こんにちは、フェリシモ基金事務局のmotoです。
「極域科学研究支援基金」は、南極観測隊で有名な国立極地研究所の50周年記念にフェリシモ「猫部」とコラボして生まれた基金です。世界で唯一、南極での越冬を経験したという猫、「たけし」をモチーフにしたコラボグッズを2023年9月より発売しています。
第一次南極観測隊のみなさんを癒やして支えた「たけし」に敬意を表したグッズは、実際にたけしが南極の地で愛用していたベストをモチーフにデザインしたものや、南極での「たけし」の写真がプリントされた小物など、半世紀以上のときを越えて、日々の暮らしの中で「たけし」にふれることができるラインナップです。
販売価格の一部は、実は私たちの暮らしにも深く関わる極域研究の存在を、より多くの方に知ってもらいたいという思いから設立された「極域科学研究支援基金」として研究支援に活用されます。基金の立ち上げを担当した小木のり子さんにお話を聞きました。
話し手:小木のり子さん
聞き手:フェリシモ基金事務局
「たけし」がつないでくれたご縁
人間と働く猫っていますよね。例えば、イギリスの首相官邸やロシアのエルミタージュ美術館には、ネズミ獲りの役職を持った猫がいたり、日本にも駅長としてお客さまを出迎える猫がいたりします。猫部のミーティングで、そんな「人間と働く猫」のことが話題になったとき、南極に行った猫がいたことを思いだしたんです。それで、国立極地研究所(以下、極地研)さんのWebサイトを見たら、「たけし」の特集ページがありました。早速、極地研さんにお問い合わせを入れて、何かコラボさせてもらえないかと相談したところ、なんと担当の方がフェリシモの長年のファンの方で、猫部のことも知ってくださっていたんです。しかも極地研さんは、ちょうど50周年の記念イヤーに向けて盛り上げ企画を実施したいと考えられていた時期でした。「たけし」がつないでくれたご縁ですね。でも、その時点では、私たちも極地研さんが果たしている役割については何も知りませんでしたから、実際に極地研さんを訪ねて展示施設の南極・北極科学館をご案内いただいたりしながら理解を深めることから始めました。教わるなかで、日本の南極観測隊は昭和基地での観測データから世界で初めてオゾンホールの存在を確証するデータを発表していたことを知りました。自分たちの身近な暮らしの保全に関わる地球環境の観測に尽力されていたんですね。こうして、つながったご縁を大事にしたいと「極域科学研究支援基金」をつくることで、人と猫とがしあわせに暮らしていくために守らなければならない環境の問題に関心を向けてもらえる、きっかけになれればと思いました。
「たけし」グッズを購入することで、南極での研究を支援
基金の仕組みはシンプルで「たけし」のグッズを購入いただくと、その販売価格の一部が極地研さんの研究支援に活用されます。ありがたいことに、これまで猫部がつくったグッズに付随する基金(フェリシモの猫基金)にはたくさんご支援が集まっており、全国の保護団体さんに拠出され、野良猫の殺処分を減らすためのTNR・TNTA活動や、保護動物たちのフード代や医療費に、大切に活用させていただいております。みなさまのご支援のおかげで、野良猫の殺傷処分数はかなり減らすことができていて、もちろん引き続きこの問題には向き合っていきますが、高齢者のペット問題や、多頭飼育崩壊などの問題に、猫部の取り組みを拡大するフェーズだととらえていました。そうした流れのなかで、先ほど述べたような猫の社会課題解決を直接支援するのでないけれど、猫をきっかけにして社会を取り巻く問題を知り、大きな視点で見ると猫部の理念である「猫と人とがともにしあわせに暮らせる社会を作る」ための研究を支援する新しい基金のあり方を整えていきました。コラボグッズは、極地研さんの全面協力を得て5アイテムをつくることができました。
