「欲しい」をくすぐる、プランナーMOEの企画力
こんにちは、日本職人プロジェクトのリーダー山猫です。
日本のモノづくりを通して、たくさんの素敵な物語を伝えるために続けてきた「日本職人プロジェクト」。誰かの「好き」「欲しい」をカタチにした、ここにしかないプロダクトを生み出しています。
2022年秋にお届けするアイテムは、「沁みる、馴染む」がキーワード。一瞬目にしたものが心に残って、あとから思い出すことがありませんか? それは、美しさもあれば、偏った魅力だったり、突出した存在感だったり。素の日常を生きる中で、自分の心に響くものを素直に受け止めるのは、とても素敵なことだと思います。心に沁みる愛おしいものが、いつしか暮らしに馴染んでいく、そんな秋を楽しんでください。
今回ピックアップするのは、日本職人プロジェクトメンバーの一人、プランナーMOEの美学が詰まった3つのNEWアイテム。この秋も、MOEがリアルに「欲しい」と企画した、説得力のある名品ばかりです。
たくさんの人気アイテムを生んできたプランナーMOE。どんな分野のアイテムディレクションも丁寧に仕上げます。(山猫もよく相談にのってもらいます)
商品の撮影の後にタロット占いをしてくれるのも定番。みんなが楽しみにしています。
お気に入りのコートに合わせるための、上品な斜め掛け
MOEとは、雑談しながら企画の話をします。立ち話だったり、会社帰りだったり、工場に行く途中だったり。あまり会議で何かを決めることはなく、何気ない会話から企画が進んでいくことがよくあります。あらたまって考えるより、活きた言葉を大切にしたいので、いつもそんな感じ。
取材や打ち合わせのために、工場を訪ねることもしばしば。移動時間が企画会議になります。
今回も、「MOEさん、秋冬シーズンで欲しい鞄ってありますか?」と何気なく山猫が聞いたのがきっかけでした。すると、「実は私、欲しいものがあるんです~。コートを着たときに、最高に映える鞄を作ってみたいんです」という回答が。ウールのコートを買って新しい鞄を思いついたとのことで、さっそく企画をスタートさせることにしました。
「厚手のコートを着るときは、手持ちバッグやトートバッグは肩や腕に掛けづらくて。だから、コートスタイルのときは斜め掛けバッグがいちばん便利なんです」とMOE。でも、容量のある斜め掛けバッグは、カジュアル系やナチュラル系が多く、きれいめコートに合わないことに気付いたそうです。そこで「ちょっと上質なコートにも似合う、大人の斜め掛けバッグを作ろう!」ということになりました。
きれいめコートに合う上品な斜め掛けバッグを作るため、依頼したのはハンドバッグを製造する鞄工房。ハンドバッグを製作する鞄工房なら、ふつうの工房の仕上げでは出せないきちんと感が実現できます。
デザイナーさんが作成してくださった仕様書をもとに、MOEが自ら紙で実寸の立体模型を作り、台形の角度や縫製のディテールまで細かくオーダー。その熱意にメーカーさんと鞄工房の職人さんが応えてくださって、数回の試作を経てイメージ通りのバッグが完成しました。
MOEが「どうしても譲れない」とこだわったポイントは5つ。
ひとつ目が、ワンタッチで開閉できるマグネットホック。「ファスナーは開け閉めがめんどうで」といつも鞄を開けっ放しにしてしまう、ずぼらなMOEならではの仕様です。
2つ目は、大きめのオープンポケット。ハンカチやスマホ、ICカードなど、頻繁に使うものを入れるのに便利です。サイドに折り込むようにまちを付けることで、前にパカッと広がって出し入れスムーズ。細かい部分まで凝ったつくりになっています。
3つ目は、台形のフォルム。底の広い台形にすることで、容量はしっかり確保しながら、スッキリした見た目を実現します。この台形の角度こそ、MOEのこだわり。試行錯誤を重ねたおかげで、スマート&エレガントに仕上がりました。
