
こんにちは、フェリシモしあわせ共創事務局のFukuです。
「gokigen Lab.」は、お客さまの声を集め、からだやこころの悩みに役立つ情報を発信したり、フェムテック商品を開発したりするプロジェクトです。
すべての企画のみなもとは、発足時に集まった6000人以上のお客さまの声。2021年のプロジェクト発足以来、みなさまのお悩みをもとに、使う人の日常をサポートするアイテムやWebコンテンツを発信してきました。細部にまで配慮された、ありそうでなかった“小さな工夫”が特徴で、日常の困りごとをそっと解消してくれる商品ラインナップや情報の密度が魅力的です。
前回のインタビューから2年。今回は、メンバーの赤松麻衣さん、板谷智史さんに、商品が生まれるまでのお話とともに、日々どのような思いでプロジェクトに取り組んでいるのかを伺いました。
話し手:赤松麻衣さん、板谷智史さん
聞き手:フェリシモしあわせ共創事務局
Q1、お二人はふだん、どのようなお仕事をしているのでしょうか。
板谷:「gokigen Lab.」の他に、キャンペーンのお知らせやDMなど、全社的な媒体物の企画や制作を手がけています。それから、ファッションブランド「サニークラウズ」の商品をより多くのお客さまに知っていただくための販売戦略を立てるお仕事を担当しています。
赤松:私は、ファッション事業部に所属し、Web制作や商品企画などを手がけています。ときには取材をしたり撮影に出かけたり、ファッション事業部にかかわるいろいろなことをサポートするチームでお仕事をしています。

Q2、前回の取材から2年が経ち、商品の数やWebコンテンツが充実しています。近ごろはどのような活動をしているのでしょうか?
板谷:現在も、週に一度、定例ミーティングを行っています。ミーティングのはじめの20分くらいは、ざっくばらんに話せる雑談の時間を設けているんです。
赤松:「gokigen Lab.」は、「からだやこころのことをあたり前に話そう」というコンセプトから始まったプロジェクトなので、今ではプロジェクトメンバーとなんでも話せる場になっています。からだやこころのことだけではなく、気になるニュースや話題のSNS投稿、生活上のできごとや投資に至るまで、時事的なことも個人的なことも、雑談の時間にはなんでも話しています。
板谷:僕たちのこころやからだは、生活環境や社会的な状況のなかで日々変化し、そのときにしかない状態を抱えているものだと思うんです。だから、ざっくばらんな時間をあえてつくっているのは、こころとからだのことを話す前に生活や社会を俯瞰してみようという意図です。ちなみに男性メンバーは僕のみで、他の5名は女性。年代や生活スタイルも異なるメンバーが所属しています。

Q3、“研究所”という機能を持ってスタートした「gokigen Lab.」ですが、お客さまや社会のニーズをどのようにくみとって商品やプロジェクトに反映されているのでしょうか?
赤松:プロジェクトがスタートする際に、6000人以上のお客さまにご協力いただいたアンケート結果がベースになっています。企画をする際に一番大事にしているのは、体験に基づくリアルな声です。例えば、生理にまつわる商品を企画する際には、アンケート結果からお悩みをピックアップして、困りごとを整理し、解決策を模索しながら商品を開発していきます。「吸水ショーツの構造を応用したポケッタブル防水シート」は、「生理中の経血の漏れが気になる」という声を参考にして作りました。会議中に経血が漏れたことがある方から「洋服が汚れてしまうのは仕方がないけれど、会社の椅子を汚してしまうのは困る」というお悩みが寄せられました。そこで、持ち運びしやすくコンパクトな“折りたためる座布団”をイメージして作った商品です。 “かゆいところに手が届く”発想でお客さまに寄り添えないかという思いが常にあります。

板谷:テクノロジーを駆使した、いわゆるフェムテック商品ではなくて、 “ちょっとしたアイデア”で、使う人が楽になったり気持ちが和らいだりするものづくりを目指すところは、フェリシモらしさかなと思います。同じような視点で企画をしたのが、「ポーチにもなるバイカラーデザインのタオルハンカチの会」です。
赤松:子どものいる女性から、「生理中であることを周りに知られるのを嫌がって、子どもが学校でナプキンを変えられない」というお声が届き開発した商品です。見た目はハンカチだけれど、開くと夜用のナプキンも入れることができるポーチ仕様になっていて、もちろんハンカチとしても使えるアイテムです。こんな風にアナログに解決できる商品は人気がありますね。

