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【イベントレポート】鳥瞰図絵師・青山大介さんの解説で「神戸の魅力を発見する街歩きツアー」を開催

フェリシモ「青森部」は、青森県の人と会う・触れ合う、そしてその人が行っているモノコトを知る体験型ツアーを得意とする「また旅くらぶ」と一緒に企画した日帰りツアー、『「神戸ポートタワー」から、鳥瞰図絵師 青山大介さん解説でポートタワーから神戸の街を観察&神戸の朝街歩きツアー』を2月24日(月・祝)に催行しました。

神戸は観光やイベントや買い物で訪れる人が多い街です。観光客など土地勘のない人が訪れることも想定し、市内に「津波避難情報板」が設置されているのを知っていますか?

※参照:神戸市「津波避難情報板」紹介ウェブページ 

神戸市は「安全をおもてなしのひとつ」と位置づけ、安全で迅速な津波避難行動につながる情報提供を目的に「津波避難情報板」を設置するとともに、「まち歩きやワークショップ」なども行っています。

「津波避難情報板」の地図は普段よく見る地図とは違います。鳥観図という上空から斜めに見下ろしたように描かれた、鳥が眺めているように見える図法で、神戸市生まれの鳥瞰図絵師・青山大介さんが描いた神戸の街の鳥瞰図が掲げられています。

その鳥瞰図絵師・青山大介さんの解説で街歩きをするツアーイベントで、神戸らしさを存分に感じられる特選体験プログラムが2月24日に実施されました。

ツアー当日のコースを同じようにたどれば、神戸の街の魅力を再発見し、また震災にも目を向けられるイベントとしての想いも込め実施しました。

このツアーは、FDA(フジドリームエアラインズ)で空路約100分で結ばれている青森県出発の「神戸・淡路島の人と触れ合う3日間」の1日に神戸の人も合流し一緒に街歩きを楽しむツアー」の工程の一部でもあり、青森の人と神戸の人が合流し一緒に街歩きをして交流することも目的のひとつとしています。ツアー詳細と参加申し込みは、一般財団法人神戸観光局が運営する、着地型観光プログラムのプラットフォーム『神戸のとびら』で参加者を募集していました。 

神戸の街の様々な場面を鳥瞰図に描き、展示し・媒体へ掲載をしている鳥瞰図絵師 青山大介さんと一緒に街を直接案内解説してもらえるという魅力的で貴重な機会のツアーです。短期間募集で、参加定員20名のところほぼ満席参加の注目ツアーが連休最終日の早朝にスタートしました。

集合場所はJR元町駅です。

寒気が入ってかなり冷え込んだ朝、鳥瞰図絵師 青山大介さんによる街歩きの出発です。どんなツアーになるのか!?期待アツではじまりました。

元町駅を出て南へ歩き始めます。この街歩きでは、ネックストラップ付のトラベルイヤホンガイドを着用し、目に入るものを次々と青山さんが解説してくださるのを聞きながら街を歩きます。

早速、神戸繁華街の中心「神戸三宮センター街」が目に入ります。神戸の人にはなじみの繁華街で、青森の人は初めて見る神戸のお買い物スポットです。

神戸三宮センター街の先には旧居留地地区の「神戸大丸店」です。ファッションの街神戸のおしゃれスポットです。外国人居留地にはさまざまなブランド・ショップがあり、ウインドウショッピングに「歩くだけでも楽しい地区です。」と青山さんから紹介がありました。

「神戸大丸店」の向かいの「神戸元町商店街」入口を通過します。

この向かいには、青山さんの鳥瞰図が設置されています。

一般的な街の地図とは違うことがわかります。

すぐ南の日本三大中華街の「南京町」を歩きます。横浜に次ぐ2番目の規模です。東西約270m、南北約110mの範囲に多彩な店舗が軒を連ねる、神戸を代表する観光スポットです。

1867年(明治元年神戸港)の開港時から起こった南京町ですが、当時清国が日本との修好通商条約締結ができていなかったため、外国人居留地地区に住むことができず、その近くに住み始め「南京町」が形成されていったと青山さんから解説がありました。

早朝の街歩きならではで、「南京町広場」も人がいない特別感のある空気に包まれていました。時間を少し変えることで街の見え方が変わり、にぎやかな街とは一味違ったゆったりと佇まいを味わえるのも新鮮です。

