こんにちは、日本職人プロジェクトリーダーの山猫です。

日本のモノづくりを通して、たくさんの素敵な物語を伝えるために続けてきた「日本職人プロジェクト」。誰かの「好き」「欲しい」をカタチにした、ここにしかないプロダクトを生み出しています。

新しいことが始まる春は、自分への期待も高まるような気がしませんか? 最近は「春になったら……」より、「春までに……」を意識するように変わってきたように思います。

そこで、2023年春は“Opportunity/オポチュニティー”をテーマにしました。偶然が重なる“Chance/チャンス”に対して、しっかり準備して臨むのが“Opportunity / オポチュニティー”。目的や理想に対して行動するのに、「ちょうどいい機会」というニュアンスがあります。日本職人プロジェクトのアイテムがいろんな機会を作るきっかけになったり、なりたい自分のための準備になったらうれしいなと思います。

今回紹介するのは、福岡の鞄作家・岡政孝さんの新作モデル! 春に向けて、なんと4アイテムがデビューします。

6年ぶりに訪問した工房で、技術やセンスの進化を実感。

鞄作家・岡政孝さんと内門祐樹さんが立ち上げたレザーファクトリー<UNISON / ユニゾン>は、福岡にあります。工房に初めてお邪魔したのは、まだ開業されて間もない頃。借りたばかりの真新しい工房で、初めての企画を進めたのを覚えています。(たしか、最初に作ったのはウォレットショルダーだったと思います)そして今回、新作を企画するにあたり、6年ぶりに福岡の工房を訪ねました。

手作業で鞄を修正しているのが岡政孝さん、ミシンで縫製しているのが内門祐樹さん。

6年の間に、岡さんとは本当にたくさんの日本職人プロジェクトのオリジナル鞄やお財布を作ってきました。こちらのリクエストを形にするというより、思いもよらないものが誕生するのが、岡さんとのモノづくり。作家さんだけあって、「こんなのできました!」と想像を超えるアイテムを提案してくださいます。

ご自身が使っているアイテムも素敵なものが多くて、山猫はいつも、岡さんが神戸に打ち合わせに来られるたび私物をチェック。好きなものが似ているので、すぐ「それいいですね!」となって、商品化したモノもたくさんあります。(今回もあります)

久しぶりにお邪魔した工房は、当時よりかなり狭く感じられました。この6年でさまざまな仕事を手掛けるようになり、道具や素材がずいぶんと増えたそうです。6年間真摯にモノづくりを続けてきた歴史や信頼が積み重なっての「狭さ」なのだと思い、近所にもう一軒工房スペースを借りようと思うんですという岡さんの話を聞きながら、うれしい気持ちになりました。

今回いくつかのアイテムを目の前で修正していただいたのですが、その手さばきがすごく鮮やか。打ち合わせをしながら細かいリクエストを的確に反映する岡さんの手もとを見て、技術もこの6年でずいぶん高められたことがわかりました。

そして完成した、岡さん史上、最もエレガントなバッグ。

今回の福岡出張のハイライトが、このアイテム。革という素材に並々ならぬこだわりを持つ岡さんが、スペシャルな革をセレクトして作ったバッグです。提案してくださったサンプルがあまりに素敵で、見た瞬間に日本職人プロジェクトメンバーの山猫、NISHIYAN、MOEの3人が「おおーー!」と歓声を上げました。

これまでの岡さんの作風とはちょっと違う、エレガントなたたずまい。スクエアなフォルムに細目のベルトやアンティーク調の金具を合わせた、レトロ感のある仕上がりです。

サンプルは少し重い印象でしたが、光るものを感じて、使いやすさを高める工夫を重ねました。「山猫さんが福岡に来られるなら、打ち合わせしながらきっちり修正しますよ」と言ってくださったので、その場で直接修正をリクエストさせてもらいました。

こちらがセカンドサンプル。ファーストサンプルをたくさんの女性スタッフにモニターしてもらい、その意見を反映した物。それをさらにブラッシュアップしていきます。

まずは、バッグの口の部分。マグネットホックをつけた方が使い勝手がいいので、そのことをお伝えするとすぐにサンプルを部分的に分解。マグネットを入れ込んで縫製してくださいました。

次にショルダーストラップの幅も少し細めに修正依頼。長い革も岡さんが手断ちし、ストラップ金具を取り付けてくださいました。

持ち手は岡さんの奥さまに試していただいて、長さを調整。手首を通して、ひじに掛けられる長さに修正しました。

分解したり、細く断ったり、付け替えたり……、目の前でどんどん作業が進んでいくのは、さながら料理ショーのようでした。そして、あっという間に大変身! わずかな時間で、見違えるほど素敵な仕上がりになりました。