Q4、「gokigen Lab.」発足時から企画していた「性とからだとこころを知るカード」が完成しましたね!カードについて教えてください。
赤松:未就学児から中学生を対象とした、家庭で使える性教育のためのカードです。二つ折りのカードが全部で15枚入っています。からだのつくりからはじまって、生理のこと、性的同意の必要性、性被害に遭ったときの対応など、監修の宋美玄先生が日々発信していらっしゃる情報に加え、自分の子どもにどんなことを伝えるべきなのかを考えながら内容を組み立てていきました。1枚ごとのカードの構成は、表紙に対象年齢が書いてあり、中面には詳しい内容がイラストとともに描かれています。

板谷:企画段階からおよそ1年かけて2023年10月に完成しました。中面の詳細の部分は、誰かの意見ではなく、事実だけを伝えることにはこだわりましたよね。
赤松:こうした方がいいとか、これはだめ、とは言いたくなかったんです。そして、このカードをつくるにあたり一番大事にしたかったことは、親と子が対話するきっかけづくりになること。なので、このカードのすべてを子どもに教えることが正解、というものではありません。親子が対話する環境をつくることが目的なので、裏面には「話す・体験するヒント」という項目も入れました。何をきっかけにすれば、性に関する情報を子どもと話しやすくなるのかを宋先生と相談しながらつくりました。
Q5、性やからだの話を親と子でできることを目指した背景には、お客さまや「gokigen Lab.」のメンバーのどのような実感が影響しているのでしょうか?
板谷:性教育の必要性はわかるけれど、親が何から教えればいいのかわからないとか、あるいは世間の情報の信憑性をどのようにはかればいいのかわからないなどの声は、お客さまから寄せられました。すべての親が専門の知識を持っているわけではないですし、子どもと性について話すのが恥ずかしいという気持ちは同じ親の立場としてよくわかります。そうした親の戸惑いに対してフォローできるものをつくりたいとは思っていました。
赤松:私も、子育てをするなかで、自分の身を守るための知識や性感染症などのリスクなど、子どもに伝える必要性を感じていたことはすべて盛り込んでいます。また、サンプルができた際に、子どものいるスタッフにモニターとして集まってもらって意見をもらいました。そこでもう一度ブラッシュアップして、カードの枚数を増やしました。「15 性被害のリスクからお子さまを守るために」というカードでは、教えるべき事柄だけではなく、被害に遭ってしまったときの連絡先や子どもへの対応方法などが具体的に書かれています。板谷さんも、カードを使って子どもと対話していますよね。
板谷:妻と分担しつつ、カードを見ながら娘と話しています。赤ちゃんがどうやって生まれるのかを知ったときは、驚いていましたが(笑)。まだピンと来てない部分はたくさんあるようですが、性に関することを恥ずかしがらずに話せる家庭環境になっていると感じています。

赤松:もしも性被害に遭ってしまったとき、思いがけない妊娠をしたとき……正確な情報を、子どもが親にちゃんと伝えられる関係性を日常的に育んでおくことが大事ですよね。一度こころを閉ざしてしまうと、いざというときに助けを求められなくなってしまうと思うんです。
板谷:僕の家庭では、「性とからだとこころを知るカード」を読むようになってから、性教育のことだけではなくて、他の言いにくいことも子どもが打ち明けてくれるようになったと感じています。親に話すと叱られるかもしれないけれどちゃんと相談しよう、という姿勢が身についているようです。

Q6、「性とからだとこころを知るカード」はキッズデザインアワード2024にて「奨励賞(キッズデザイン協議会会長賞)」を受賞されました。おめでとうございます! メディアからの注目度も高いようですが、どのようなところがポイントだと思われますか。
赤松:「家庭でできる性教育」というところでしょうか。昨今、性犯罪に関するニュースが増えるなかで、性教育についてネット検索していて商品が目にとまったという性教育の活動家やメディアの方もおられます。
板谷:社会的にも性教育の重要性が高まるなかで、「性とからだとこころを知るカード」はかわいいグラフィックがほどこされ、カード形式で手軽な感じもあって、教育ツールというよりは、おしゃれな雑貨のような商品であるということも注目していただいているポイントかなと思います。
赤松:キッズデザインアワードにおいては、使い方のアイデアまで盛り込んだ部分や、子どもっぽくないデザイン性を高く評価していただいたようです。今、全国50校の小学校を対象にカードを配布するキャンペーンを実施しています(2025年現在)。実際に子どもに使っていただいて感想をお聞ききしたいですし、忙しくて性教育にまつわる教材を作る時間のない先生たちをサポートするツールとして使えないかなどと考えています。

