹介したりしています。僕自身、何かを集めて蒐集することが好きで、子どものころは石や虫の標本などをコレクションしてきました。フェリシモでは、「コレクション」という言葉がよく使われますが、広い意味で使われています。例えば、既にあるコレクションは生活雑貨やファッションなど、より実用性のあるアイテムが多かったんですね。でも僕にとってのコレクションは、“なくても困らないけれど、ついつい集めちゃうもの”という、より蒐集の要素が強いイメージで、集めていくことで達成感が芽生えて自慢したくなるものや、希少性が高いものなどが、蒐集の対象でした。実際に「明治から続くCherry Brandのヴィンテージガラスビーズコレクションの会」は好評でしたし、“フェリシモの蒐集”というカテゴリを作ったら、お客さまにとっても新しい楽しみが増えるんじゃないか? そう思って、新たなショップをつくろうと事業部へ呼びかけてみたんです。
Q7、そうやって始まった「夢中天国」で、これまで小林さんが企画した商品は、どのようなものがありますか?
小林:ひとつ例に挙げると、「日常にアートを添えてくれる ガラスのオブジェコレクションの会」です。これまたペーパーウェイトとしてくらいしか実用用途がないアイテムなので、どのくらい気に入ってもらえるかな……?と思っていたのですが、継続して購入してくださるお客さまが多く、その数字がどんどん伸びています。オブジェは全部で10種類あるのですが、もともと名前がつけられていなかったので、それぞれの名前を僕がつけました。植物にも見えるような海の生き物にも見えるようなデザインは、まるで概念を表しているようで、「Revolve(循環)」や「Float(浮遊)」など、ひとつずつ考えていきました。
Q8、「夢中天国」は商品のジャンルが幅広いですが、どのように企画を考えているのでしょう?
小林:「夢中天国」では媒体担当の方やWEB担当の方も一緒になって、案を出しあいます。その結果、「私、おしゃれなトートバッグを集めているんです」というWEB担当者の話をきっかけに、「あえてぺらぺらが心くすぐる 偏愛トートバッグ&きんちゃくの会」が生まれました。トートバッグマニアの担当社員の話を踏まえて、「架空のお店のノベルティバッグ」というテーマで7つストーリーを携えたトートバッグを作ることに。アメリカからの帰国子女である担当者が中心となって、グラフィックデザイナーと、ネイティブの英語教師の方も迎えて、企画が練られていきました。
小林:あと「夢中天国」では、新商品だけでなく他のブランドですでに存在する蒐集向き商品をピックアップすることにも力を入れています。
Q9、フェリシモの他のブランドからセレクトする理由はなんでしょうか?
小林:実は「SeeMONO」だけでなく、「ミニツク」や「クチュリエ」にも蒐集向きの商品は以前からあるんです。ただ、コレクション好きの方にきちんと届いていなかった部分もあるのではないかと思っていたところもあって。今も実感として、「夢中天国」を通して紹介することで、「こういうものがあったんだ!」と初めて気づいてくれる方がいるといいなと思っています。既存の商品を集めて「夢中天国」で紹介することは、今まで点だったものが面でつながり、新たなお客さまの琴線に触れるのではないか、と考えています。
Q10、どう見せるかという編集的な視点を持つと、そのよさがさらに出せるわけですね。では、最後に今後の展望をお聞かせください!
小林:“あってもなくても困らない”コレクションは、ニッチな層に向けた企画の場合もあり、担当者としては正直なところ、売れるかどうかの判断が難しく、手が出しにくいものでもあります。でもだからこそ、フェリシモがやったらおもしろいんだろうなと思います。僕はゼロから企画を考えるというよりも、すでに存在する商品の魅力をどのように打ち出していくかを考えるほうが好きなので、まだ眠っているいいものをどんどん見つけていきたいですね。
僕は入社して15年ほど経ちますが、「YOU+MORE!」や「ミュージアム部」など、自分が入社した当時はなかったブランドが続々とできています。いつか、蒐集と言えばフェリシモの「夢中天国」、というような存在になっていけたらいいなと思います。
SeeMONO
「日常に、新しいもの、美しいもの、楽しいもの。」
SeeMONO(シーモノ)は、楽しいおうち時間を提供するインテリア雑貨ブランドです。
毎日の中に新鮮な視点やクリエイトする気持ちを大切に、気軽に楽しめる「おうちワークショップ」と、お気に入りコーナーを彩る「インテリア」の数々をご用意しています。
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