作りたい!をかなえてくれる、鞄デザイナーの小林弓子さん
こんにちは、日本職人プロジェクトのリーダー山猫です。
日本のモノづくりを通して、たくさんの素敵な物語を伝えるために続けてきた「日本職人プロジェクト」。誰かの「好き」「欲しい」をカタチにした、ここにしかないプロダクトを生み出しています。
2022年秋にお届けするアイテムは、「沁みる、馴染む」がキーワード。一瞬目にしたものが心に残って、あとから思い出すことがありませんか? それは、美しさもあれば、偏った魅力だったり、突出した存在感だったり。素の日常を生きる中で、自分の心に響くものを素直に受け止めるのは、とても素敵なことだと思います。心に沁みる愛おしいものが、いつしか暮らしに馴染んでいく、そんな秋を楽しんでください。
今回ブログでピックアップするのは、鞄プランナー兼デザイナーの小林弓子さんと作ったお財布と鞄。小林さんが見事カタチにしてくれた3つのNEWモデルをご紹介します。
ギャルソン財布が、キャッシュレス化でスリムに変身!
小林弓子さんは、日本職人プロジェクトのモノづくりを支えてくれる、縁の下の力持ち。山猫やMOEのリクエストをもとに、具体的なデザインを起こしてくれるのが小林さんです。
小林さんと山猫のお仕事でのお付き合いは、もう20年以上になります。もともとは、小林さんのお母さまとお仕事でご一緒していたのがきっかけです。途中から、小林さんがお母さまのサポートとしてお手伝いをされるようになり、それからずっとお世話になっています。
小林さんは学生時代ハンドボール部の主将を務めていただけあって行動力、判断力、誠実さなどたくさんを持ち合わせた方。多くの職人さんとの連携し、関東のスタッフとタッグを組みながらぐいぐい企画を進行してくれる、山猫が最も信頼を置くパートナーのおひとりです。
誰かの「欲しい」をカタチにする日本職人プロジェクトのアイテムは、他にはない仕様や機能、こだわりがいっぱい。こんな鞄が作りたい!こんな機能を付けたい!そんな私たちの願いを、いつも上手に製品デザインに落とし込んでくださいます。
ある日、新しいお財布について小林さんと打ち合わせをしていた日のこと。もう15年以上この日本職人プロジェクトを続けていて、お財布もいろいろなタイプをたくさん作ってきました。どれもその時に使いやすさを追求したものだから、使いやすく定番化しているものばかり。それだけに、お互い新しいお財布のアイデアがなかなか浮かびません。
そこで山猫はふと、以前社内でお財布のサンプルをチェックしていた時に言われた誰かの言葉を思い出しました。「開け閉めしやすくて、開けた瞬間に中身がほぼ全部見えて、お札は折らずに、カードはそこそこ入る、重くないお財布があったらいいのに」。
これ、ひとつひとつを個別の財布でクリアすることはできますが、すべてをひとつの財布でクリアするのはとても大変。でももし全部叶えられたら、それはきっとみんなが欲しいと思えるお財布になるんじゃないか、とも思いました。全く新しい財布じゃなくていい、今このときに求められた機能がある財布を作ろう。そう考えて、長年のモノづくりのパートナーである小林さんとともに企画をスタートさせました。
あれこれ考えて思いついたのが、がばっと大きく開く小銭入れでおなじみのギャルソン財布。テーブルでお会計をする外国のギャルソンが持つお財布を参考にした人気アイテムで、開くとひと目で中身が見えるのが特徴です。
ただギャルソン財布は、小銭やレシート、領収書などがたくさん入る大容量タイプ。重くないお財布にするために、大幅なスリム化に挑戦しなくてはなりません。これが想像以上に大変で、作業は難航。そもそもギャルソン財布の箱型の小銭入れを折り込む仕様はとても手間がかかっているので、それを薄いお財布で再現するとなるとハードルはさらに上がります。小林さんの協力のもと、仕様を変えて試作品を作り、それを実際に使ってみて検証し、、、という作業を繰り返しました。
そしてようやく、ギャルソン財布のスマートバージョンが完成。キャッシュレス化の時代にぴったりの、コンパクト&スマートなギャルソン財布ができました。
これまでのギャルソン財布とは全く違う、鞄の中でもかさばらないスリムなフォルム。
L字ファスナーを開くと、そこからがばっと大きな小銭入れが開きます。中身がひと目で見えるギャルソン財布の特徴を受け継ぎつつ、容量は控えめにしてスリム化に成功!
この薄さで、大きな小銭入れを内蔵。L字ファスナーにすることで、お財布のふくらみをおさえられて、コインも落ちにくく一石二鳥!