「南京町」を抜け、神戸元町商店街のアーケードを通り西へ歩きます。約1.2kmのアーケードの商店街には約300のお店があること、もとは西国街道だったのでゆるやかに曲がっていること。そして、区画ごとに「スズラン灯」のデザインの違いも街歩きの見どころであることなど、青山さんの解説を聞きながら歩きます。

東西に延びる西国街道、大丸近く三宮神社辺りで明治に神戸事件詳細)があった史実も青山さんから解説がありました。

神戸元町商店街を抜けて南下し「神戸ポートタワー」を目指します。国道2号線、阪神高速の高架をくぐる歩道橋を渡ります。この辺りはもともとの海岸線に当たること、また神戸ハーバーランドまで船の荷物を荷揚げし運ぶ鉄道の線路が以前通ってたことなど、青山さんの解説を聞きながら歩みを進めます。

青山さんいわく、カッコいい「神戸ポートタワー」が見えてきました。その「カッコイイ姿からか後にできた広州タワーも神戸ポートタワーと同様の鼓状の双曲面構造をしていますよ」といったトリビアの紹介もありました。

神戸ポートタワーに向かうために、「中突堤中央ビル」の階段を下ります。このビルは、昔は両側が海でした。船の発着で旅客が乗り込む船旅の要所であったこと、まわりが埋め立てられ今の様相になっていることなどが解説されました。客船のチケット売り場や旅客用の食堂があったことなどの解説もありました。

しばらく歩くと、もとは神戸ポートタワーとつながっていた中突堤中央ビルの南館跡地が整備されて登場した、神戸市最低峰1米「KOBEKO山(コウベコヤマ)※神戸で一番の小さい山であるという意を込めたネーミング」がある広場に着きました。その解説を聞いて、登頂記念の写真を撮って楽しむ人もいました。

いよいよ、今回の街歩きツアーの目玉、このツアーで特別に貸し切った「神戸ポートタワー」から、青山さん解説付きで神戸の街の眺望を楽しみます。

まず「神戸ポートタワー」を下から眺めます。青山さんからは、タワーを構成するパイプは曲がっておらずまっすぐで、鼓型に組み上げることで反り返ったように見えるこのデザインを成していること。60年前には現在ほどコンピューターが発達していませんから、CGシュミレーションなどができませんので、当時考えられる最高の技術でデザインや設計がされ、実際には作ってみて計算通りに組み上げていけるのか!? 現場で確認や調整・修正を行いながら造っていったのではないかと、リニューアルオープンをして現在まで60年以上の年月を迎えてなお赫(かがや)き、50有余年に及ぶ、リニューアルオープン前から震災を経ても揺らぐことなく堅牢に立ち続ける神戸ポートタワーを建設した当時の人たちの凄さを想い、称える解説がありました。

「神戸ポートタワー」へ入場し、リニューアルオープン前の最上階であった展望5階へエレベーターで一気に上がります。青山さんからは、竣工当時展望5階は現在のようにガラス張りでなく、フェンス・金網だったとの紹介がありました。

展望5階から、新施設オープンエアの「屋上デッキ」を目指します。リニューアルオープン前は一般には入れなかった場所で、リニューアル工事で新設され登場した施設です。地上約100mの展望回廊・オープンエアデッキ「Brilliance Tiara[ブリリアンスティアラ]」からの眺望を楽しみながら、ぐるりと見渡すことができる神戸の街の解説がありました。

ガラス張りの先に望む神戸のパノラマ眺望も目を奪いますが、その内側、タワー中央の免震施設にも目を向けます。リニューアル工事で新たに設置されたこと、今上がってきたエレベーターは以前は展望4階までだったがリニューアルで延伸したこと、屋上デッキの新設に加えて、耐震性アップのため設置された免震施設が工事の中核であったといった解説がありました。「ガラス張りにしてあるので、カッコイイ免震施設の構造を見ることができます。真ん中に見える黒い部分が免震装置の要の部分で、ゴムと鉄板が交互にミルフィーユされた“積層ゴム”です。タワーが地震で揺れたとき、“積層ゴム”は揺れが遅れます。それによりタワー本体の揺れと相殺されて免震をする仕組みであるとの解説があました。

