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時計ひとつにつき、ひとつの物語
こんにちは、日本職人プロジェクトのリーダー山猫です。
日本のモノづくりを通して、たくさんの素敵な物語を伝えるために続けてきた「日本職人プロジェクト」。誰かの「好き」「欲しい」をカタチにした、ここにしかないプロダクトを生み出しています。
2022年夏シーズンのテーマは「Enchanted jewel color -魅惑の宝石色- 」。美しさを詰め込んだ、持つ人を輝かせる魅惑の夏アイテムをつくりました。どれもみんな、いろいろな人の色とりどりの物語から生まれたもの。その中から、この夏を彩るとっておきを見つけてください。
今回ピックアップするのは、金沢にある時計工房が手掛けた4つの時計。時計工房のアートディレクター・牛島孝さんとともに作りました。ひとつひとつの誕生秘話を、ご紹介します。
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いつも無茶ぶり?に応えてくれる牛島さん
時計工房のアートディレクターであり、日本画家としても活躍する牛島さん。これまでも牛島さんの感性と知識、技術によって、いくつも素敵な時計が生まれてきました。いつも日本職人プロジェクトメンバーの想いを受け止めてくださって、想像以上のご提案をしてくださいます。「コロナ禍で自由に遠出もできない今、新緑のような清々しさを感じられる時計」や、「大好きなコーヒーを飲みながら、ほっとリラックスしているような気分になれる時計」など、無茶ぶり?とも言えるオーダーにも、「やってみましょう」と答えてくださる頼もしさ。そのおかげで、物語を閉じ込めた素敵な時計が生まれています。
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金沢の工房を訪ねた時に、牛島さんが工房の中を案内してくださったことがありました。たくさんある素材や道具はもちろん、機械の操作や職人さんの技術まで、すべて把握しておられることにびっくり。その中から最適なものを組み合わせて、ひとつの時計を作ってくださっているんだなと実感しました。
牛島さんがいる工房では、時計はすべて手作り。一点ずつ仕上げているからこそ、世界観に合わせた時計を作ることができます。文字盤の色を付けるのも、数字を刻むのも、針を取り付けるのもすべて手作業。まったく同じものはふたつと存在しません。だからお届けするのは、世界にひとつの時計です。
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この夏に向けて、牛島さんと一緒に企画した時計は4つ。今回も日本職人プロジェクトメンバーが金沢の工房を訪ね、あれこれたくさんお話する中から生まれました。それぞれの文字盤には、特別な時間への想いが込められています。
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静謐さに満ちた、北欧の夜の森
ひとつめは、北欧の夜の森をイメージした時計。闇に包まれた深い森の色を、溜塗(ためぬり)という技法を使い、濃淡のある青で表現しています。
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溜塗(ためぬり)は平筆に絵の具を含ませ、さっとひと塗りで仕上げるのが特徴。やり直しが効かない、繊細な作業です。絵の具や水の量、乾く時間などで変化が生じるため、仕上がりの表情もさまざま。それぞれの描き出す青のグラデーションが、森の深さや夜の時間など想像力をかきたてます。
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濃淡が描き出すあわいで、北欧の森を表現。小さな文字盤に、奥深い世界が描かれる瞬間。
針も少し装飾のあるデザインで、ほんのりファンタジックな雰囲気に。どこか絵本のような趣きも感じられます。レザーベルトは、深みのある黒をセレクト。こちらも静謐な夜をイメージしています。
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文字盤の印象に合わせて、フレームや文字盤、ベルトをセレクト。時計全体でトータルに世界観を表現。
しんと冴えた北欧の夜を表現した時計は、キリリと美しい存在感。暑い夏も、時計を見ると気分がシャキッとしそうです。
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夜の気配を感じる、都会のマジックアワー
ふたつめは、夕暮れのひととき、魔法のように美しいマジックアワーをイメージ。あわただしく過ぎた一日の終わり、黄昏時の空を眺めてふと切なくなるような、そんな瞬間を切り取りました。
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透明感のある溜塗(ためぬり)の技法を使うことで、太陽の名残をどこかに感じさせる夜の始まりの色を表現。下地の純銀メッキがほのかに透けて、よりトワイライトな雰囲気が高まります。実はこのマジックアワーの空の色を表現するのは予想外に難しく、試行錯誤の連続。ピンク~紫に変わる色を模索しながら、何度も「もう少し太陽が沈んだ後の雰囲気に」「夜が始まる直前の感じ」など、雰囲気を伝えながら細かく色味を調整しました。
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「何色」と表現しきれないマジックアワーの空の色を求めて試行錯誤。日の名残りを残しながら暮れていく色味を追及しました。
フレームや針は、スタイリッシュなシルバー色をセレクト。夕闇に浮かぶ、都会の街並みのシャープなシルエットをイメージしています。レザーベルトも、クールな雰囲気のブルーグレーを合わせました。
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シルバーのフレームや針は、都会の街並みをイメージ。仕事の手をとめて、ふと窓の外を見た瞬間を表現しています。
忙しかった一日の終わり、ふと空を見上げてほっとひと息つく。そんな時間を閉じ込めました。
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夏の夜はこれから!夕暮れのルビー色
