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「地方で暮らすこと、働くこと ~大変だけれどおもしろくて楽しい地方の仕事のリアルな話」

ITベンチャー企業代表・株式会社あわえ代表

吉田基晴さん

開催日
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プロフィール

1971年徳島県海部群美波町(旧日和佐町)生まれ。神戸市外国語大学卒業。株式会社ジャストシステム、ベンチャー企業勤務を経て2003年にサイファー・テック株式会社を設立。 2012年徳島県美波町にサテライトオフィス「美波Lab」を開設、2013年に本社を「美波Lab」に移転。 会社で稲作や養蜂に挑戦する「半X半IT(Xは個人の趣味)」など仕事と暮らしを両立するワークスタイルの実現を目指す。 また地方にオフィスを開設したことで、地域の課題が浮き彫りになり、それをビジネスの力で解決したいと思い、2013年6月に株式会社あわえを設立。自らの体験を活かし、行政や地域住民と共に企業・起業誘致や定住支援をはじめとした地域振興事業に取り組む。現在「半東京半過疎地」のライフスタイルを実践中。

※プロフィールは、ご講演当時のものです。

講演録 Performance record

第1部

吉田 基晴さんが神戸学校にお話されてる様子。

吉田基晴さん:
みなさま、よろしくお願いいたします。昨日、熊本のとある市町村さんで地方創生の講演をさせていただいていて、今朝まで熊本にいました。私は大学が神戸市外国語大学で6年、社会人になっても4年近くいたこともあったので、神戸には非常になじみがありますが、普段は行政とか公務員のみなさんの前で講演することが多くて、市民の方にお話しする機会がそうないので、何を話したらいいかなと考えながら今日やってまいりました。

 私はいま、地方創生とか地方活性化というところに仕事で携わらせていただいています。いま、どうでしょうか、神戸。徳島から見ると都会ですので、地方と言っていいのかどうなのか。みなさん、地方創生ということは言葉としてはご存知かとは思いますが、自分事だと思っている方、手を上げていただいてよろしいですか。ひとりかふたりか、でも、ほとんど地方創生は田舎のことのイメージと思うのが自然かと思います。

今日は田舎の過疎地のお話ですが、みなさんにはちょっとリアリティーがないかなと思いましたので、田舎で起こっていることや私たちが見ていることを通じて何か知っていただきたいというところで、社会学やビジネスの権威で有名なピーター・ドラッカーさんの言葉をここに引用させていただきました。「変化はコントロールできない。できるのは変化の先頭に立つことだけである」という言葉です。いま、私は地方や過疎地で日本の最先端のことが起こっていると思います。それはきっと数年後か10年後に神戸や都会のみなさんにも影響してくることかと思いますので、この変化の先頭のお話をさせていただこうと思っております。

徳島県海部郡美波町 地図

その変化の先頭の場所は、徳島県海部郡美波町という場所です。徳島県に足を運んだ方、挙手いただけると……。結構多いですね。やはり神戸と橋でつながっておりますし。すごくうれしいです。徳島の美波町は、位置的に四国の右下とかいわれる地域でございます。さすがに美波町まで行ったっていう方はいかがですか? いらっしゃるのですね。ありがとうございます。美波町は多少関西で有名なことがあるとしたら、ウミガメが産卵するとかですね。あと、四国八十八カ所巡りの薬王寺というお寺がございますので、お四国回りした人にとっては必ず通っている町かと思います。

複数の仕事をして複数の町に住む生活

自己紹介になります。吉田基晴と言いまして、いま、45歳です。大学時代、神戸でお世話になりました。学園都市という駅です。私は当時、徳島の田舎者でしたので神戸は憧れで、100万ドルの夜景が見られると思って神戸市外国語大学に入ったら、田んぼだらけで牛とかも近くにいて、ほとんど美波町と風景が変わらなかったのが最初の衝撃でした。ただ、本当に楽しい学生時代を神戸で過ごさせてもらいましたので、私にとっての神戸は第2、第3の故郷みたいなところで、今日も来るのを楽しみにしておりました。