4つ目は、まち幅。これも超重要なポイントで、まち幅が広すぎるとかさばって邪魔になり、狭すぎると物が入りません。ギリギリまで攻めて、体にしっくり寄り添いつつ、水筒や折り畳み傘が入る容量を確保しました。
5つ目は、雪のような美しい白。「コートはブラックやブラウンが多いから、華やかな明るい色に!」と選んだ色です。ほんのり黄色がかったアイボリー調のカラーで、浮かずに映えるところが魅力。皮革用クリームなどでお手入れすれば、きれいな白色が長持ちします。フラップに付くゴールドの丸ビョウだけをアクセントにした、上品な表情も素敵。
内生地は「雪降る夜空」をイメージしたダークブルー。「重い鞄は持ちたくない」というMOEらしく、本体に取り付けるベルトも脱着金具を使わない仕様で軽く仕上げています。
コーデが重くなりがちな秋冬シーズンこそ、白いバッグが輝くような存在感を放ちます。こだわりの台形フォルムが体に寄り添い、ギリギリを攻めたまち幅で容量もたっぷり。おしゃれと実用性がちゃんと両立しているのが、MOEのバッグらしいところです。ちなみに本人は、「お気に入りのスモークブルーのコートに合わせるのが一番好きです」とのことです。
鮮やかなルージュ色のバッグは、持つだけでパリの風
次のアイテムは、目の覚めるような真っ赤なトートバッグ。一見派手なようですが、持つと意外としっくり。フェリシモ社内でもいろいろな人に持ってもらいましたが、誰が持ってもパリジェンヌっぽく見えるので、名前もそのまま「パリジェンヌバッグ」と付けました。
パリジェンヌバッグの誕生は、MOEがふだん使いしていた帆布のトートバッグがきっかけ。なんでも入って使いやすいトートバッグを愛用していたMOEですが、「カジュアルな見た目だから、街へのお出かけに向かない」のが悩みでした。帆布素材だと、どうしてもご近所感が出てしまうがネック。同じ使いやすさで、本革のものがあったらいいのに!という思いから、企画が始まりました。
MOEがこだわったのは、本革仕立てでも、帆布のような気さくさを残すこと。そこで、内生地を貼らない一枚革の仕立てで、軽くてラフな感じを出しました。
内生地を貼らずに仕上げたラフな質感が魅力。入れ口もオープンで、ぽんぽん気軽に入れられる雰囲気に。
まち幅はしっかり広めに、お財布やポーチ、ペットボトルもすっぽりおさまります。容量がある分、重いものを入れたときに底がたわまないように、取り外しできる芯材を入れました。
お弁当箱や水筒を入れても底がたわまず、きれいなフォルムをキープ。くたっと使うなら、底の芯材は外してもOK。
持ち手もふかふかもちもちで、愛着のある使い心地。見た目はもちろん、手ざわりまで気を抜きません。
「毎日使うものだから、手ざわりは大事!」とMOEがこだわった、もちもちの持ち手。
そしてこのビビッドな赤。本革素材ですが、ラフな雰囲気に仕上げているので、思い切って明るい色にしようと選んだカラーです。試作品が上がってきた当初は、「ちょっと鮮やかすぎるかなあ」と話していたのですが、フェリシモ社内のいろいろな人に持ってもらったところ、これがすごくいい感じ。シンプルな装いも華やいで、おしゃれ上手なパリジェンヌみたいです。みんなで「これを持つだけでなんだか、パリの風を感じますね~!」と盛り上がりました。
使い勝手を確かめるためにMOEが試作品を持って街へ出かけたところ、行く先のショップの人や出会う友人に、「素敵なバッグ!」と褒められたというエピソードにも納得。帆布トートではご近所感がありすぎて入りにくいおしゃれなショップやレストランも、このバッグなら堂々と自信をもって入れます。帆布トートバッグの気軽さを本革素材で再現したパリジェンヌバッグ、名品の予感がします。
さりげなく自慢したい、本革素材のお裁縫箱
最後は、MOEが<クチュリエ>のエースプランナーFururuとKimidoriと一緒に企画したお裁縫箱。WEB限定で登場する、スペシャルアイテムです。
