山猫が、どうしても作りたかったもの
こんにちは、日本職人プロジェクトのリーダー山猫です。
日本のモノづくりを通して、たくさんの素敵な物語を伝えるために続けてきた「日本職人プロジェクト」。誰かの「好き」「欲しい」をカタチにした、ここにしかないプロダクトを生み出しています。
次の春シーズンに向けたテーマは、「寄り添う-cuddle」。
いろいろな人に会って、話して、それぞれの物語に寄り添って、モノづくりをしました。
その中からぜひ、春からの新しい生活を彩る、少しわくわくするもの選びを楽しんでください。
今回は私、山猫がどうしても作りたかった鞄を2つご紹介します。それぞれに思い出も思い入れもある、特別なアイテム。誕生のきっかけや裏話など、たっぷりお話します。
母の願いは、気に入ったものをずっと長く使うこと
日本職人プロジェクトの始まりは、今から17年前。山猫の父が昔ずっと欲しがっていた、本革遣いの帆布のダレスバッグを職人さんと一緒に作ったのが最初でした。その時に作ったダレスバッグは、想像を超えて大ヒット。日本製の鞄を作るひとりの職人さんとも繋がりができたおかげで、今日まで日本職人プロジェクトは続いています。
これまでたくさんの人の想いに寄り添いながら色々な鞄を生み出してきましたが、山猫にはもう1人、願いを叶えてあげたい人がいました。それは、山猫の母。どうしても母の理想の鞄をカタチにしたいと、数年前から企画をあたためていました。
母は手作りが好きな人で、昔は子ども3人と父の服も作っていました。「裁縫は苦手」と言いつつも丁寧に作られた服は、今でも着られる物があったり。父のために仕立てた柄物の開襟シャツは、私が譲り受けて愛用しています。(父が小笠原諸島に単身赴任の時に作ったもので、実家にあったものを欲しがると「まだ着られるならどうぞ」といただきました)
物が少ない時代を経験している母は、たくさん持つのではなく、気に入ったひとつを長く大切に使いたいと言います。「若い頃に好きになったものを、年を重ねても持ち続けられたら……」。そんな母の願いを叶えたいと鞄メーカーさんに話したところ、「ぜひやりましょう!」とうれしい返事をいただいて、ついに企画がスタートしました。
メーカーさんにデザインを依頼して、素材も決めて、待つこと1ヵ月半。あがってきたサンプルは、、、なんだかイメージと違うものでした。うーんと想いながら日本職人プロジェクトメンバーのNISHIYANに見せたところ、「山猫さん、、もっと凝ってもいいんじゃないですかね。せっかくのダレスの新作ですし。まだ発売できる仕上りじゃないかもですよ」とコメントしてくれました。
そこから奮起した山猫とメーカーさんと職人さん。山猫のイメージ通りのダレス口金パーツをメーカーさんが手配してくれて、全体のサイズ感や革の素材感も変更して……ついに完成。再度NISHIYANに見せると「山猫さん、、これ名作の予感しますね」と賞賛のコメント。ちょうどその時期に制作していたカタログに掲載することができ、念願かなって昨年デビューさせることができました。
満を持して世に出した母の理想のダレスバッグも、おかげさまで大反響。母に伝えると「よかったね~。年をとるといろいろ持つのが大変になるから、これだと重すぎないし、出かけたときにも中を探しやすいので本当にいい感じ」と言ってもらえました。
そしてこのたび、初代と同じノアール色と、新たにオリーブ色も追加して、再登場することになりました!