私は現在、ITベンチャー、セキュリティー関係のサイファー・テックという会社を経営しております。もうひとつが、今日お呼びいただいたのはこちらの立場かと思いますが、株式会社あわえという、地域の課題解決にビジネスで取り組む会社も経営しております。最近の言葉になるかと思いますがマルチワーク、複数の仕事をひとりでやっています。新聞などを見ていると、最近副業OKの会社が出てきていますが、私は経営者なので副業OKという言い方もおかしいかもしれませんが、ひとりで複数の会社をやるというところと、あとは東京と美波町を行ったり来たりということで、二拠点居住、デュアルプレイスとかマルチプレイスみたいな表現もあろうかと思いますが、複数の町で仕事をするという生活をしております。

そんな私が今日、なぜ地方のお話でこの場に立たせていただくことになったのかということを時系列でまとめました。神戸市外国語大学を出てからずっとIT業界で生活していましたが、2003年に東京都内でサイファー・テックというセキュリティーの会社を仲間たちと起業することになりました。そして、その間の苦悩はこの後お話しさせていただきますが、10年近くたった2012年に美波町にサテライトオフィスを作りました。サテライトオフィスという言葉はまだそれほど一般的な言葉ではないと思いますが、都会や本社のある場所から離れたオフィスと簡単には理解してもらえればと思います。あまりにも田舎の暮らしや会社経営がすばらしかったので、もう翌年には東京から本社を移して、いまは東京がサテライトオフィスになっております。

いま、地方創生という国を挙げての政策の中で、東京に会社が集中しすぎているので本社も地方に移してほしいというのが国の希望です。ただ、私のサイファー・テックの本社移転は国が税制優遇などを定める前、少しフライング気味でぎりぎりアウトでした。前任の地方創生大臣の石破さんとご一緒する機会があったので、「何かいいことないですかね」と言ったら苦笑いされていました。少し早すぎたということです。

 早ければいいというものではないというのがあったと思いますが、いまは楽しく地方に本社を移してやらせていただいています。そして同じ年に、あわえという会社を設立していまに至ります。私事ですが、昨年の4月に東京生まれ東京育ちの妻と小学生の長女、長男を美波町に移住させ、いまは一家そろって美波町の住民です。

フェリシモ:
このタイミングでご家族を美波町に、というのは何か理由があったのですか。

吉田さん:
私は、もし男の子が生まれたら、小学生ぐらいからは田舎で育てたいという思いが強かったのです。私が田舎生まれなので、男の子に教えてやれることはカブトムシとか釣りとかそういうことしか実体験として教えられることがないので、男の子が生まれたら田舎に、と思っていました。ちょうど小学校1年のタイミングで妻にも理解してもらって、なんとか地方に移住できたという感じです。

本当に小さい田舎ですので都会から会社がやってくるというのは珍現象なのです。当時取り上げていただいた新聞記事ですが、左から「美波町にサテライトオフィスがやってきた」と。そして真ん中、「その会社が美波町に本社を移した」と。そして右ですね、なぜかカラーなのですが「その社長一家が移住してきた」と。こんなことが記事になり、私が有名というより、よほど田舎だなというのがこの辺でご理解いただけると思います。注目いただきたいのが、この赤丸のところ、拡大してみます。妻の年齢がばっちりと書かれているということで、東京生まれの妻にとってはこれがよほど衝撃だったみたいで、「徳島県民にとって私の年がいったい何の重要な情報なんだろう」と首をかしげておりましたが、田舎の洗礼ということで妻もいい思い出になったと思っております。簡単に自己紹介といままでの経緯ということでお話しさせていただきました。

限界集落が日本でいちばん多く、光ファイバーが日本でいちばん普及している県、徳島

結構手が上がったので足を運んでいただいた方も多いと思いますが、徳島のことをもう一回勉強してほしいということで、徳島の「日本一」を集めてリストにしてみました。いまは日本一ではないものもあるとは思いますが、少なくとも過去に日本一を取ったものを並べています。