苦労して素敵なお財布ができたので、見た目にもこだわりたくて華やかなアラベスク風の刻印柄をセレクト。過去に発売したお財布でも評判のよかった人気の柄で、手にするたびに気持ちがときめきます。
カラーは、気品あるノアールとあでやかなガーネットの2色。当初は黒色(ノアール)のみの予定でしたが、プランナーMOEの「この刻印の美しさを生かすなら、大人っぽい落ち着いた赤系の色もきっと素敵だと思います」というアドバイスに従って、深みのある紅色も作りました。
シンプルなデザインを引き立てる美しいカラーと刻印。控えめなのに優雅で華やいだ雰囲気。
ノアールの内生地はノーブルなグリーン、ガーネットはワインレッドを合わせました。開けるたびに気持ちが高まる、美しい仕上がり。どちらも洗練された色合わせで、大人の余裕がただよいます。
開けた瞬間もハッとするほどドラマチック! 使うしぐさも、自然とエレガントになりそうです。
ずっと愛されてきたものを、今の気分や使い方にフィットさせることで、また新しいお財布が生まれました。日本職人プロジェクトのモノづくりは、人に寄り添うモノづくり。だから、時代の流れや生活スタイルの変化に合わせて、しなやかに変化していきたいと考えています。
使いやすさを考えて、折り財布が15年目のアレンジモデル
続いて、もうひとつお財布のお話を。こちらも、日本職人プロジェクトで長く愛されている定番のお財布を、ひそかに、でも大幅にアレンジしたものです。
がま口と折り財布が一体化したこのお財布は、財布職人さんが昔から使っている抜き金型を定番化し、長年にわたって使い続けてきたもの。色を変え、素材を変え、さまざまなモデルを誕生させてきました。手にしっくりと収まるサイズで、小銭入れは大きく開くがま口で使いやすく、お札やカードもたっぷり入る人気モデル。どこにもアレンジする要素はありません。
一方ががま口、もう一方が折り財布になった定番のお財布。これまで数々のモデルがデビュー。
でも以前から気になっていたのが、新モデルを発売する前の社内確認の時にいつも「あれ?お札入れ、逆さまではないですか?」と言うコメントが出ること。10人いれば5人ぐらい、そのコメントを口にします。山猫も同様に感じていたのですが、メーカーさんや職人さんは「山猫さん、これが昔から主流とされる開け方の向きなんです。百貨店などで扱っている折り財布もこうですよ」とおっしゃいますし、お店に見に行っても確かに同じ仕様。使い始めるとすぐ慣れるので別に困ることもなく、そういうものかと納得していました。
ただ、キャッシュレス化などでお財布の使い方も変化する中、本当にこのままでいいのかなあと言う思いが頭をもたげてきました。そこで思い切って、鞄デザイナーである小林さんに相談することに。ここまでの経緯や山猫の思いをお伝えして、お札入れの向きを逆にした試作品を作ってもらいました。
その試作品を使ってみると、がま口からお札入れを開くアクションが驚くほどスムーズ!他の人にも試してもらったところ、「こっちの方がしっくりくる」と言う声をたくさんいただき、思い切って仕様を変えることを決めました。(現在発売中の折り財布モデルが使いにくい、というわけではありません。このアレンジモデルの方がカードをよりスムーズに取り出しやすくなったモデルと言えます)
少しの違いですが、前より小銭を出す動作よりもカードを出す動作に重点を置いたアレンジにしています。
一見したところ変化はありませんが、金型から一新した新しいお財布。この使い心地をたくさんの人に感じていただきたくて、ベーシックなブラックと、大人気のレトログリーンの2色を選びました。
ブラックは、ゴールドの金具を合わせて華やかに。ツヤ感のある黒色のレザーと、金色の金具は相性抜群。洗練された大人っぽい雰囲気がただよいます。
シックなのに華やかな黒×ゴールドに、落ち着いたオレンジブラウンの内生地をコーディネート。年齢や性別に関係なく使えます。
シックなのに映えると人気のレトログリーンは、アンティーク風のメッキ加工をした金具をコーディネート。光沢をおさえたシャビーな質感が、深みのある色合いを引き立てます。
深みと落ち着きのあるレトログリーンは人気カラー。金具や内生地もレトロシックなテイストで統一。
抜き金型を作り直すなど職人さんにはお手間をおかけしてしまいますが、使いやすさを最優先に、アレンジモデルの製作に踏み切りました。職人さんたちの生産背景や市場の慣習も大切ですが、やっぱり使う人のことを第一に考えたモノづくりが一番大切だな、と実感。日本職人プロジェクトにとっても、記念すべき財布になりました。