たくさんより、気に入ったものを「ひとつ」だけ
この鞄が目指したのは、「これひとつあれば、ほかはいらないぐらいの鞄」。さまざまな場所に持って行くことができて、しかも年齢や流行に関係なく使い続けられる、普遍的な鞄を作ろうと考えました。(実際のところ母は「結局いつもこの鞄になってしまう」と言って、ひとつの鞄をずっと使っていました。その鞄も、制作する際のヒントにしています)
デザインは、父の理想をかなえた日本職人プロジェクトの初代モデルと同じく、ダレスバッグに。時代に関係なく愛されるレトロかわいいフォルムは、長く使うための鞄にぴったりです。素材はもちろん、上質のリアルレザー。大人に似合う高級感があり、使い込むほどに愛着が増すので、じっくり付き合う楽しみも味わえます。
日本職人プロジェクトにとって、ダレスバッグは特別な鞄。だから、母の理想もダレスバッグに託しました。
そしてこだわったのがサイズ!どんな着こなしにもバランスよく持てるよう、小ぶりにしています(ちょうどハンドバッグぐらいのサイズ)。手持ちでちょこんと持つものかわいいし、斜め掛けでもおさまりよく持てます。細めのショルダーは取り外し可能なので、服装に合わせてアレンジを。
これまでにダレスバッグに比べて、かなりかわいい小さめサイズ。上品に持てるハンドバッグサイズです。ショルダーベルトを細めのオールレザーにしたのもこだわりポイント。
しかも、ダレスは底マチが広いから、収納力もたっぷり。お財布やスマートフォンなどお出かけの必需品を入れても、まだ充分に余裕があります。
底もサイドもしっかり広めのまち幅。細部まで丁寧な職人技で、360度どこから見ても美しい仕上がり。
上部が大きく開くから、中身が見やすく出し入れもスムーズです。「鞄の中のものを、ごそごそ探さなくてもいいように」という母の要望にもばっちり応えられます。お財布なしで出かけられるように、内側には13個のカードポケットと2つの内ポケットを配置。お財布を取り出してお会計する手間がなく、バッグ内部も広々使えます。
内生地には、チェック柄のコートの裏地をあしらいました。このチェックは、母が好きだったコートとスカートの柄をイメージしたもの。開けたときに中がおしゃれだと、うれしい気持ちになりますよね。
お財布代わりに使えるポケットも、こだわりの部分。お出かけはこれひとつ!と決めておけば、忘れものもなくなりそう。
カラーは、初代モデルと同じノアール色と、今回新たに登場するおしゃれ感たっぷりのオリーブ色。それぞれ雰囲気は違いますが、どちらも合わせるものを選ばない、万能カラーです。この2色に決めるまでに、色へのこだわりが強いNISHIYANにいろいろ相談。実はブラウン色も候補にあったのですが、春の季節から楽しんでいただけるのはオリーブ色かなとなりました。
ほのかな光沢と風合いが魅力の本革に、金具の控えめな輝きが映えるノアール色。素材の上質感とつくりの良さで、小ぶりながらも風格のあるたたずまいです。
柄ワンピースもキリリと引き締めるノアール色。かわいさとかっこよさのバランスがちょうどいい感じ。
とても美しい色調のNEWカラー・オリーブ色は、シックでモードな雰囲気。きちんと感がありながら、カジュアルな装いにも似合う抜け感が魅力です。
ニュアンスたっぷりのおしゃれカラー。主張しすぎずどんな装いにもなじみ、こなれ感を演出してくれます。
この鞄がひとつあれば、日常のお買い物やお出かけはもちろん、食事会や観劇、コンサートなど、ちょっとおめかしして出かける日も大丈夫。必需品や貴重品を肌身離さず持てるから、旅行もぴったりです。
どんな装いにも合わせやすくて、どんな場所にも行けて、どんな年齢の自分にも似合う。そのことを、とことん追求して作りました。おばあちゃんになるまで、おばあちゃんになっても、いろんなところに出かけて、一緒にたくさん思い出を刻んでください。
運命の出会いで火がついた、究極ダレスへの想い
今回はさらにもうひとつ! なんと、山猫自身が欲しかったダレスバッグも作りました。父の理想のダレスバッグを作るところから始まり、この17年間でいろいろな人の想いに寄り添った鞄を作り続けてきましたが、ついに自分の理想をカタチにする日がやってきました。
きっかけになったのは、とあるホースレザーとの出会い。兵庫県たつの市にある馬革なめし専門の革工房にお邪魔した際に、一枚の革に目が留まりました。いろいろな革を見てきた山猫の中で「これは!?」とひらめくものがあり、すぐ工房の角谷賢作さんにお話を聞くことに。すると、ホースレザーはやわらかくキズがつきやすい反面、油分を多くふくんでいるので、キズの箇所をこすると少しずつ目立ちにくくなるとのこと。山猫が目にした革は、そのホースレザーらしい特徴が顕著に出ているということでした。やわらかい風合いに個体ごとのキズやムラ、油分によって使うほどに変化していく表情など、これこそ革の魅力がぎゅっと詰まった革だと感じ、山猫の究極のダレスバッグを作るには「この馬革しかない!」と確信。ついに、自分の理想をかなえるダレスバッグ作りの企画を立ち上げました。
