こんにちは、フェリシモ基金事務局のmotoです。
みなさんは、フェリシモの「おてらぶ」の活動をご存知ですか?
「お寺文化から心豊かな暮らしのヒントを探す」をコンセプトに、オリジナル商品のデザインをはじめ、全国にあるお寺グッズや御朱印帳の企画なども手がけている部活動なんです。
また、「おてらぶ」では「おてらおやつクラブ」を応援する基金活動にも取り組んでいます。「おてらおやつクラブ」は、お寺へお供えされるさまざまな「おそなえ」をおさがりとしてお預かりし、経済的に困難な状況にあるご家庭におすそわけする活動に取り組むNPO法人です。
「おてらぶ」部長である内村彰さんの、お寺文化への共感が商品づくりやプロジェクト、やがて基金につながっていくストーリーと思いについてお聞きしました。
*基金の詳細はこちら
話し手:内村彰さん
聞き手:環境コミュニケーション事務局
お寺で心を整える実体験が活動の原点に
お寺というと、宗教的なイメージがあるかもしれませんが、コンビニの数よりもお寺の数の方が多いと言われるくらい、昔の人々にとっては身近なものだったんです。子どもの遊び場であったり、学び場であったり、悩みごとを相談する場であったり、お寺を中心とした生活文化が根付いていたんですよね。私は以前から仏像に興味があったのですが、フェリシモに入社してからはお寺文化全般に惹かれ、「おてらぶ」を立ち上げるまでになりました。
「おてらぶ」を立ち上げたきっかけは、実際に私が仕事で悩み、苦しんだときに仏教にふれるきっかけがあったからなんです。というのも、自ら希望して商品企画担当になれたものの、鳴かず飛ばずな日々が続いて落ち込んでいた時期に、もうどうしようもなくなってネットで「心 リセット」とキーワードで検索して出てきたのが、奈良の當麻寺で行われていた写仏の会(*注1)でした。いてもたってもおられずお寺に伺ったのですが、その日はとても寒い日で手が震えてまともに描けないような状況だったにもかかわらず、描き切った時には気持ちがすっごくすっきりしていたんですね。それで、「こういう心の整え方があるのか!」と気づきました。心にもやもやを抱えている人たちはきっと他にもいて、写仏をすることで私みたいに気持ちを変化させることができるかもしれないという想いから、写仏を気軽に体験できる商品「プチ写仏プログラム」を企画したんです。
*注1:仏様を書き写す修行のこと
商品企画をきっかけにお坊さんとのご縁が深まった
おかげさまで商品はたくさんの方に興味を持っていただくことができて、私自身ももやもやから脱することができました。当時「プチ写仏プログラム」を商品化するためにお坊さんにご意見をお伺いしたくて、いろんな宗派のお坊さんとお話をさせてもらいました。誰一人としておしつけの布教のようなお話をするようなことは言わず、私の悩みに寄り添ってくれて、まるでカウンセリングを受けているみたいでした。「つらい時はつらいって言ってもいい」とあるがままの状態を受け入れてくれたり、「瞑想をしてみましょう」と少しずつ、仏教の教えの中で伝えられてきた智慧に触れる提案をしていただきました。
私たちの気持ちというものは、日々変化していきます。そこには喜びも戸惑いも悲しみもいろんな感情があります。そういった気持ちの変化に寄り添ってくれる商品やコンテンツをもっとつくってみたいと思って、「おてらぶ」を発足したんです。ちなみにその頃出会ったお坊さんたちが、他の宗派のお坊さんやデザイナーさんや仏師さんまで、数珠繋ぎに紹介してくださって。今でも一緒にイベント企画などを手がけたりして、交流を深めています。
お寺の困りごとをともに解決したい
「おてらぶ」としては、仏像のような姿になれる螺髪(らほつ)ニットキャップや観音の装飾品をモチーフにしたアクセサリーなど、仏教文化をコンセプチュアルに表現した商品を企画し、お客さまからも好評です。また、仏教展で販売するためのミュージアムグッズの企画をすることもありますし、お坊さんから直接ご相談いただいてお寺の御朱印帳のデザインリニューアルしを手がけたり、お寺により多くの方に来ていただくために、旅とお寺めぐりをセットにした新たな巡礼路マップをつくったりしたこともあります。そうやってお寺やお坊さんとご縁ができるなかで、お寺のお困りごとをともに解決したいという思いが募ってきたことと、「おてらおやつクラブ」の活動への共感があわさって、寄付付きの商品も企画するようになりました。
