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こんにちは、フェリシモ日本職人プロジェクトのリーダー・山猫です。
この〈&Stories/アンドストーリーズ〉シリーズでは、「誰かの物語から立ち上がるモノ作り」をコンセプトに日本製のアイテムをラインナップ。1人ひとりの中にある、小さいけれど熱烈な「好き」「欲しい」を叶えることで、世の中にはないモノが生まれます。
この冬シーズンのキーワードは、「TIAM(ティアム)」。ペルシア語で、「初めて出会ったときの瞳の輝き」という意味を持つ言葉です。目にした瞬間、心が揺さぶられて、特別な感情が湧きおこる。そんなモノとの出会いはきっと、暮らしという日常に素敵な光をもたらします。自分と静かに向き合う冬という季節に、瞳が輝くような出会いを、ぜひ楽しんでください。
今回ご紹介するのは、日本職人プロジェクト初登場となる「糸から生まれたのアクセサリー」。糸なのに貴金属のような輝きを持つ、これまでにない魅力的なアイテムです。手がけているのは、創業145年の刺繍メーカー「笠盛(かさもり)」さん。糸の宝石はいかにして誕生したのか、その製作背景や作り手さんたちの想いを、現地取材を交えてお届けします!
刺しゅうと織物の聖地「桐生」へ
刺繍メーカー「笠盛」は、創業145年の歴史を持つ老舗。その高い技術を生かし、オリジナルのアクセサリーブランド〈000/トリプル・オゥ〉。を展開しています。今回はその本拠地である群馬県桐生市に、日本職人プロジェクトメンバーの山猫とNISHIYANが行ってきました。できる限り製作の現場を訪ね、作り手の方が毎日目にしている風景の中でお話を聞くのが山猫のポリシー。全国各地を飛び回るプロダクトデザイナーの片倉洋一さん&ナイススマイルな営業の新井さんと、山猫&NISHIYANの予定が合う日がわずか1日しかなく、弾丸日帰りの取材ツアーとなりました。
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群馬県桐生市は古くから絹織物の産地として知られ、「西の西陣、東の桐生」と謳われたほど。渡良瀬川と桐生川の2つの川に囲まれ、水路が発達したことで、機屋や染物屋などの織物業が栄えてきました。「桐生織(きりゅうおり)」を始めとした多くの製品を生み出し、織物とともに発展したまちです。
駅のまわりは遠くに山も見え、広々とした町並み。少し歩くと、刺繍のお店などもありました。NISHIYANが事前に調べてくれた古きよき定食屋「五十番」さんで昼食を済ませ、いよいよ取材スタートです。
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伝統の笠盛が見出だした「糸の宝石」
まずお邪魔したのは、〈トリプル・オゥ〉の製品デザイン、製造、一部販売も行っている「カサモリパーク」。ここは、いわば〈トリプル・オゥ〉の心臓部。デザイン系専門学校や、美大の学生さんが見学に来ることもあるそうです。
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笠盛の創業は1877年(明治10年)。着物・和装帯の織物業から始まって刺繍業に転身、その高い技術で製作した刺繍パーツは、海外のハイブランドにも使用されています。刺繍メーカーとして培った技術や経験を生かして、2010年に立ち上げたのがオリジナルブランド〈トリプル・オゥ〉。糸を貴金属や宝石のように変身させ、独自のアクセサリーを展開しています。
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ブランドをすべて統括しているのは、ディレクター兼プロダクトデザイナーの片倉洋一さんです。大学卒業後に渡英してテキスタイルデザインを学び、その後5年にわたってロンドンに滞在。日本に帰国後はフリーランスのテキスタイルデザイナーとして、オーダー作りをメインとしたクチュールワークを中心にプリントや刺繍などのデザインを手がけ、ロンドンのエージェントを通して販売していた経歴をお持ちの方です。
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ゼロが3つ並んだ〈トリプル・オゥ〉というブランド名は、「ゼロにリセットする」という意味から。これまでの刺繍の既成概念にとらわれない新しいものづくりするという、マニフェストのような想いを込めて名付けたそうです。3つのゼロには、「技術」・「素材」・「発想(デザイン)」という、最高の商品に絶対に必要な3つの要素をあらわしています。
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〈トリプル・オゥ〉のアクセサリーの特徴は、球体に近い珠を刺繍糸で生み出すこと。平面に刺すことが基本の刺繍を、立体である球体に仕上げることはとても難しく、試行錯誤を重ねてようやく完成に至ったそうです。
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刺繍の機械から生まれる結晶は「芽吹き」
実際に工場を見せていただくと、ずらりと並ぶ刺繍専用機。デザインをプログラミングし、何台もの刺繍機で同時に刺繍をしていきます。
「なぜ刺繍糸で立体が作れるか」という秘密はここ。「水溶性の不織布」という特殊な布に刺繍を施し、刺繍が完成した後はお湯で不織布を溶かすと、糸が立体として残ります。これが、糸で立体アクセサリーを生み出す笠盛さん独自の技術です。
