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2012年度基金活動報告ー世界遺産を保護する活動への支援(公益社団法人 日本ユネスコ協会連盟)

「スマイル・アース基金」から2012年度に基金を拠出した「公益社団法人 日本ユネスコ協会連盟」さまより活動レポートが届きましたので下記にてご紹介します。

■アンコール遺跡を守りたい

カンボジアのアンコール遺跡群は、内戦による破壊や技術者不足、貧困など国内だけでは解決できない多くの問題を抱え、国際的な協力を必要としています。

そこで日本ユネスコ協会連盟では2012年から、アンコール遺跡群の1つ、バイヨン寺院においてシンハ(獅子)像とナーガ(蛇)像の修復プロジェクトを始めました。スマイル・アース基金を利用させていただき、持続的に遺跡の修復をカンボジアの人たちの手で担っていけるように、修復に携わるスタッフを雇用し、人材育成もしています。

バイヨン寺院はアンコール・トム(アンコール遺跡の1つで、アンコール・ワット寺院の北に位置する城砦都市遺跡)の中心寺院で、尊顔が4面に彫られた塔が林立する姿が特徴的です。シンハ像とナーガ像はその外側の回廊に設置されていますが、崩落や破損が進み、近年の観光客の急激な増加も一因となり、このまま放っておくと後世に伝えることができません。

シンハは古来より王権を象徴する動物として、歴代の王にかかわる寺院の入口やテラスなどに設置されています。ナーガはヒンドゥー圏のアジアで時代を通じて礼拝され、繁栄と豊穣をもたらし、病を癒やし、望みをかなえると信じられており、どちらもバイヨン寺院を守護する重要な役割をもちます。

修復作業はまず、現状を図面や写真で記録し、汚れなどをきれいに落として劣化状況を把握します。その後、必要に応じて過去の不適切な修復部分を除きながら解体し、石材の接合や補強、欠かけた部分を補い、仮組み作業の後、必要に応じて新材による補てんを行いながら石材を再設置していきます。

バイヨン寺院のシンハ像、ナーガ像は過去にフランスによる修復が行われたものの、すでに半世紀以上を経て、再び破損したり、遺跡の周囲に散乱しているものも多くみられます。こうした石材をあつめ、どこの位置に戻るのか実際に合わせてみながら慎重に確認していく作業は、立体のジグソーパズルのようなもので、非常に神経を使う気の遠くなる作業です。

修復はいま、7人のカンボジア人によって進められています。そのうち3人はアンコール遺跡近郊の、寺子屋のあるリエンダイ村の若者たち。遺跡をカンボジアの人々の手で守っていくために学んでいます。
この3人はこれまで遺跡周辺に散乱している石に、何も感じていませんでした。けれどトレーニングを受け、技術を身につけることで、石の大切さや奥深さ、性質の相違などがわかるようになったと言います。

村の人々も3人の仕事に興味津々で、いろいろ質問されるそうです。厳しい暑さの中での作業は大変ですが、自分の手で磨き、削り、くっつけて、歴史あるものが元の形に戻っていくことの素晴らしさを、家族や友人に自慢しているそうです。「村の人々にも遺跡を守る大切さを伝えたい」とも話しています。

今後も私たちは、遺跡の修復をカンボジアの人たちの手で担っていけるよう、リエンダイ村の寺子屋で村人たちにワークショップなども開いて、修復プロジェクトを続けていきたいと考えています。

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※現地パートナー:アンコール遺跡の保全と周辺地域の持続的発展のための人材養成機構
(JST / カンボジアのローカルNGO)

技術協力:日本政府アンコール遺跡救済チーム(JASA)

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