3つめは、ルビー色の文字盤が印象的な時計です。実は牛島さんによると、赤系の色は時計の文字盤にはあまり使われないとのこと。でも、夏の太陽の魅力を最も強く感じられる夕暮れの瞬間を表現したくて、この色にチャレンジしました。
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真っ赤な太陽が西の空に沈んでいく、その景色を小さな文字盤に表現。溜塗(ためぬり)の透明感と濃淡のグラデーションで、えも言われぬ夕暮れの瞬間を描き出しました。夏の夕暮れは、花火やビアガーデンなど、これからまだまだ楽しいことが始まる時間。真っ赤な文字盤は、そのわくわく感をぐっと高めてくれます。
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真っ赤な太陽が沈みゆく瞬間。夏の太陽が最も美しく輝くその瞬間を切り取るように、文字盤に絵の具をのせていきます。
赤い文字盤に合わせて、針やフレームはゴールド色に。赤色×金色の組み合わせは、いやおうなしにテンションが上がります。レザーベルトは、落ち着いたブラウン色。あえて肌なじみの良い上品な色味にすることで、合わせやすさを高めました。
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まだ暑さが残る夏の宵、これから始まる楽しい時間をゴールドで表現。ベルトはあえてシックな色を合わせることで、全体を上品な雰囲気に。
夏の夕暮れというスペシャルな時間を、いつでも何度でも味わえてしまう時計。透明感のある美しい赤色を見るたびに、ハッピーな気持ちがわいてきます。
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伝統の技法で作られた、日本画のような時計
4つめは、これまでとは別の技法を用いた時計。「岩絵具」という日本画に使われる、伝統的な絵の具を使っているのが特徴です。
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岩絵具は、鉱石を砕いて作られた粒子状の絵の具。飛鳥時代に大陸から日本に伝わりました。以来約1400年、その原料や製造方法は変わることなく、現在でも日本画で用いられています。今回は、天然石のアマゾナイトを砕いて作った「白翠末(はくすいまつ) 」と呼ばれる岩絵具を使用。アマゾナイトは和名を「天河石」といい、大河の流れのような淡い青緑色が特徴です。この岩絵の具を膠(にかわ)と混ぜ、和紙に塗り重ねて文字盤を作ります。膠は日本画の制作において、紙と絵の具を接着するのに欠かせない素材。伝統の日本画の技法で制作されたこの文字盤は、まさに「小さな日本画」とも言えそうです。
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岩絵具を膠でとき、和紙に幾重にも塗り重ねる作業は、まさに日本画の制作と同じ。牛島さんの技が冴え渡ります。
時計の指標(インデックス)は、純金箔を使用。ひとつずつ丁寧に、手作業で作られています。レザーベルトは凛と潔く、上品な青緑色に映える純白をセレクト。和の趣きをただよわせつつ、どこかモダンな雰囲気も感じられます。浴衣や着物など、和装に合わせても素敵です。
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繊細かつ深遠な河の色は、まさに天然の天河石ならでは。無駄を排したミニマムな美しさも、和の趣きを感じさせます。
岩絵具、膠、和紙。日本画の技法を余すところなく生かした時計は、日本画家でもある牛島さんでなければできない逸品。その繊細な青緑色は、見るたび心を静かに落ち着かせてくれます。未来への希望をもたらすパワーストーンでもあるアマゾナイトを、さりげなく身に着けられるのも魅力です。
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小さな文字盤の中に広がる、無限の世界
今回も牛島さんと一緒に、物語を閉じ込めた4つの時計を作りました。時計としての機能だけでなく、世界観を表現することを大切にしています。
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時間はどんどん進み、日々の物語は続いていく。あわただしい毎日のなかで、少し立ち止まったり、ときめいたり、ひと息ついたり、そんな瞬間が訪れる時計になればいいなと思います。時計を見たときにどんな気分になりたいか、そんな観点で選んでみるのも素敵です。ぜひ、この夏を、そしてこれからの毎日を一緒に過ごす時計を、見つけてください。
次回は、夏こそ楽しみたい真珠のアクセサリーをご紹介。パールをこよなく愛する山猫とMOEがとことんこだわった、神戸老舗真珠メーカースペシャルな5アイテムが登場します!お楽しみに。
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金沢の時計職人が手掛けた 北欧の夜の森に見惚れる腕時計〈ブラック〉
¥20,900(税込み)
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金沢の時計職人が手掛けた マジックアワーの空に見惚れる腕時計〈ブルーグレー〉
¥19,250(税込み)
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金沢の時計職人が手掛けた ルビー色の夕焼けに見惚れる腕時計〈ブラウン〉
¥20,900(税込み)
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金沢の時計職人が手掛けた 天河の水浅葱色に見惚れる腕時計〈ホワイト〉
¥26,400(税込み)
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日本のモノづくりを通してたくさんの素敵な物語を伝えるために続けてきた「日本職人プロジェクト」。2004年のスタート以来、様々な魅力的な方の想いと共に「物」語るアイテムを誕生させてきました。
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プロジェクトリーダー 山猫
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