たぶん「すだち日本一」くらいは有名かと思いますし、古くは高校野球で池田高校が何年も日本一になったこともありましたが、私が徳島県民として残念だと思うのが、日本でいちばん売れている阿波尾鶏という地鶏があります。でも、「地鶏を何個か挙げて」というと、たぶん出てこないのではないかと思います。名古屋コーチンとか比内地鶏とかありますが、ブランド的にまだまだかなと。

ハモもそうです。京都、関西の夏といえばハモ料理ですが60%くらいは徳島のハモだそうです。ではさぞかし徳島ではハモが食べられるのかと思うと、徳島ではあまり食べないということです。どうですかみなさん、徳島を奥ゆかしいと思いませんか。一所懸命育て、一所懸命捕って、お金もうけの部分は関西にお譲りするというところで。この奥ゆかしさを知っていただければと思います。

限界集落が日本でいちばん多く、光ファイバーが日本でいちばん普及している県、徳島について話す吉田さん

それ以外にもいろいろな日本一があって、女性の経営者の率が高いです。また、私は大学時代にそうは思いませんでしたが、仕送り金額がいちばん高いそうです。それから糖尿病の率が日本一です。私の体型を見ていただくとなんとなくみなさん納得すると思いますが、よく食べる、それから歩かない、見えている場所も全部車で行くというところですので、糖尿病が多いです。これは不名誉なお話なので、私もダイエットに励もうかと思っています。あとは、なんとなく観光の場所かなと思いきや、日本でいちばん観光客が少ない県です。47番目に行く県だとちょっと嫌みを言われたりするぐらい観光客、宿泊者の数が少ないと聞いております。

このような日本一もある徳島ですが、今日、みなさんにお話しさせていただくのはリストの下のふたつの点です。徳島県は非常に過疎化が進んでおりまして、いま、人口の半分以上が65歳以上の高齢者が占める限界集落が日本でいちばん多い都道府県です。そういう課題がありつつも、インターネットに使う光ファイバーが日本で普いちばん及しているという新しい面もある県なのです。

徳島県の人口がどれぐらいの勢いで減っているかという現状をとりまくデータがあります。昭和35年から平成22年の比較ですが、我が国全体では35%人口が増えていますが、徳島県の過疎地に行くと53%減っています。この間に人口が半分以下になってしまったというところです。その結果、限界集落(維持していくのが限界になっているという意味で取っていただいていいと思います)の率が全国の中でも、四国の平均に比べても圧倒的に高いということです。限界集落の先は消滅集落になると言われていますので、いま、人が住んでいる集落も徳島県は5年後、10年後、20年後と見ていくと集落が消滅してしまう。このような状況に置かれている徳島県でございます。

フェリシモ:
冒頭に今回5つのテーマで、ということでご紹介しました。この5つのテーマを簡単にまとめたホワイトボードを用意しましたので、1度見ていただければと思います。

5つのテーマ

吉田さん:
今日のお話のテーマですが、まず、東京のITベンチャーをなぜこんな徳島県の過疎地に移したのかというお話と、田舎暮らしのことになってきます。2番目に、悩みが多いしあわせ、それから悩みの少ない不幸。ちょっとこれだけだとわかりづらいと思いますが。それから3番目、起業家(ビジネスを立ち上げる人)が実は田舎にいるんだよということ。4番と5番は本当にこれからの社会のテーマだと思いますが、ひとり何役というのを担っていく時代になるのではないかというところと、一億総パブリックベンチャー。パブリックベンチャーというお話も後ほどさせていただきますが、そんな時代がやってくると思っていまして、この5つについて今日はお話をさせていただこうと思っております。

東京のITベンチャーをなぜ徳島県の過疎地に移したのか

ひとつ目ですね。かなり深刻な過疎化が進む徳島に、わざわざ東京で作ったITベンチャーを移したあたりのお話をさせていただきます。さかのぼると2011年ごろになります。私は2003年に東京で会社を立ち上げてITベンチャーを経営していましたが、約10年近くなって企業経営に本当に大きな悩みを抱えていました。その悩みはいま振り返るとこのふたつだったと思います。東京で社員が採用できなかったということと、私は都会も好きで楽しい面があるのですが、何か物足りないという思いを持ちながら会社経営をしていたことです。