「リニューアルオープン前は展望4階までしかエレベーターがなかったのですが、展望5階まで延長されたこと。屋上デッキが新設されたこと。以降いつ起こるかもしれない地震に備える耐震性を高めることや、設備増強でタワー上方の重量が増すことにも対策ができるようになったのではないでしょうか」と青山さんから解説がありました。

屋上デッキから北側に見える六甲山について。「“六甲山”というズバリ山のなまえが付いている山はなく、931mに“六甲山最高峰”の碑があると紹介がされました。併せて、山肌に神戸市の市章やイカリのマークが設置してあること、タワーマンションの間に国旗が付いている兵庫県庁が裾野に見えることも紹介されました。

また山頂部は東北地方と同じくらいの気候であり、それにより珍しいブナ林もあることも紹介されました。近年気象が温暖になり、その保全に努力する人たちが活動しているというエピソードも話されました。

六甲山は、東が地盤が競り上がり西側が低い連峰ですが、ちょうど新神戸駅があるあたりに諏訪山断層があります。それゆえ新神戸駅は万一の地震災害に備えて区分けした構造で建設がしてあり、災害復旧のしやすさに配慮して建設されているいう解説もありました。

写真の太陽の下、海側に見えるのは、ポートアイランドで、六甲山西側の山を削って埋め立てた人工島です。阪神・淡路大震災発生以前は、世界6位のコンテナ取り扱いを誇る屈指の貿易港で、ポートアイランドもコンテナヤードが東西にありました。震災で神戸港は大きく損傷を受けたことや、その間にほかの港にコンテナの取り扱いが移行したこと。震災復興で港が再建されましたが、復興の間に移行されたコンテナ取り扱いは戻ってこないケースもあり、現在は取扱量が減ってしまったことなどが解説されました。

完成した当時に1,600万人が来場した博覧会「ポートピア81」があったポートアイランド。80年代の新交通であった「ポートライナー」が三宮中心部と人工島を結んでいます。当時は無人運転される画期的な最新技術の交通手段であったことや、現在は神戸空港に国際便も就航することになり、また島内施設で働く人、住まう人も利用するので乗車が増えて、混雑もあることなど解説がありました。

港に目を向けると、ハーバーランドの先、南側には造船のドックが見えます。当日はちょうど潜水艦が入港していました。写真の観覧車の左側です。川崎重工と三菱重工が交互に潜水艦を製作している。日本ではここだけで潜水艦や潜水艇が建造されていおり、2000・6000・10000メートルまで潜るような深海探査船などもここ神戸だけで作られているという「日本の潜水艦は全てメイドイン神戸です」との解説がありました。

ハーバーランドを眺めて目につく灯台「神戸港旧信号所(旧新港第5突堤信号所)」。「KOBE」と「UW(安全な航海を祈る)」を意味する信号旗が上げられています。「安全な航海を、気をつけて行ってきてね」という意味です。大正10年に作られて現役引退してからこの地に移設されたという話を聞きながら、ランドマークを眺めました。

もうひとつ見えるのは、「望楼」神戸港監視塔です。信号旗は15旗上がっていて、アルファベットになおすと「WELCOME TO MOSAIC」です。

展望フロアから眺望を堪能したら、下階へ下りて神戸ポートタワーのコンテンツを楽しみます。展望4階の光をテーマにした体験型アートが楽しめる「Brilliance Museum[ブリリアンス ミュージアム]」。展望3階の回転する床のカフェ&バー「Ready go round[レディーゴーラウンド]」では、休憩のドリンクタイムをとりました。座っていても30分で1回転する景色を眺め一息つきます。青山さんの鳥瞰図クリアフォルダーと兵庫津ミュージアム3月23日まで青山さんの展覧会が開催中で、そのチケットも参加者へプレゼントされました。

「神戸ポートタワー」から出てメリケンパークへ向かいます。メリケンパークの敷石に目を落とすと、屋上デッキから見えた、開港年が示された「1868」や、150年再整備で描かれた「イカリ」のマークに気づきます。メリケンパークは昔は海だったところで、木造のハシケがたくさんあった港を埋め立ててできた公園です。記念写真撮影で行列ができる観光スポット「BE KOBE」モニュメントもあります。行列に並んで記念撮影もしました。