ちょうどいいサイズで、ダレスバッグを“ふだん使い”に
最後は、レトロな雰囲気が人気のダレスバッグ。日本職人プロジェクトにとって特別なこの鞄も、今回新しいチャレンジをしています。
日本職人プロジェクトのプロダクトは、山猫の父が昔使っていたダレスバッグをイメージソースに、本革を使って再現した初代ダレスバッグが第一号。昔のお医者さんの鞄のようなレトロ感と、本革の素材感は相性がよく、初代モデルは大好評を博します。たくさんの方に愛されたおかげで、日本のモノづくりを未来へつなぐこのプロジェクトがスタートしました。
そして気が付けば、初代モデルの誕生から早17年。あらためて、「“今”欲しいダレスバッグってなんだろう?」と、山猫は自分自身に問い直しました。過去のダレスバッグをあれこれ振り返るなかでピンときたのが、プランナーYUDAI君と鞄デザイナーの小林さんが作ってくれた、ファブリックを使ったダレスバッグでした。
初代モデルは父の仕事鞄をイメージソースに作ったので、仕事用のアイテムや一泊程度の荷物が入るサイズ。それをYUDAI君と小林さんは、デイリーに使いやすい、ひとまわり小さなサイズで作っていました。それを思い出し、最近はキャッシュレス化などでお財布も小さくなっていますから、今の時代には小ぶりサイズがいいのでは?と考えました。
そこで、YUDAI君&小林さんバージョンのダレスバッグを参考に、「ふだん使いのダレス」をテーマに企画をスタート。まずサイズは、移動のときに邪魔にならないかを検討しました。歩いているときにかさばらないか、電車に座ったときに膝の上におさまるか、自転車の前かごに入れられるかなど、日常の生活動作から考えて設定。気軽にふだん使いしてもらえるように、持ち手の長さやショルダーベルトの細さも調整し、ダレスバッグの口金や留め具もより気軽に使えるように見直しました。
開け閉めのしやすさ、出し入れのしやすさなど、日常で使うことを考えた仕様に。見た目以上に、使い心地が進化しています。
ダレスバッグの本格的な仕様は生かしつつ、今の生活に使いやすいようバージョンアップ。お出かけの必需品+好きなものを入れて、ふだんの暮らしに馴染む仕様になりました。
この新しいダレスバッグには、山猫の生活スタイルも反映しています。例えば、携帯用ゲーム機を充電器ごと入れたり、少し大きめのお弁当と水筒を入れたり、お気に入りの本を何冊か入れたり……と、山猫自身が「入れたい、持っていきたい」と思うものが入るサイズにしています。
特別な日だけでなく、なんでもない日に使ってほしいダレスバッグ。必需品と好きなもの、どちらも入る余裕のある容量だから、読みたい本、カメラ、スケッチブックなど、出先で楽しみたいものを何か入れておくのがおすすめです。
人の物語に寄り添いながら、変化していくモノづくり
今回の3つのアイテムは、定番アイテムを小林さんと一緒にブラッシュアップしたもの。長く続けているプロジェクトだからこそ、時代の変化や人の暮らしに寄り添っていきたいと思います。
常識や慣習にとらわれない日本職人プロジェクトのモノづくりに、一緒に挑戦してくれるデザイナーさんの存在は、本当に頼りになります。
定番だけど、ちょっと新しい。今の時代や暮らし、気分にぴったりのアイテムで、秋からモノづくりの毎日を楽しんでください。
次回は、プランナーMOEの美学が詰まったバッグ&ボックスをご紹介。いつも絶妙に「欲しい!」をくすぐるMOEのアイテムは、この秋も名品ぞろいです。乞うご期待!
財布職人と作った 職人本革のスリムギャルソン財布〈ガーネット〉[本革 財布:日本製]
¥21,780(税込み)
財布職人と作った 職人本革のスリムギャルソン財布〈ノアール〉[本革 財布:日本製]
¥21,780(税込み)
プランナー山猫と財布職人が作った 職人本革のがま口付き折り財布〈レトログリーン〉[本革 財布:日本製]
¥20,680(税込み)
プランナー山猫と財布職人が作った 職人本革のがま口付き折り財布〈ブラック〉[本革 財布:日本製]
¥20,680(税込み)
鞄デザイナーとプランナー山猫が作った 職人本革のミドルダレス鞄〈ブラウン〉[本革 鞄:日本製]
¥39,600(税込み)
日本のモノづくりを通してたくさんの素敵な物語を伝えるために続けてきた「日本職人プロジェクト」。2004年のスタート以来、様々な魅力的な方の想いと共に「物」語るアイテムを誕生させてきました。
プロジェクトリーダー 山猫