手芸ブランド<クチュリエ>を担当し、自身も手芸を愛するFururuとKimidori。そんな2人に、ふだん使いの裁縫箱はどんなものがいいのか、ヒアリングするところから始めました。「バッグに入れて持ち運べたり、デスクの引き出しに入るぐらい小ぶりで、必要最低限の道具が入るサイズが理想。お菓子の空き箱や空き缶もよく利用します」「手づくりのバンドで留めたり、ワンポイントを入れたり、個性をプラスするのが必須なんです。ワークショップでは、他の人が使っている裁縫箱にも注目します」など、手芸好きさんのあるある話がたくさん。それを聞いて、「ワークショップに持って行って、注目を浴びる本革の裁縫箱を作ろう!」という流れになりました。
小さな箱なので簡単に作れるかと思いきや、これが予想外に苦戦。最初のサンプルはイメージ通りのものが出来上がらず、作り直しとなりました。「箱」らしい角を出すのが難しく、しっかり輪郭を出すために芯を入れて縫っていただくことに。2度目のサンプルはとてもきれいに仕上がって、FururuとKimidoriのチェックもクリア。「うん!いい感じ♪」とOKをもらうことができました。
できあがった小さな箱は、シンプルなようで機能が充実。まず、ふたを取り外せるようにしたことで、裏返してトレイのように使えます。小さなボタンやビーズを入れておけば、制作中に散らばることもなく安心。
箱の内側にマグネットを内蔵した「針休め」も作りました。マグネット部分に針がくっつくので、作業中の針を一時的に置くことができます。大きな針山を持ち歩けないときや、糸を通した針を安全に置いておくことができて便利。
デザインは、Fururuの「手芸好きさんは、こういうテイストが好き」というアドバイスをもとに、キャメル色の本革に麻素材の内生地を合わせて、ナチュラルなテイストに仕上げました。個性を演出するワンポイントとしてあしらったのは、金色の飾りボタン。シンプルながらも上質な本革の風合いで、“ひと味ちがう”風格がただよいます。
手づくりを愛するFururuとKimidori、そしてMOEが、細部までこだわったお裁縫箱。長く手もとにおいて大切に使って欲しい、大好きな手芸の時間を楽しんで欲しい、そんな思いが込められています。天然素材である本革のやさしい手ざわりや、職人さんが芯を入れて丁寧に縫い上げたぬくもりは、きっと手芸好きさんに気に入ってもらえると思います。ぜひワークショップに持っていって、たくさんの注目を浴びてください。そして、手芸好きさん同士の会話がはずんだりするとうれしいな、と思います。
心惹かれるのは、ちゃんと「欲しい」理由があるから
今回紹介したアイテムは3つとも、プランナーたちの「こんなのあったらいいな~」から生まれたもの。誰かのための商品企画ではなく、自分たちが素直に欲しいと思うものをカタチにしています。敏腕プランナーたちが自分のために企画したアイテムは、なるほど!と納得してしまうポイントがたくさん。ぜひそのこだわりを、日常の中で体感してみてください。
次回は、金沢の手づくり時計工房さんと作った新作&復刻時計をご紹介。今までとちょっと雰囲気を変えて、新しいチャレンジをしています。お楽しみに!
プランナーMOEとハンドバッグ職人が作った 職人本革のコートバッグ〈ネージュ〉[本革 鞄:日本製]
¥37,950(税込み)
プランナーMOEと作った 職人本革のパリジェンヌバッグ〈ルージュ〉[本革 鞄:日本製]
¥25,850(税込み)
手芸プランナーと作った 職人本革のワークショップボックス〈キャメル〉
¥10,780(税込み)
日本のモノづくりを通してたくさんの素敵な物語を伝えるために続けてきた「日本職人プロジェクト」。2004年のスタート以来、様々な魅力的な方の想いと共に「物」語るアイテムを誕生させてきました。
プロジェクトリーダー 山猫