私は徳島の田舎者ですので東京で若い人の多さにびっくりしました。渋谷の交差点なんて、その瞬間に見た人数が美波町の人口より多いぐらいの場所ですので、本当に若者が多いなあと思ったのですが、その東京でまさか社員採用がうまくできないというのは、想定外の状況でした。でも会社を伸ばそうと思うとやはり人が必要ということで、ヘッドハンティングや人材紹介、募集の広告とかあの手この手でお金を使ってやっていたのですが、結果、すべてうまくいかないというところでした。

いまになると、当たり前だと思うのです。東京は確かに若い人が多いですが、その分会社もたくさんあって、かつ人と人のつながりが弱いので、テレビや雑誌、新聞に出ている有名なところには人が集まりますが、名もなき小さいベンチャー企業はそもそも誰も知らない。その中でセキュリティーのプログラマーがほしいというところは完全にミスマッチを起こしていたということです。数年間ずっとその失敗を続けて、やっと「これじゃ、いかんな」と気がつきました。

日本一の都会である東京でダメなら、もうこれは本当に違う発想にするしかないということで、結構破れかぶれとも言われましたが、日本一の東京の逆は過疎地だろうと、田舎に活路を見いだしたいと思いました。私どもは当時数名のベンチャー企業でしたので、東京のような大きな土俵で戦うと負けるのなら、戦国時代にあてはめると関ヶ原で戦うのではなくてゲリラっぽく桶狭間で戦わないといけないだろうと。そして、誰を対象にするかを考えた時に、当時、私もそうだったと思いますが、多くの都会をめざす若者ではなくて、数は少なくても地方がいいという若者にとって魅力的な会社にしてみようと思うに至りました。

東京のITベンチャーをなぜ徳島県の過疎地に移したのかについて話す吉田さん

実はこれ、きっかけがあります。千葉県で、趣味でお米づくりをする機会がありました。不思議なもので、こういうお米づくりとかが何かヒントをくれるのです。機械もなく手でやっていたので人手がすごく必要です。草抜きや稲刈りをする時に誰か手伝ってくれないかなということで友だちを呼んだりしていると、だんだんたくさんの人が集まってくるようになりました。その時に私が気づいたのが、みんな、東京に住んでいても仲間と何か作るとか、土にさわるとか、自分で食べ物を作るとか、そういうことを求めているんだなということと、東京に住んでしまうと、どうしても仕事最優先で、いくらやりたいと思っていても捨てざるを得ない、もしくは優先度を下げざるを得ないということです。私も都内に住みながら千葉の田んぼに行くとなったら週末に片道2時間とか3時間かけて行くわけで、なんとかがんばったものの、これは続かないなと正直思いました。台風がきても週末しか見に行けません。かなり無理をしていて、都会や東京に生きるということは、いくら好きなことがあってもやはり捨てざるを得ないケースがいっぱいあるとその時感じました。

一方で、いま、私どもがいる美波町さんもそのころ非常に課題を感じていました。田舎の典型で人口が減っていく、過疎化していく、加えて高校がなくなるというところです。いちばん影響が大きかったのが3.11です。震災と津波があって、美波町は太平洋に面していますので、次は南海トラフの震災で津波がくるのではないかということで、そうなると会社や工場を誘致と言っても、津波がくる場所に工場を建てたがる人は当然いないということで企業誘致が行き詰まっていたと聞いています。

