1966年、音楽グループのザ・ビートルズが”Tomorrow Never Knows”をリリースした。チベット思想に基づく意味深なリリックと、逆再生やタンブーラを用いたサイケデリック・サウンドは当時、「明日どうなるかわからない」時代を生きるためのインスピレーションを、多くの人々に与えた。
あれから50年が経った。世界はもはや「今日どうなるかわからない」状態にある。このような21世紀の時代状況は、20世紀の”Tomorrow Never Knows”に対して、”Today Never Knows”と言い換えることができるだろう。では、この”Today Never Knows”という現代における問いと応えは、いったいどのようなものだろうか。
今回が神戸初上陸のYAPは、2012年に結成されたアートグループだ。30人を超えるアーティストたちが、大阪、京都、上海、東京、福島、ブダペスト、ベルリン、香港、マンチェスター、ニューヨーク、ローマ、ロンドンなどで活動してきた。もしかすると、これから神戸別品博覧会で待ち構えているアート体験は、いくらか謎に満ちたものになるだろう。そのせいで、あなたを少しだけ惑わせるかもしれない。なぜならそれは、”Today Never Knows”を生きるためのフィジカル・トレーニングであり、目の前の現実を問い直し、再構成するためのラディカル・プラクティスであるからだ。しかし、例えば再び会場を訪れた時、以前と違う何かを見つけたら、それはあなたがすでに”Today Never Knows”という世界で新しい体を使いはじめた証だ。インスピレーションはその先で待っている。
アーティスト名 / 作品タイトル / 作品テーマ
Wlfrid Dee / untitled / Slogan
スローガンは、強いメッセージを簡潔に示す政治的な行為だ。解読不能な文字で段幕に書かれているウルフリッド・ディーのスローガンは、何を意味しているのだろうか。
Lynzie Jefferson / Night Light / Public
パブリックはプライベートは異なる。公共性に潜むもう一つの空間を仄めかすリンジー・ジェファーソンの作品は、誰のためのものなのだろうか。
Jian Jin / Slippers / Mistake
間違いはその場を一時停止させる。単純な間違いを取り上げるジャン・ジンは、正しさの正当性を崩そうとしているのだろうか。
Eddy Kleberg / a vision in the dark / Vision
視覚は世界の形を捉える。見ることを問い直すエディー・クレバーグの作品は、世界の形を変えようとしているのだろうか。
Yoji Kondo / PARASOL / Media
メディアのほとんどは目で見ることができない。不可視のフィルターに注目するヨージ・コンドーの作品は、どのような物語を伝えているのだろうか。
LR / Vertical Wind / Sound
生物は右耳と左耳で世界の音を聴き、空間を把握する。右と左から聴こえてくるLRのサウンドは、どのような空間の音なのだろうか。
INVISIBLE MUSEUMS / Museum
ミュージアムは物質を保存する。その実態があるのかないのかわからないインビジブル・ミュージアムズは、何を保存しているのだろうか。
Celina Pudlik / Missing Bird George / Extinction
行方不明のポスターは街角で貼られている。絶滅種を世界中で探すセリナ・パドリクは、存在の意味について問うているのだろうか。
Roussel Yeboah / Teleportation / Trace
痕跡は過去へのタイムマシーンだ。ルーセル・イェボアが関心を寄せる痕跡は、いつ、誰の、どこに戻るのだろうか。
本展“TODAY NEVER KNOWS” では、以上9名のアーティストによる作品と、YAPの合同作品が展示されている。”THE GAMES”と題されたその合同作品は、サッカー、野球、テニス、セパタクローなどの球技で使われるボールが台の上に乗っている立体作品だ。ルールや歴史などが違う様々なゲームがひとつのコートに集約されたその状態は、さながら世界そのもののようにもみえる。この世界は、多様なゲームが複雑に入り乱れながら回っている。”THE GAMES”は、「今日どうなるかわからない」TODAY NEVER KNOWSな現代を表現しているではないだろうか。ボールはどこに転がっていくのだろう。今日はどうなっていくのだろう。
supported by
special thanks
“TODAY NEVER KNOWS”展
開催期間/2017年2/4(土)~3/5(日)
開催場所/『神戸別品博覧会』会場2階
神戸市中央区三宮町2丁目11-3
営業時間/AM11:00~PM8:00(最終入場19:30)
アクセス :JR「元町駅」東改札口から徒歩約5分。
http://beppin-expo.com/