プロダクトデザイナーが欲しい鞄って ……?
こんにちは、日本職人プロジェクトリーダーの山猫です。
今回紹介するのは、僕の友人・福井さんと作ったお仕事バッグ。初登場からかれこれ8年になる、ロングセラーアイテムです。
福井さんはプロダクトデザイナー。セレクトショップの腕時計や、テーブルウェアのデザインを手掛けています。山猫と知り合ったのは20年ほど前。会うたびいつも、音楽や海外のモノづくりの話に花が咲きました。
福井さんはバンドでウッドベースを弾いていて(もちろんエレキも)、洋楽にもすごく詳しい人。年代ごとに変わる「かっこいい」ものをしっかり把握したうえで、自分のデザインやプロダクトに落とし込んでいます。お互い時計が好きなので、時計のことになると話もお酒もすすみ(笑)、気がつくと深夜になることもありました。
福井さんのデザインしたものは、手になじみ、生活にとけこむように使いやすいのが特徴。普遍的で、愛されるものを生み出す人です。山猫自身、福井さんが手がけた腕時計やテーブルウェアを10年以上使っていますが、どれも使い心地が「ちょうどいい」のです。やりすぎず、でも物足りなくない「ちょうどよさ」は、福井さんが試行錯誤してたどり着いた最終形だからこそ。
ガラスのコップなんて、毎日使う上でのベストな容量に加え、持ちやすさまで考えられていて、これ以上のコップにはもう出会えないのでは?と思うくらい。
そんな福井さんがほしい鞄って、どんなものだろう?ふとそう思って、「福井さんの理想の鞄、一緒に作ってみませんか?」と提案してみました。多分、9年前のことです。それがきっかけで、今ではプロジェクトの定番となった鞄が誕生しました。
わがままリクエスト、てんこもり
この鞄を作るうえで、いちばん大切にしたのは、福井さんの想いをカタチにすること。福井さんが欲しい!と思うものを作るのだから、そこを最優先しました。
まずは、「たくさん入るのがいい」というリクエストにおこたえして、ざくざく入る大容量に。仕事用のパソコンやA3サイズの資料を入れても余裕のある、ビッグなトート形になりました。
もともと、海外メーカーのキャンバストートバッグを好んで使っていた福井さん。その鞄では満足できなかった部分を材料に、新しい鞄をデザインしてくれました。
福井さんの企画書はサイズや仕様まで細かく指定されていて、試作品を作るのもとてもスムーズでした。その結果、2回目の試作品でなんと本番仕様が決定! 通常新しいモデルを作るときは3~4回ほど試作を重ねるのですが……。いろいろなことを事前に計算している部分も、福井さんのすごいところ。
完成した鞄は一見するとシンプルなトートバッグ。でもこれひとつで、出張も大丈夫。レザーできちんと感があるのに、ほどよくラフな雰囲気もあって、本当にオンとオフの境目なく使えます。肩にかけて小脇に抱えておさまる、絶妙のバランスもさすが。きちんとしたスタイルにもカジュアルにも似合いますし、年齢も性別も問いません。この普遍的なデザインは、福井さんならではだと思います。
福井さんは実際に、試作品の鞄を1ヵ月ほど使用。革製の鞄をしっかり使い込んで、細かくチェックして、「OK!」の連絡をくれました。(その間ずっと、こちらは内心ドキドキでした)
ビッグな分、気遣いは細やかに
表はとことんシンプルですが、見えない部分に、細やかな気遣いがいろいろ。パスケースやスマートフォンが入るポケットは、見た目を邪魔しないように、サイドについているのがポイントです。手を入れる部分を大きくしたり、ポケットを深くしたり、初代からマイナーチェンジを繰り返して、使いやすさもアップしています。
内側のポケットは、キーリング付き。大容量でも、鍵が迷子になりません。ファスナーポケットだから、貴重品も安心。
持ち手の下がループになっているのも、福井さんのアイデア。くるくるっと丸めた新聞や薄めの雑誌、折り畳み傘をさっとはさむのに便利です。
底まちはたっぷり広め。荷物を入れると自立します。こういうちょっとした扱いやすさも、うれしいですよね。
「荷物が多くてもかっこよく持てるように作っているから、ためらわずどさっと詰め込んで」と福井さん。仕事はもちろん、遊びや旅行にもぜひ連れて行ってください。
2021年モデルは、特注革でスペシャルに!
今回新たに登場する2021年モデルは、特注の革を使用したスペシャルバージョン。使いやすい機能や仕様はそのまま、これまでより、ちょっとしっかり目の革をセレクトしました。
革の表面に顔料コートをほどこし、厚めの透明コートで仕上げた美しい光沢が魅力です。
使い始めは硬くて使いにくいと感じるかもしれませんが、1ヵ月ほど毎日使ううちに、次第にやわらかくなっていくので、ぜひバンバン使ってほしいです。山猫もスタッフのNISHIYAN君も、最初は「この鞄、発売できる??」と不安がありましたが、使い込んでなじんだ後は、「これ、最高の鞄ですよね!」と思うようになりました。
実際に一年ほど使い込んだものがあるので、どんなふうに変化するのか、チェックしてみてくださいね。
カラーは、ノアールとボルドーの2色。光沢感が黒の美しさを際立たせて、すごくかっこいい仕上がりです。ボルドーは、シリーズ初のカラー。深みのあるシックな色味は、上品な雰囲気が魅力です。
じっくり付き合って、育てる楽しみ
福井さんのモノづくりは、「機能的で素敵なものを、買いやすい価格でつくる」がポリシー。一緒に作った鞄も、そんな想いがあふれるものになっています。
ふとした提案がきっかけで完成したお仕事鞄ですが、福井さんのこだわりと詰め込んだマニアックな作りがたくさんの方に支持されて、長年にわたって愛され続けるアイテムになりました。僕のまわりでも、初代をずっと愛用してくれている人がいます。この鞄は本当に使い込むほど表情が出るので、ぜひ、じっくり付き合って、自分だけの味に育ててくださいね。
次回は、兵庫県・長田の靴職人さん達と一緒につくった、初登場の「理想の本革ブーツ」をご紹介する予定です。どうぞお楽しみに!
※日本職人プロジェクト「特別号STORIES」の商品は、ご注文いただいてからひとつずつ仕立ててお届けします。
※「特別号STORIES」のお申し込み受け付けは終了しました。
プロダクトDと作った職人本革お仕事鞄〈ボルドー〉
1個 ¥40,700(税込み)
日本のモノづくりを通してたくさんの素敵な物語を伝えるために続けてきた「日本職人プロジェクト」。2004年のスタート以来、様々な魅力的な方の想いと共に「物」語るアイテムを誕生させてきました。
プロジェクトリーダー 山猫