本体には中央にマグネット、両端にスナップボタン付きで、たくさん荷物を入れてもきちんと口を閉じられます。鞄の美しいシルエットを崩さずに使える工夫です。

主役の革は、岡さんこだわりのタンニンレザー。植物由来成分であるタンニンでなめした革に、シボ加工をしてやわらかく仕上げています。色が薄いので革の表面に筋やムラなどが目立ちますが、岡さんは「そこが魅力」だと言います。革本来の風合いが生きて、エイジング(経年変化)が楽しめる薄い色のほうが、使い込む楽しみがあると岡さん。ぜひ使い込んで、いい色ツヤに育ててください。

タンニンレザーはエイジング(経年変化)が出やすいので、使い込むほどに味わいが深まっていくのも楽しみです。

同じ革でも、ショルダーベルトは表面を固く加工してスムースな風合いに。こういう細かい心遣いも素敵です。

もともと洋服に使うベルトも作っていた岡さんなので、ショルダーベルトの扱いも上手。ショルダーベルトは取り外し可能です。

底まちはたっぷり広めで、お弁当も入ります。MOEがサンプルを試用して、実証済みです。サイドのボタンをはずせば、さらに容量がアップします。

底にはしっかりした革を張り、底びょうもつけた丈夫な仕上げ。内側には同色の裏地を張り、小物収納に便利なポケットも。お弁当も、水筒も、ポーチも折りたたみ傘もすっぽり。

ハンドバッグ風の金具やベルト遣いもおしゃれ。実は最初のサンプルではふたはベルトをループに差し込んで開閉する仕様でしたが、試用したMOEはその手間がめんどうですぐにギブアップ。サッと開け閉めしやすいひねり金具に変更しました。ベルトは飾りになりましたが、バッグの印象を決める重要なデザインポイントになっています。

細い飾りベルトにアンティーク調の小ぶりな金具を合わせて、全体を上品な印象に。

革本来の風合いを生かしながら、きれいなフォルムで上品に仕上げたエルベンバッグ。印象の幅が広いから、カジュアルからきれいめまで、いろんな装いに似合います。

誰かのお下がりみたいな雰囲気なので、「継承」を意味するドイツ語を使って「エルベンバッグ」と名付けました。メンテナンスしやすいように作られているので、修理しながら、いつか誰かに受け継げるほど、長く使っていただけたらうれしいです。

私物をモデルにしたバッグは、革の手ざわりが最高。

続いては、とてもやわらかい革で仕立てたバッグ。体にくったり寄り添うことから、「サピュイエ(フランス語で、寄り添うの意味)」バッグと名付けました。

これはもともと、岡さんが私物で使っていたもの(ふだん使い用に作ったそうです)。すごく素敵だったので、山猫も使ってみたいとお願いして、試用させてもらいました。しばらく実際に使ってみて、これは日常のパートナーになるなと思ったので、日本職人プロジェクトのメンバーに提案。そして、商品化することになりました。岡さんとのものづくりは、わりとこのパターンが多いです。

この鞄が、原型となった岡さんの私物モデル。これをベースに、お弁当や水筒などが入って日常使いできる容量に修正しました。

デザインはシンプルですが、それだけにこだわったのが革の質。タンニンとクロームの両方でなめした革はくったりとやわらかく、手ざわりも最高です。自然な風合いを残して加工しているので細かいシワやシボもありますが、その表面感がシンプルなデザインのアクセントになっています。

岡さんはこの革をとても気に入っていて、「ほかの革では、この鞄は作れません」とおっしゃるほど。その妥協のない姿勢によって、いい革をたっぷり使った、贅沢な鞄になりました。

さわり心地にこだわったブラックレザーは、手に吸い付くようなきめ細かい手ざわりが魅力。

やわらかい革がからだに自然になじんで、中身が少ないと持っていることも忘れそう。バッグの口はマグネットホックでらくに開閉でき、ざくざく入れられるのもいいところ。ストレスのない使い心地は、気さくな相棒みたいな存在です。

底まちと深さがあるので、見た目以上の収納力。中身をたくさん入れてふくらむのもかわいいし、少なくてペタンとしていてもサマになります。

ストールや長財布、折りたたみ傘もすっぽり入ります。パカッと開けて、ぽんぽん入れられる気軽さが魅力。

肩掛けでも、斜め掛けでも持てる持ち手の長さ。斜めに掛けるとちょうどおなかの前に来て胃袋みたいなので、最初は「ストマックバッグ」なんて呼んだりもしていました。

撮影用のサンプルが出来上がってからも、何度もチェックを繰り返す岡さん。使うことで色々気付きがあり、そのたびに改良されます。今回も日本職人プロジェクトメンバーに送る前に何度も作り直し、フォルムの完成度を高めてくださいました。気軽に使えるラフなスタイルながら、革の上質感とつくりの良さは一目瞭然。大人の日常に寄り添ってくれる、名品バッグになりました。