まず、「たけし」を象徴するものとしてつくったのが人間用の「南極へ行った猫たけしとおそろいベスト」です。「たけし」は実際に隊員さんお手製の救命胴衣風のベストを着せてもらっていたんです。いかに隊員さんから愛されていたのかがよくわかると思って、「たけし」とおそろいのベストをつくろうと。再現性も高いんですよ。コーデュロイの畝(うね)の感じは、極地研さんのアーカイブ室からご提供いただいた写真を参考にできるだけ忠実な素材をセレクト。胸にはこちらも隊員さんの描いた「たけし」のイラストが刺しゅうされています。これは、当時の船内報に命名を伝えるために書かれていた記事のイラストを活用しています。「たけし」という名前は、じつは当時の隊長さんの名前だそうで、隊員から募集したら「たけし」に決まったそうです。「おい!たけし!」って言えるからストレス発散になったとか、ならなかったとか。極地研のみなさまにとって今でも「たけし」はアイドル的な存在で、みなさんグッズ化をとてもよろこんでくださいました。
グッズを通じて広がっていく地球環境や研究への関心
グッズがリリースされると「あのたけしがグッズになるの!」と話題にしていただく方も多かったですし、「そんな猫がいたことを初めて知った!」というリアクションもありました。ふだん猫部で発信しているリール動画は8千から1万再生くらいなんですけど、「たけし」グッズの紹介動画だけ9万2千再生で。注目度がすごく高かったですね。
極地研さんの中でも話題になって。この前、研究関係者での研究会があったようで、そこでたけしのグッズも並べて展示していただきました。人だかりができていたみたいで。第64次南極観測隊の隊長さんがすぐに購入いただいてベストを着たお写真も送ってくださいました。猫好きさんだけでなく、南極ファン、船舶ファンの方にも届いたようです。基金に関しては「直接、寄付金を振り込んだほうがいいのでは?」というご意見もあります。もちろん寄付も大賛成ですし、是非形にとらわれず研究支援をいただきたいのですが、グッズが仲介するからこそ、そのグッズを介したコミュニケーションの中で研究のことが広がっていく側面があります。「たけし」グッズを身につけている方がいて、それをみてくださる方がいて、そのコミュニケーションのなかで、たけしや極地研さんでの研究のことを話す機会が生まれ、グッズというきっかけがなかったら気にすることはなかったであろう地球環境のことを「そうなんだ!」とわからせてくれるのがおもしろいなと。そういう体験を、買ってくださったお客さまにもご提供したいと思いました。「たけし、かわいい」ということをきっかけに観測隊の活動や、それが自分たちの地球環境につながるっていうことを知っていただけたら、「たけし」としてもうれしいのではないかなと。
「猫部」というプラットフォームを使って、みんなで取り組みたい
今回、「猫部」は、地球環境に関する研究を支援するという新しい基金に取り組みました。今後もグッズなどを入口として、みんなで人と猫にとって前向きな未来を描ける企画ができたらと思っています。日本の猫の飼育数が、小学生の数を超えたのがもう10年くらい前です。2016年の統計では、15歳未満の子どもの数よりも、ペット(犬・猫)の飼育数が多いという結果がでており、ある意味、子育て世帯より猫がいる世帯の方がマジョリティになってきています。それゆえ、支援の現場でも高齢者の飼育限界の問題や多頭飼育、飼い主の心のケアの問題など切実な課題が増えています。今、猫を飼っている方、猫好きさんが一丸となれば日本が動く、と言えば大げさ過ぎるかもしれませんが、猫をきっかけとすれば、いろいろな問題にアプローチできることを今回の「極域科学研究支援基金」で実感しました。これからも、「猫部」というプラットフォームを使っていろいろな取り組みができたらなと思っています。みんなで力を合わせればできることを、実践していきたいです。
国立極地研究所×猫部 商品一覧
第1次南極観測隊に幸運の猫として同行し、無事帰国したオスの三毛猫「たけし」。たけしにまつわる商品をきっかけに、国立極地研究所の活動をたくさんの方に知っていただき、基金付き商品で極地研究を支援するプロジェクトです。
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