そういう意味では、東京の採用をやめて別の形をしようとする私と同じように、美波町さんは企業誘致や地域振興で新しいやり方をしないといけないとお悩みだったと思います。ただ、不思議なもので転機がくるんですね。私と美波町にきたチャンスです。地上デジタルにかわるタイミングで、徳島県はテレビがほとんど映らなくなるという事態に陥ったそうです。それまでは海を越えて関西のテレビ電波が飛んできて、それを見ているのが徳島でした。なので、私は徳島にいながら吉本新喜劇を見て育ちましたし、テレビは関西と全く同じでした。ただ、地デジになると電波は飛ばなくなりますので、徳島ローカルしか映らないと。これではまずいということでケーブルテレビを引いて、その結果、徳島県は5年連続1位と書いていますが、最も光の回線がケーブルテレビ網を通じて行き渡っている県になっています。

もうひとつのチャンスは、私は東京にずっとおりましたが、3.11の震災以降、一部の若い人たちも働き方や生き方に対して考えが変わってきたと感じていました。それを裏付けるデータがこの40.7%とか49.7%ですけれども、いま、東京とかに住んでいる方でも半分近い方がいつか、もしくは可能ならば地方に行って暮らしたいと思い始めているというところです。これはもう私たちにとってはチャンスだということで、インターネットの回線がいいので美波町さんとしてはコンピューターの会社を呼ぼうと。パソコンとインターネットさえあればできるのがコンピューター業界のいいところで、それなら徳島で人材採用してみようと思い、このふたつが重なった2012年の5月に美波町にサテライトオフィスを立ち上げました。美波町は海と山と川がすごく近いので、スキューバダイビングもできますし、サーフィンも有名な場所ですし、また渓流で魚釣りもできるような場所です。

都会だと捨てざるを得ないXを大事にできる働き方、「半X半IT」を提唱

フェリシモ:
吉田さんはこの中でどれか熱中されているアクティビティーはありますか。

吉田さん:
私は魚釣りや川遊び、キャンプが好きなので釣りかなと思います。自然が好きな私たちのような人にとっては楽園みたいな場所です。そのような場所にオフィスを作ったので、そこで人材募集といった時に美波町の良さを生かそうということで、ちょっと働き方を提唱させていただきました。それがこの「半X半IT」という言葉です。「半農半X」という言葉をご存知の方いらっしゃいますでしょうか。結構いらっしゃいますね。

フェリシモ:
最近注目されている生き方のひとつですね。

都会だと捨てざるを得ないXを大事にできる働き方、「半X半IT」を提唱について

吉田さん:
塩見さんが提唱している言葉ですが、それをなぞりまして、私のコンピューターの会社にとっては半農半Xの部分はIT業なので、逆に前半の部分を個人の好きなXとして、東京だと捨てざるを得ないXを大事にできる生き方をしませんか、そういう働き方ができる会社になりますということで人の募集をさせていただきました。すると、地方だからこそのXを持っているいろいろな人たちが集まってきました。サーファーだったり、女性ですがハンティングが趣味だったり、コンピューターの仕事をしていますがゆくゆくは農業に携わりたいとかそんな連中が全国から集まってきました。最近は子育ての場所ということで関東からやってきたりと、本当にいろいろな人が集まってきてくれたというところです。

私は釣りが好きなので、時間があれば釣りに行きたいということで、漁師さんから古くなった漁船をもらって、一応、船のオーナーです。無料でもらった船なのであまり偉そうに言えませんが。船のなまえは「アブノーマル」にしています。香川県に金比羅さんという海の神様がありますが、お正月に安全祈願をしてくれて、えらい神主さんが読み上げてくださります。「アブノーマルに~」ってね。聞いている人はみんな爆笑していましたけれども、こういうなまえにして時間があれば船に乗っているというところです。

都会からやってきたほとんどの人がIターンです。東京から田舎にやってきたという方が多いですが、その人にどういうことが起こったかというと、サーフィンが大好きで東京から移住してきた住吉君というエンジニアがいます。彼は東京時代、1日3時間くらい通勤にかけていました。美波町の場合はもう目の前が海ですし、職場と自宅が車で数分みたいな所なので、通勤時間がそのままサーフィンにかわりました。もちろん物価も安いので、彼にとっては田舎暮らしの方が生活の質が上がったと思います。サーフィンのエンジニアが移住してきたということでテレビに取り上げられた映像があるので、見ていただこうと思います。