公園内の「神戸港移民乗船記念碑」も見ます。希望の船出をした主に西日本から海を渡った海外移民船が神戸港からも新天地へ向かったその歴史に、青山さんの解説とともに触れました。

坂本龍馬や勝海舟によってつくられた海軍操練所が神戸にあったことを知り、そこに集った人たちを神戸海援隊と称しその存在を伝えるモニュメントも見ました。

その近く、見過ごしてしまいそうですが、船をつなぐ白いピットに「タイムカプセル」と書かれたものがあります。海底にタイムカプセルが沈められています。2017年に一度開けて再び沈めてあり、次回は2047年に引き上げて開けるそうです。

最後は、震災遺構のある「神戸港震災メモリアルパーク」を目指します。途中、メリケンパークの公衆トイレの前を通ります。青山さんから、神戸市内には震災で傾いたけれど今も使っている施設があり、この建物も少し傾いているけれど再整備して今も使われています。確かに少し傾いています。そんな建物が結構あることが紹介されました。

街歩きの最終目的地「神戸港震災メモリアルパーク」に着きました。震災で破壊された港の護岸が当時のまま保存してあります。2025年1月10日に改修され最新の展示になったばかりです。青山さんと遺構を見て、解説を聞き、パークにある展示も見ました。

停泊しているPILOT船や、ラインボート船も見えました。ラインボートは、大型船を係留する重いロープを船から港の護岸ピットまで運びます。こうした港湾の仕事のさまざまな施設が神戸港内にはあるとの解説も青山さんからありました。

展示を見て震災や復興した街、これからの神戸にも想い馳せながら、この街歩きツアーはここで解散となりました。

このツアーは、いつ起こるとも知れない災害やその経験、そして災害復興を考える機会にもなること、デザイン都市神戸の街歩きのモデルコースのひとつにもなればとの意図もありました。はじめて神戸を訪れる人も、普段神戸に住まう人・働く人も、青山大介さん作の鳥瞰図「津波避難情報板」見て視点を変え街を歩けば、神戸の街の魅力が再発見でき、併せて津波防災への知識も得られます。もしものときはいつ来るかわかりません。たまたま神戸を訪れた人とも一緒に安全に避難できる、そんな担い手にもなることができるかもしれない街歩きをしてみませんか。

◆案内人:青山大介〈鳥瞰図絵師〉
神戸港の開港にはじまり、阪神・淡路大震災などを経て変化する神戸の街の変遷を、「鳥瞰図」という大きな視点で記録する活動を続ける。描画手法は自ら考案、空撮写真と現地の地上で撮影した数千枚に及ぶ写真を用い、実際の寸法(原寸)に基づいた正確な比率で計算して制作。非常に緻密で絵画作品としての価値も有する。令和5年度神戸市文化奨励賞受賞。
ウェブサイト
・Instagram(@kobeuw

◆フェリシモ「青森部」(2024年1月に創部)
青森の伝統や生活文化を深く理解し、地元の魅力を共有しながら、メンバー(部員)が個々の興味からさまざまな青森を探求をします。「知らなかった」青森の“いいところ”を発掘・発信・共有する部活です。青森を知らない人、青森から出た人、青森に住まう人が共感し合い魅力を再発見できる機会を作ります。知ろう・行こう・味わおう……、青森が好きな人、ちょっと気になる人の入部を募っています。入部は「青森部™」のSNSをフォローしたり、商品サービスを購入したりすることで入部できるほか、様々な体験機会も設けます。「神戸と青森とのビジネス交流推進に向けた青森県の事業」(※)で青森を訪れたフェリシモ担当者が、知らなかったけれど行ってみたら感じた青森のあふれる魅力を伝えたいと創部しました。青森の人や全国の人々へ神戸の魅力も届けます。
・X(@aomoribu

◆神戸ポートタワー
60周年(1963年11月20日神戸港中突堤に竣工)を迎え、2024年4月26日(金)にリニューアルオープンしました。高さ108m。新設された屋上デッキは地上約100mで、ガラス張りのオープンエア回廊から360度の神戸の眺望が望めます。
ウェブサイト

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