こんにちは、フェリシモ環境コミュニケーション事務局のFukuです。
「el:ment(エル:メント)」は、「『素(もと)』を大事に、『心地よい』がいちばん。」をコンセプトに、職人さんの息吹を感じられるもの、環境に配慮したものなど、日々のファッションや暮らしを美しく心地よくしてくれるアイテムを提供するブランドです。
特に大事にしているのが、素材が生まれた背景や職人技術の歴史、デザインへのこだわりなど、商品が生まれるまでのストーリーです。手に取る人が新しい価値と出会う機会になればとの思いを込めて、素材選びのポイントや技術に関する知識がすべての商品に添えられています。また、洋服や靴、寝具やインテリアグッズなどすべてのアイテムは、育っていく風合いを楽しめる素材選びにとことんこだわっています。
プランナーの蜂谷華穂さんに、「エル:メント」のものづくりへの姿勢について伺いました。
話し手:蜂谷華穂さん
聞き手:環境コミュニケーション事務局
Q1、「エル:メント」とはどんなブランドですか?
「エル:メント」は、その人らしい生き方を大事にしてもらいたいという思いから誕生したブランドです。昨今は、トレンドやブランドにとらわれず、自分に必要な情報を取捨選択しながら自分なりの価値観を構築している方が多く、一定のジャンルに縛られない多様な価値観が存在する時代だと思います。そういった方たちが、新たな価値に出会い、自分のこだわりを体現できて、身につけたときの所作が美しくなるようなアイテムを展開しています。日々の暮らしや着こなしになじむ感覚を大切に、身も心も心地よくいられるものを提供することで、お客さまの琴線に触れるものをひとつでも見つけていただければと思っています。
Q2、自分をつくる「素(もと)」とは、暮らし、ファッション、仕事、さまざまな領域に広がります。多様なジャンルがあるなかで、どんなところから着想を得て商品企画されているのでしょうか?
私たちプランナーが日常生活のなかで体験した小さな悩みごとや違和感から着想を得て企画をすることが多いです。そこに “環境”“伝統技術”など小さなテーマをかけあわせて、新しい価値を構築していきます。シーズンやトレンドにとらわれずに、商品の裏側にあるストーリーやこれまでに出会ったことのない価値の提供を目指しているので、「これだ」と思った素材があれば、あえて販売時期を決めずに商品を作り始めることもあります。また、なるべく長く使って愛着がわいてくるものにしていただきたいという思いがあります。環境のことを考えると、極端に言えば、なにもつくらないのが一番ということになってしまいます。けれど、お買い物という行為そのものも、買ったものと付き合っていくことも、暮らしを豊かにするために必要なことだと思うんです。だから、どうせ買うのならば美しいものを手に取ってほしいですし、使っているうちに味わいが出て愛着のわくものがいいと、素材は本革や帆布など、経年により風合いが育っていくものや、捨てずに継承していきたいと思える伝統織物などをセレクトしています。
Q3、これまで企画されてきたなかで、印象に残っている商品はありますか?