岡さんの工房に掛けられていたサンプル。使って、直して、また使って……を繰り返して、完成されたフォルムを実現。

システム手帳みたい? 見たことのないスリムな長財布。

最後のアイテムは、2種類のお財布。岡さんは、細かい作業がたくさん必要なお財布もお上手です。今回は、以前一緒に作ったラウンドジップ財布を、今どき仕様にアップデートしました。

岡さんのラウンドジップ財布は、日本職人プロジェクトメンバーのYUDAIと共に企画した名品。とても人気の高いアイテムで、何度も色替えモデルを作っていただいたのですが、1点気になることが山猫にはありました。それは、カード収納が充実しすぎて、財布が分厚くなってしまうこと。そこで、「岡さん、今一番みんなが待っているスタイルの財布を作りましょう!」とお願いしたのが企画のスタートとなりました。

岡さんにお願いしたのは新作1点。なのに、上がってきたのは2点。「山猫さん、お札を曲げたくない人と、コンパクトで持ちやすいのがいい人用と、2つ用意してみました」と岡さん。どちらもこだわった革を使っており、仕上がりも機能的。そこで、まず実際に使ってみることにしました。

ひとつ目は、一見なシンプルなようで、開けるとびっくりする長財布。ジップを手帳のように開いたら、財布の向きを変えずに、そのままそのポジションのまま小銭やカードが取り出せます。

カードホルダーと小銭入れを縦に配置することで、開けた動作のまま使えます。ありそうでなかった、この仕様!

岡さんと山猫のふたりで1ヵ月使ってみて、不便に感じたところをチェック。修正して、試用して、また修正して……を約1ヵ月にわたって繰り返し、完璧な仕上がりをめざしました。

素材は、タンニンなめしレザー。しっかりした厚みのある、ベルト用の革を使っています。革の味わいは出てきますが、表面にスムース加工にしているので、変化のスピードはややゆっくりめ。手にぐっとくる革の風合いを楽しみながら、じっくり使い込んでください。

システム手帳みたいな使い心地なので、「組織する・まとめる」などの意味を持つ言葉を使って「オーガナイズウォレット」と命名。春からの毎日を、スマートに彩ってくれそうです。

コンパクトな折り財布は、「中だけヌメ革」が新鮮。

もうひとつは、ベーシックな折り財布。表はシンプルな黒の本革ですが、ジップを開くと中はヌメ革というギャップが新鮮です。これは、「中だけヌメ革がかっこいいんです」という岡さんのこだわり。

シンプルな構造で、お札、小銭入れ、カードをすっきり収納。必要なものだけをコンパクトに持ち歩けます。

表は、クロームでなめした定番の革です。バッグなどに使うことの多い革なので、傷や大きなシワは少なめ。1.3ミリとしっかり厚みがあるので、もちっとした手ざわりが楽しめます。

タンニンなめしのヌメ革は、使い込むほどあめ色になるが特徴。毎日使うものだから、日々変化していく様子を眺める楽しみも味わえます。

バッグの中でもかさばらず、必要なものがコンパクトに収納できるサイズ感は、とても今どき。ちょっと懐かしいようなもちもちした手ざわりと使いやすさを、ぜひ体感してみてください。

アイデアを生み出す作家性と、それを形にする技術。

岡さんは予想外のアイテムを生み出す作家としての面と、依頼にきちんと対応してくれる職人さんとしての面があります。今回もエルベンバッグやオーガサイズウォレットは、日本職人プロジェクトメンバーも驚きの仕上がり。またどんなアイテムを提案してくださるのか、これからも楽しみです。

次の新作のアイデアもどんどん出してくれる岡さんと内門さん。本当に頼もしい!

次回は、金沢の時計職人が手がける時計。人気の「見惚れる」シリーズや、今回初登場のスペシャルアイテムをご紹介します。お楽しみに!

福岡の鞄作家と作った 職人本革のエルベンバッグ〈ダークブラウン〉

¥39,600

福岡の鞄作家と作った 職人本革のオーガナイズウォレット〈ブラウン〉 

¥18,700

福岡の鞄作家と作った 職人本革のラウンドジップ折り財布〈ブラック〉

¥16,500

福岡の鞄作家と作った 職人本革のエトランドルバッグ〈ブラック〉

¥34,100

日本のモノづくりを通してたくさんの素敵な物語を伝えるために続けてきた「日本職人プロジェクト」。2004年のスタート以来、様々な魅力的な方の想いと共に「物」語るアイテムを誕生させてきました。

プロジェクトリーダー 山猫

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