「おてらおやつクラブ」の循環する仕組みを伝えたい
「おてらおやつクラブ」の松島靖朗さんとの出会いは、「写仏キット」の企画をするためにお寺を巡っていた頃にまでさかのぼります。松島さんはお寺に生まれ育った方でしたが、すぐお寺を継いだわけではなく、はじめはIT関係の企業にお勤めだったそうです。会社勤めを経てお寺に戻られたのだそうですが、ある日、大阪で母子が餓死する事件をテレビのニュースで知ったそうです。「最後にお腹いっぱい食べさせてあげられなくてごめんね」というお母さんの手紙が残っていたという報道を見て、お寺で何かできることがないのかと考え続けたそうです。そこで、「お寺に山ほどあるお供ものをシェアできないか」というひらめきからはじまったのが「おてらおやつクラブ」とお聞きしています。
私が「プチ写仏プログラム」の相談をしにお寺へ伺った際に、「おてらおやつクラブ」のお話をお聞きしたのですが、その後、松島さんは「おてらおやつクラブ」の活動を続け、賛同いただける仲間やパートナー企業を増やし、2018年に「おてらおやつクラブ」という仕組みでグッドデザイン賞を受賞されました。お寺にある「おそなえ」をないところに「おさがり」として「おすそわけ」するという、お寺文化ならではのご縁を循環させる仕組みは、私たち企業としてはなかなか真似できない仕組みですが、なんらかのかたちで応援できないかとずっと考えていたんです。それで、「この素晴らしい取り組みを大声でみんなに伝えたい!」との思いから、メリーポイントでの支援をスタートしたんです。
基金で「おすそわけ」をご家庭に送る支援を
「おてらおやつクラブ」の活動は、各地にあるお坊さんたちが取り組んでおられ、それぞれのお寺でお供えものを段ボールに詰めて発送します。2021年現在、およそ1,000の寺院が協力しあって、登録している21,000人子どもたちと562の団体へ支援を行っています。支援先は主に二通りあって、ひとつは全国にある子どもの貧困問題を支援している団体への発送。そしてもうひとつが、個人のご自宅にお供えものをお送りする直接支援です。しかし、発送作業はお坊さんやボランティの方たちが手作業で行っており、常に人手が必要です。そこで、フェリシモの「おてらおやつクラブ」基金はこの直接支援に特化して使っていただいています。
これからも心に寄り添う関係づくりを
私が松島さんにお聞きしたエピソードで心に残っている話があります。各ご家庭へお供えものをお送りすると、子どもからお手紙をいただくこともあるそうです。はじめはよそよそしくお礼が書かれていたものが、「今度は和菓子ではなくてポテトチップスが欲しい!」と、リクエストが送られてくるようになることがったのだそうです。松島さんたちはその時、「やっと心が通じた。我慢の生活のなかで、子どもがやっと本音を言ってくれた!」とうれしくなったのだそうです。まさに人々の生活に寄り添う活動なんですよね。
「おてらぶ」の商品も、お客さまからたくさんの声をいただきます。12ヶ月レッスンの「写仏キット」を販売しはじめた頃、「入院中の母が10回分の写仏を終えて亡くなりました。残りの2回分は私が引き継がせてもらいます」というお声をいただきました。そういう悩みや人に言いづらいなにかを抱えておられる方たちがいることを改めて実感し、いっそうお客さまに役立つ商品を企画せねばと身の引き締まる思いでした。そういう経験をヒントに、現在はお寺文化をよりお客さまの生活に根付かせたいと思い、商品とともに仏教の教えをわかりやすくご紹介するメッセーも添えるようになりました。これからも商品や基金を通して、人はいろんな状態や考え方があっていいんだということをお伝えし、お客さまの心に寄り添っていけたらと思っています。
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