最近では、「京都の織屋さんで仕立てた 優雅なシルク糸遣いの京織(R)じゃばらがま口財布」でしょうか。西陣織の伝統的な技術を使って職人さんとともに作った商品です。作ってくださった京都にある「立野屋」さんは、西陣織の技術を使って「いまの日常に溶け込む織物を」をコンセプトに掲げて、伝統文化を受け継ぎながらも自由で新しい発想の商品づくりにチャレンジされている織物屋さんです。そのコンセプトに「エル:メント」としては共感し、一緒にものづくりをしたいと思いました。なによりも凛として美しい素材に一目惚れしたんです。
そこで、「立野屋」さんが大事にされているコンセプトに沿って日常的に使える財布を企画しました。「立野屋」さんの工場には伝統的な織柄が膨大にアーカイブしてあって、その中から、迷いに迷って、2種をピックアップし、頭のなかで仕上がりをイメージしながら「エル:メント」オリジナルの配色に仕上げていただきました。金箔の光沢感や、糸の織り方によって色の見え方や印象がずいぶん変わるため、糸の組み合わせを変えながら何度も試作を作っていただきました。今まで2タイプを発売し、お客さまにもご好評いただいており、8月にも新作の長財布が完成しました。唯一無二のデザインもさることながら、伝統の息づかいを感じられる色使いや仕立てに共感いただけたのではないかと思います。
Q4、「エル:メント」のカタログでは、商品ストーリーがていねいに語られていますね。商品が作られる背景を大事にされているんだなと伝わってきます。
私たちは、商品の裏側にあるストーリーもアイテムとセットとして考えており、技術に関する知識、その柄に至った理由、素材選びのポイントなどを、誌面上で可能な限りお伝えしています。商品に込められた作り手の思いや製作背景を読んで知っていただくことも、新たな価値の提供だと思うんです。私たちも素材や技術に納得して理解した上で、お客さまにリアルな情報をお伝えしたいので、工場にはなるべく足を運ぶようにしています。それに、「エル:メント」として伝えたいことやその商品を通してお客さまに発信したいメッセージを、職人さんに真っ直ぐに伝えたいという思いもあるんです。そうして工場に伺って見聞きしたことからインスピレーションを得て、商品が生まれることもあるんですよ。やはり現場で素材を目にすると、改めてその美しさや手触りのよさなんかを再発見するんですよね。
Q5、プランナーチームの素材選びと職人さんの技術がかけあわさることで、商品が作られているのですね。やはり、職人さんとの綿密なコミュニケーションがあってこそなのでしょうか?
職人さんは経験が豊富なので、商品企画によっては「できない」とおっしゃられることもあります。けれど、素人目線だからこそ提案できることもあると思っていて、それを職人さんの技術で実現させていくことで新たな価値が生まれていきます。工場に足を運んで熱意が伝わることで職人さんとの関係も育まれ、ともに新しいことにチャレンジしてくださるようになったりして。たとえば、「神戸・長田の職人仕立て 内側ふわりメッシュ 足あたりやわらかグルカサンダル」には内側にクッションの入ったメッシュ生地が入っています。
実は職人さんもこれまでに挑戦したことのない素材の組み合わせだったようで、試行錯誤を重ねて完成したんです。グルカは、足に触れる部分が多くて、痛みや靴擦れを起こしやすい構造になっています。「エル:メント」では足あたりのいいサンダルを作れないかと模索した結果、今の形状に落ち着いたんです。もともと、サンダルってカジュアルな見た目とはうらはらに素足で履くので靴擦れしやすく、履くのにちょっと気が重かったりしますよね。もっと軽やかで、玄関で躊躇なく選んでいただけるサンダルを作りたいという思いを職人さんが実現してくださったのです。
Q6、イラストレーターさんとのコラボレーションも手がけられておられます。どのようなご縁からスタートするのでしょうか?
作家さんとのコラボレーションシリーズでは、「リブラブコットンプロジェクト」のコットンを使ったオーガニックコットンTシャツなどを販売しています。作家さんと商品を作る際には、その方の作品が素敵であることはもちろんですが、作品へのこだわりや、ライフスタイルにおいて大事にされていることなど、作家さんのひととなりを知ったうえでお声がけしています。また、「エル:メント」のコンセプトや「リブラブコットンプロジェクト」の趣旨に賛同していただけるかどうかが肝だと思っています。たとえば、山本祐布子さんは千葉県で「mitosaya薬草園蒸留所」を運営され、自然や食が循環する理想的な暮らしをされていて、環境への意識も高くお持ちで、おしゃれでイラストも繊細でとっても素敵。自分なりの価値観を持っておられるところに憧れたり、共感できるかどうかも、「エル:メント」が大事にしたいポイントなんです。
Q7、眠っている素材から作られた商品もたくさんありますね。そういった素材とはどのように出会うのでしょうか?