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専用の刺繍機を操るスタッフの皆さんは、パソコンのモニターを見ながら細かいデザインサンプルを作る方、下糸の調整をする方など、さまざま。糸の素材や太さにあわせてミシンの調整が必要なうえに、天候や湿度の影響も受けやすいため(刺繍の土台が薄い不織布なので、とにかく水分に弱いそうです)、スタッフの皆さんは付きっ切りで確認しながら作業されます。
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皆さんの真剣な仕事ぶりと共に、服装がとてもお洒落でびっくり。ファッションアクセサリーのブランドとして展開しているので、自己表現を楽しめるよう服装は自由にされたとのこと。とてもお若い方も多く、新鮮な感性がこのブランドの魅力と感じました。
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片倉さんによると、デザインチームが生産ラインのすぐそばにいることで、修正の指示や生産上の課題をすぐ相談できるのがメリットとのこと。コミュニケーションが円滑になり、全員のスキル向上につながっているそうです。一人ひとりが常に向上心をもってモノ作りに取り組む環境と、それを実行されるスピード感、それがブランドの良さだと感じました。
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不織布が溶けると、美しい立体が出現。
刺繍が完成したら、水溶性の不織布を溶かす工程へ進みます。実はこの「洗い」の工程は、すべてスタッフさんが手作業で行っています。溶けた不織布の糊っぽさが残らないように、素手で確認しながら、しっかりと。「刺繍の土台がなくなる」という緊張の場面だけに、人の手で丁寧に仕上げられています。
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お湯でじっくり丁寧に不織布を溶かした後は、アクセサリーの水を切り、よく乾燥させていきます。ここで登場するのは「バキューム」と呼ばれるテーブル。本来は布をアイロンがけする際にシワなくピタッとさせるためのものだそうですが、そこに置くと早く乾くことがわかり、今ではアクセサリーの乾燥に使用されているそうです。
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そして最終は検品。こちらもひとつひとつ丹念に、専門のスタッフの皆さんが確認していきます。私が見る限りだと、、どれもいい出来!?と思うのですが「ええ、もう少しでOKなものもあるのですが、気になるものはすべていったんチェックし、綺麗に仕上げ直せるように心がけています」とおっしゃっていました。ほとんどの作業を自社ですることで、品質を高いまま維持できているのもこだわりのひとつのように思いました。機械による精度の高い仕事と、手作業による細やかな仕事。その両方が合わさって、〈トリプル・オゥ〉のアクセサリーが生まれていることが、よくわかります。
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もうひとつ、とても興味深かったのが材料。できる限り、桐生のコミュニティーから派生する、日本製の素材にこだわっているそうです。なかなか難しいリクエストのオーダーも、同じ桐生の糸メーカーさんだと融通してもらえることもあるとか。心意気を共にする同郷の仲間とのモノ作りだからこそ、唯一無二の桐生オリジナルが誕生します。山猫もお話していて常に「人」や「想い」を大切にしているブランドだと感じる点が多かった印象。そういった特別な想いがしみこんだ材料だから、また仕上がりへのこだわりも生まれるように感じました。
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「らしさ」を探求しながら
丁寧に〈トリプル・オゥ〉のモノ作りを教えてくださった片倉さん。なぜ〈トリプル・オゥ〉のモノ作りに心惹かれたのか、その素晴らしさがとても伝わる出張となりました。
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片倉さんのお話の中で、山猫がとても好きな言葉があります。それは、「“桐生らしさ”“笠盛らしさ”を追求していく」という言葉。「新しいものをクリエイトしていく上で、理想の人物の『笠盛人(かさもりじん)』としての振る舞い・所作をすべてにおいて体現していきたい。その上で必要なスキルを見つけながら、ブランドの目指すべきシーンにたどり着いていきたい!」そう熱弁する片倉さんに、とても感銘を覚えました。そして、「“ワクワクドキドキ”しながらブランドをどんどん展開していくことで、ブランドのミッションが自然と伝わっていくと思います」と語られる片倉さんの笑顔が印象的でした。
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〈トリプル・オゥ〉のブランドミッションを、「僕たちの技術と発想で“日常を豊かにする”こと」と語った片倉さん。刺繍メーカーとして培った技術や歴史は大切にしながらも、作る人・使う人・関わる人が優しさを感じられるような事業を、常に一番に考えて進んでいきたいとおっしゃいます。「刺繍だけにとどまらず、新しい市場を開拓しながら、繊維業界全体が発展につながることをやっていけたら」という言葉に、またしてもワクワクする山猫でした。
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取材の後に立ち寄らせていただいた笠盛さんの本社では、〈トリプル・オゥ〉の商品ラインナップが綺麗にディスプレイされ、二階には笠盛が積み重ねてきた刺繍ワークのファイルがぎっしり。山猫はじっくり時間をかけて一冊一冊、拝見したいなーと思いながらも、残念ながら時間切れとなってしまいました。