革の質感を生かした、修理しやすいシンプル仕立て
とにかく革の質感に惚れたので、馬革の魅力をとことん生かすことを考えました。内側も裏地をあえて貼らず、床面(革の裏側)の風合いそのままにしています。裏地を貼らない理由はもうひとつ。裏地がない方が、もしも鞄が故障した際に修理しやすいので、長く使えるというメリットがあります。これは自分にとって究極のダレスバッグだから、「おじいさんになるまで使いたい」と思い、修理のしやすいシンプルな仕立てにしました。実は裏地をなくすことで、わざわざ現在使用しているダレスバッグの革の抜き金型を作り直すことになったのですが、、、鞄デザイナーさんや職人さんにわがままを言ってお願いさせてもらいました。(昔の鞄にはよくあるタイプだったのですが、近年は裏地を貼ったものが一般的。山猫は自分で使うなら、あえてシンプルなつくりの方が好みなのです)
いつもは底びょう金具を付けるのですが、この鞄にはあえて付けていません。革もやわらかいですし、床に置くシチュエーションがどうしても想像できず、、、。今回はあえて無しにしました。実際山猫は、家のフローリングや木の机の上にびょう付き鞄を置いて傷をつけたことがあってから、「このびょう、、ないほうが私は好きかも」と思っていました。また愛しの鞄なので、抱えるように持ったときに、最高にさわり心地をよくしたいと思ったのも理由です。
底まちはたっぷり広め。ぎゅっと抱えたときのさわり心地を重視して、底びょうを付けない仕様にしました。
デザインは、「これぞダレス!」とも言うべき王道シンプル。余計な装飾を一切そぎ落としたことで、革の断面のオレンジがよく映えます。華美ではないけど主張のある、そんな存在感たっぷりの鞄になりました。
ブラウンの革に、オレンジの断面がアクセント。素材の上質感やつくりの良さが見える、大人の贅沢仕様です。
がばっと上部が大きく開くダレス口の使いやすさは、これまでのダレスバッグで実証済み。1泊ぐらいの旅行にも持っていける、たっぷりな収納力も魅力です。底まちが広く、お弁当箱も安定して入るので、ふだんのお仕事使いにも。ショルダーベルトで斜め掛けにすれば、両手も自由に使えます。
底もサイドもまちが広いから、どっさりだっぷり入ります。ダレスの口はボタンで留めるから、中身が見えず安心。
革のやわらかい風合いのおかげで、上品な雰囲気に。ブラウンもやさしい色味だから、どんなスタイルとも好相性。大きすぎないから、身長に関わらず、手持ちでも肩掛けでもバランスよく持てます。
手持ちで品よく、斜め掛けでカジュアルに。ショルダーベルトは取り外し可能です。
馬革でたどり着いた、山猫の理想のダレス。これから人生を一緒に歩んでいくパートナーとして仕上げたのでいささかオーソドックスですが、使い続けるうちにどんどん味が出てくるのかなと思います。ぜひ、馬革の手ざわりや美しい表情を楽しんでください。山猫はじいちゃんになるまで使いたいし、これからたくさん旅をして、その旅の途中で撮った写真にはこの鞄が写っていて欲しいと思っています。
年齢も流行も超えて、何にでも合う、どこでも行ける
今回は山猫のリクエストで、おばあちゃんになっても愛せる鞄と、おじいちゃんになっても使い続けたい鞄を作りました。好きなものが手もとにあって、一緒に時を刻んでいける。そんな楽しみを、皆さんにもお届けできたらうれしいです。これから年を重ねていくのが楽しみになるし、未来の自分がこの鞄とどこに出かけているのか、どんな暮らしをしているのか、想像するとワクワクします。
次回は、人気プランナーMOEが手掛けた、大人の「欲しい」を絶妙にくすぐる鞄をご紹介。「そう来たか!!!」とテンションが上がるラインナップに、ご期待ください。
お婆ちゃんになっても愛用したい 職人本革仕上げのレトロダレス鞄〈ノアール〉
¥29,700(税込み)
お婆ちゃんになっても愛用したい 職人本革仕上げのレトロダレス鞄〈オリーブ〉
¥29,700(税込み)
プランナー山猫が欲しかった 職人本革のホースレザーダレスバッグ〈クラシックブラウン〉
¥53,680(税込み)
日本のモノづくりを通してたくさんの素敵な物語を伝えるために続けてきた「日本職人プロジェクト」。2004年のスタート以来、様々な魅力的な方の想いと共に「物」語るアイテムを誕生させてきました。
プロジェクトリーダー 山猫