住吉二郎さんが移住してきた様子を追うテレビ番組

吉田さん:
もう数年前になりますが、サーフィンが好きで移住してきた若者の様子でした。

フェリシモ:
地域で住むと思うと、ゆっくりのんびりしたスローライフのようなイメージをどうしても都会で暮らしていると思ったりしますが、そうではないということですね。

吉田さん:
私たちは別にまったりしたいわけではなくて、東京にいるとどうしても通勤の時間が多くなってしまうので、その分でより自分らしいことに時間を使えればというのが考え方です。彼もさぼりたくて来ているのではなくて、もっとサーフィンができる環境を求めてやってきたと思っています。

フェリシモ:
いま、ちょうど農業などもかなり盛んで、例えば神戸に暮らしていますと北区とか西区で会社員をしながら農業をされている方が私のまわりにはチラホラいらっしゃいます。今日の会場のお客さまの中にも、もしかしたら自分で貸農園とかされている方がいらっしゃるのではないかと思いますが、半XのXの部分はみなさまもっといろいろあるのかもしれません。

吉田さん:
美波町でできるXあれば、北海道ならではのXもあるでしょうし、九州ならではもあるかもしれません。都会にも見方、考え方、働き方を変えれば、いまのXみたいなものは必ずあると思います。

いま見ていただいたように、個人はビフォーアフターがありましたが、もともとは人材をどう採用するかで取り組んだお話なので、会社に起こったビフォーアフターもちょっと見ていただきます。おかげさまでいろいろなメディア、例えばサーフィンやアウトドアの雑誌などが「おもしろい会社ができたよ」ということで取り上げてくださいまして、それをみた応募者が急に増えました。おかげさまで社員数も3倍になって業績もよくなったということで、最初に経営者の悩みみたいなところがありましたが、なぜか東京でうまくいかなかったことが、過疎地に移ってうまくいきだしたということで、本当に会社としてはいいきっかけになったと思っています。

先ほど出たXの部分について「ぜひ考えてみよう!」と書いていますが、みなさんもいろいろな趣味ややりたいことがあると思います。それがいまの暮らしの中では「無理かな」とか「めったにできないな」ということがもしあるのであれば、場所を変えるとか、生き方を変えるとか、いろいろなやり方で無理かなと思っていたものが無理ではなくなることがあると思います。実際、場所を変えることでXを大事にできた人もいるので、みなさんももう1度考えてみたらいいのではないかと思います。


では次のテーマ、悩みの多いしあわせというところです。これだけを見て何がいいたいのかわかりますか。

悩みの多いしあわせ・悩みの少ない不幸

フェリシモ:
普通、悩みが多いと不幸せというか、ひとつひとつの悩みを解決する方が迷わなくてしあわせなのかなというイメージがありますけれども。

吉田さん:
一般的にはそう思うのではないかと思います。先ほど質問いただいた部分とも被ってきますが、私たちいま、東京や都会から田舎に移りましたけれども田舎暮らしって実際どうなんだと。田舎暮らしと聞くとテレビ番組の影響もあって割とスローライフなイメージを持たれるケースが多いと思います。私なんか東京で経営者の友だちからは「徳島に行っている時は息抜きでリフレッシュしてるんだよね」と思われたりすることがあります。やはり田舎というと、のんびりライフというのがイメージかなと思いますが、実際はそうではないというところです。

田舎で、人が少ないこともあって特に若者には次々と声がかかり、いろいろなことに取り組んでる様子

田舎に行くと、人が少ないこともあって特に若者には次々と声がかかります。私たちの会社もお声掛けをいただく中で、いろいろなことに取り組んでいます。例えば、これは趣味ですが、やめている田んぼで会社でお米を作ったり、お祭りも見に行くのではなくて自分たちが盛りあげる側になったり、地元のおっちゃんとお酒をご一緒したり、また、徳島といえば阿波踊りですので、阿波踊りのチームを持ったりというような会社のレクリエーションみたいなところもあります。美波町という小さな町で唯一に近いコンピューターの会社になりましたので、地元の中学校から授業を担当してほしいとか、職場体験を受け入れてほしいとか、地元の高齢者の方向けのITやタブレットの使い方をうちの社員が講義させていただいたりというようなことで、結構田舎に行くと頼られて、いろいろなことに取り組んでいます。すると、地域の人たちから「そんな会社が来てすごい助かる」とか「町に活気が出てきたよ」と言っていただくことができました。