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絹の光沢を装う、シルクのロングネックレス。
〈トリプル・オゥ〉が技術の粋を結集して作った球体刺繍。その球体を、すべて絹糸だけで仕上げたスペシャルアイテムを、今回特別に作っていただきました。メインモチーフの美しい白珠はシルク100%、つなぎ部分は糸とは思えない煌めきの純銀ラメ糸を使用した、〈アンドストーリーズ〉だけの別注バージョン。絹糸と純銀ラメ糸のコントラストが絶妙なアクセントになった逸品です。
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胸もとが華やぐたっぷり約80㎝のロングサイズ。これだけの長さがありながら、とにかく軽いのが糸ならではの魅力です。長時間身に着けていても、ストレスのない着け心地。上品な白の輝きが、冬の着こなしに彩りを添えてくれます。
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糸珠の間のすき間に引っかけて留めるので、長さ調整も自由自在。そのままシンプルに掛けるのはもちろん、短めにして後ろに垂らしたり、アレンジもいろいろ。これまでにない、新しいアクセサリーの楽しみ方が広がります。
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装いが見違える、付け衿感覚の華やかさ。
コイン状のパーツが2連に重なるネックレスは、ボリュームたっぷり。これも実は、パーツをつなげているのではなく、ひと続きの刺繍になっています。
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内側の珠は黒の絹糸にし、外側のラメ珠は金色のラメ糸を差し込んで華やかに。手持ち服の印象をガラリと変えて、シンプルなコーディネートもぐっと盛り上げてくれます。短めに長さを調整すれば、チョーカーのように楽しむこともできます。
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とても軽いから、一日中着けていてもストレスなし。黒やグレーなど同系色に合わせてなじませても、ベージュなどのくすみカラーに合わせても、糸のきらめきでおしゃれにまとまります。
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きらりと揺れて、横顔を印象的に。
小さな糸の珠をリング状に並べた耳飾りは、ピアスとイヤリングの2タイプ。金銀糸と呼ばれるメタリックな糸を使っているので、耳もとできらりと輝きます。金属と違ってとても軽いので、着け心地も快適。揺れるデザインでもストレスなく、ほどよい大きさで、横顔を印象的に彩ります。
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上品な輝きのシルバー色は、洗練された大人の雰囲気。どんな装いにも合わせやすく、冬の着こなしに美しく映えます。ラフな着こなしはもちろん、スーツなどかっちりとしたスタイルにも。いろんなコーデに似合う、合わせやすさも魅力です。
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優美なゴールド色は、鮮やかな輝きが魅力。揺れるたびにきらめいて、顔まわりの印象がぐっと華やぎます。ふだんのコーデにさらっと合わせるのはもちろん、パーティーなどのドレスアップにもおすすめです。
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日本職人プロジェクトでは初登場の〈000/トリプル・オゥ〉の美しい糸の宝石たち。あなたをいっそう輝かせるものがあれば、ぜひお試しください。
(オマケ)
地元を愛し、仲間を大切にしながら夢を実現していく片倉さんは、週末には地元の吾妻山に登り、桐生の街並みを眺めるのが好きだそうです。いつか山猫もいってみたいなーと思っています^^
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群馬の刺繍工房が作った 糸の宝石のシルクロングネックレス〈ホワイト〉
1本 ¥7,000 ( +10% ¥7,700 )
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群馬の刺繍工房が作った 糸の宝石のネックレス〈ブラック〉
1本 ¥17,000 ( +10% ¥18,700 )
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群馬の刺繍工房が作った 糸の宝石の耳飾り〈ゴールド色〉
1組 ¥4,900 ( +10% ¥5,390 )
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群馬の刺繍工房が作った 糸の宝石の耳飾り〈シルバー色〉
1組 ¥4,900 ( +10% ¥5,390 )
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日本のモノづくりを通してたくさんの素敵な物語を伝えるために続けてきた「日本職人プロジェクト」。2004年のスタート以来、様々な魅力的な方の想いと共に「物」語るアイテムを誕生させてきました。
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プロジェクトリーダー 山猫