Q7、「gokigen Lab. はじめての生理に 女の子のお守りボックス」も、イラストがかわいいですね! こちらはどのような商品なのでしょうか?
赤松:箱の中には、これから生理を迎える思春期の女の子たち向けのサニタリーショーツやハンカチポーチなどの商品が入っています。商品は女の子向けだけれど、「gokigen Lab. はじめての生理に 女の子のお守りボックス」は、購入される保護者の目線で作ったんです。「あなたが初潮を迎える準備を、あらかじめしておいたよ」という、親から子への気持ちを贈るものにしたいと考え、大切な“ギフト”であることが伝わるパッケージにしました。デザインのポイントとして、中のボックスの側面にもメッセージがほどこされています。そして、もうひとつのポイントは、宋先生に監修していていただいたリーフレットです。思春期を迎えたからだやこころに、どんなことが起こるのかが書かれています。このボックスも、やはり親と子の会話を大事にしてほしいという思いを込めて企画しました。

Q8、私たちが抱える日常的な悩みを、親身になって受け止めてくれるような商品が豊富ですよね。大人向けの商品についても教えてください。
赤松:お客さまの悩みに寄り添うことができるのは、それぞれの分野のプロが監修してくださっていることが大きいと思います。大人向けといえば、宋先生と開発した「綿混素材がうれしい 骨盤底筋サポート吸水ショーツ」は、更年期に悩みがちな尿漏れをサポートする商品です。尿漏れを防ぐには、骨盤底筋を鍛える必要があります。世間には、骨盤をサポートするベルトはたくさんあるのですが、トイレのときに巻き直すのがめんどうだったり、細くてずり上がってきてしまったりするようなんです。
板谷:また、宋先生いわく、骨盤底筋がからだのどこにあるのかは実はとてもわかりづらいので、素人が自分で鍛えるのはむずかしいそうなんです。そこで、ショーツでありながら気軽に骨盤の緩みをサポートしてくれるものを作りたかったんです。伸縮性と弾力性にすぐれたパワーネットで引き締める構造に。肌にあたる面には綿素材を使ってやさしく仕上げています。

赤松:「温育しよう!ウール&綿混素材のホールガーメント(R)腹巻パンツ」などの、からだをあたたかく守ってくれる“温活”アイテムは、石原新菜先生が監修してくださっています。医師が監修してくださることで、ふだんの生活をサポートしつつ正しい知識をお伝えすることができるのも「gokigen Lab.」の強みです。

Q9、これから作ってみたい商品はありますか?
板谷:男性向けのアイテムに注目しています。例えば、男性の更年期に対応した商品。女性の更年期は認知度が高く、情報もたくさんあると感じています。しかし、男性の更年期に関しては、男性があまり悩みを話さないという傾向もあるためか、悩みが共有されず、どのような症状があるのかがわかりづらかったりするんですよね。実際には、イライラしたり、尿のきれがわるくなったりすると聞くので、そういうお悩みをサポートできるアイテムの開発は手がけてみたいです。
Q10、「gokigen Lab.」の今後の展望を教えてください!
赤松:「性とからだとこころを知るカード」が、当たり前に家にある状況にしたいです。私が商品を作るときにいつも気にしていることは、本当に必要としている人たちのお手元に商品が届いているのだろうか、ということです。生理用品を入手しづらい環境にいたり、日常的に身の危険にさらされていたり……そういった環境にいる子たちにこそ商品が届くようにアプローチをしていきたいですね。小学校への配布企画には、そういう意図もあります。今後は、保育園や10代の方たちが集まる場所などでも「gokigen Lab.」の商品を知ってもらえたらいいなと思っています。
板谷:どのように事業性を高めていくのかは常に考えています。ターゲット層は思春期から更年期と幅広く、「gokigen Lab.」に寄せられるお悩みも人の数だけあり、決してひとくくりにはできません。また、医療的な知識が必要なので商品開発には時間をかけています。商品や情報量を増やして、より多くの方のお悩みに寄り添うために、他の事業部と連携するなどの動きを加速していきたいですね。
赤松:「からだのことをもっと話そう」という合言葉から始まったプロジェクトですし、お客さまとコミュニケーションできる場も増やしていきたくて。商品を使ってくださったり、インスタをフォローしてくださったり、ご意見をくださったりする方たちのことを、親しみを込めて「ゴキゲンメイト」と呼んでいるんです。


板谷:インスタでは商品づくりの際にアンケートにご協力いただいて参考にさせていただくこともあります。みなさまとお話しする機会を増やすためにも、インスタをフォローしていただけたらうれしいです!
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