素材はプランナーが日常生活のなかで出会った良質なものもあれば、メーカーさんからご紹介いただくことも多いですね。「工房に眠っていたアコヤバロック真珠の22金メッキピアスの会」は、形が真ん丸ではなくいびつなために使い道のなかったアコヤバロック真珠を活用してできた商品です。ただ眠っている素材を再利用するということではなく、一つひとつ異なる形状を個性として身につけておきたいとか、こだわりをお持ちのお客さまが日常づかいしやすいさりげないデザインであるかどうかを常に意識して商品を企画しています。
また、残った播州織を活用したいとご相談いただき完成したのが「生地屋さんに眠っている播州織で作る すぽっとかぶるエプロンベストの会」です。播州織は兵庫県で200年以上続く織物で、肌触りがとてもいいんです。余った生地で商品を作るので、必ずご希望の色柄をお届けできるものでありません。ですから、いろいろな色柄が届くことを楽しんでいただけて、日常のあらゆるシーンで活躍するものがいいと考え、台所仕事や園芸などに使えて、おしゃれのアクセントにもなるエプロンベストにしました。無理なくお買い物を続けたくなる商品づくりを意識しています。
Q8、カテゴリーが幅広くて、目移りしちゃいます!
なにかひとつでもお客さまの琴線に触れるものとなるようにと心がけていているので、なるべくジャンルは散りばめて、“スタンダードな見た目だけれど、世の中にない”絶妙なラインを目指しています。たとえば、シーズンごとにご好評いただいている「付けタートル」シリーズは、いつものコーディネイトにプラスすることで、見慣れた洋服の印象をがらっと変えてくれたり、冷えを防いでくれたりします。そうやって新鮮な気持ちになることで、その洋服をまた大事に長く着ていただけるでのはないかと思いから生まれた商品です。こうやって、「エル:メント」の商品を季節やニーズにあわせてお客さまの生活に一つでも取り入れていただけたらとってもうれしいです。
Q9、それぞれの商品から、プランナーである蜂谷さんの等身大の思い入れを感じます。企画やデザインをする上での蜂谷さんのこだわりを教えてください。
私じゃない誰かが買うものとして商品を企画すると、どこかに嘘が生じてしまう気がして。だから、プランナーが自信を持っておすすめできるものしか生み出しません。一方で、客観的な視点は大事ですから、プランナーの偏った洋服の趣味などはなるべく入れないようにして、どんな洋服の人でも身につけてなじむ、心地よいアイテムになるよう心がけています。例えば、植物のモチーフは私も生活に取り入れたいという憧れの思いもありますし、どんな暮らしにもなじむ気持ちのいいものです。デザインに取り入れるときは、花言葉にこだわってみたり、古い植物画集を眺めてみたり、モチーフにも思いを込めてセレクトしています。そして、なるべく素材のよさを活かして身につけたときに美しくリアルに使いやすいものをご提供したいので、機能は過剰になりすぎないように心がけています。
Q10、今後の展望をお聞かせください!
お客さまがまだ触れたことのない、伝統技術やデザインに触れられる機会をもっともっとつくっていきたいので、眠っている素材や、京織(R)のような技術の発掘も積極的に行っていきたいと思っています。また、現在コラボレーションさせていただいているクリエーターさんや、その技術力をもって私たちの思いをかたちにしてくれる職人さんたちのように、「エル:メント」のコンセプトに共感していただける企業さまや工房さまとの関係性をさらにたくさん育んでいきたいです。そして今考えているのは、お客さまが直接手に取って商品を見ていただける機会を増やすこと。素材のよさやアイテムの楽しみ方は、触れることでより伝わると思うので、ストーリーとともに「エル:メント」のアイテムにリアルに接していただける場をつくっていきたいですね。
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