冒頭に、私には悩みがありましたとお伝えしましたが、何かをして「ありがとう」と言ってもらえることを通じて、東京で満たされていなかったのはなんとなくこういうことかなと気づくようになりました。田舎の人は共同で草刈りとかお祭りもみんなで作るものですし、消防団もプロではなく町民みんなが消防団に入って行う自治防災です。当社の社員もサイレンが鳴ると飛び出していく感じで、地域の中で金をもらう仕事ではなくて無償の役割をそもそもやって生きていたことに気づきました。

少し整理してみると、私が東京でベンチャーの社長だというのでちょっといきがっていた頃のライフスタイルのイメージは「とにかく稼げ」と。すると遊びの部分が増やせるということで、私自身はもう稼ぐのを目標にしないといけないのだろうと、そうしたら、もしかしたらしあわせになるかなあと思いながらやっていたと思います。でもいま、私が思うのは「稼ぐ」「暮らす」「遊ぶ」というのは人として当たり前のことで、やはり大人というのは、私は「つとめ」と表現していますが、儲かるとかそういうことではなくて、人として何か役割を果たすというような部分を持ちながら生きていくのが本当の大人だと思っています。田舎に行くとそれが義務という感じでもなく遊びのような部分もあって、明確にわかれているのではなくて日々の暮らしにこういうことが全部含まれている感じかと思います。

先ほどの映像の住吉君は東京から美波町にやってきましたが、いま、仕事や子育てやサーフィン以外に携わっていることをざっとヒアリングしてみました。お祭りや阿波踊りみたいな文化に携わるところもありますが、消防団にも入っていますし、集落の津波の避難路の整備をしたり、学校で教壇に立ったり、いろいろな役割を持ちながらやっています。その彼が数年経ってつぶやいた言葉として「田舎の方が全然忙しい。忙しくてもう悩んでいる暇がない」と言っています。

悩みが多いとひとつの悩みに深く入り込まないで済む

今日のテーマのふたつ目は「悩みの多いしあわせ」ですが、時に悩みが少ないのは私は不幸かなと思っています。東京時代に私もそうだったのですが、稼げば遊べると思うと、稼げないときは本当につらいというか、悩みが少ないとひとつの悩みにグイグイ入っていけるんですよね。そしてつまづいた時にそれに執着してしまうのですが、田舎にいると本当にたくさんの役割があって、どれもこれも大変なのは事実ですが、逆にたくさんあるのでひとつの悩みにそんなに深く入っていけないというか、ひとつ悩んでいても次の悩みにすっと切り替わるので、あまり深く悩みに入り込まなくていいなと思っています。なので、もし都会でなんとなく深い悩みに陥っている方がいるとすれば、私ができるアドバイスは悩みを増やせと。少ない悩みに悩むからそうなってしまうので、もっとやることを増やして悩みを増やしたら、三角形より四角形、四角形より五角形で最後円になるかなと思うので。田舎の良さって、それが嫌で出て行く人もいると思いますが、本当に役割がいっぱいあるので1個1個悩んでいる暇がない。そこがいいところかなと思っています。

フェリシモ:
吉田さんもいま、「あなたの悩みは何ですか」と聞かれたら、あれもこれも言い出すと実はたくさんある……

吉田さん:
もちろんあります。会社を複数やっていますし、地域の中での役割もあるし、いっぱい悩んでいますけれどもバランスが取れていると思います。ひとつの悩みで何日も、ということはまずないので、そこがいいと思っています。地方の良さは、私がやっているような小さな会社でも、個人でも、そこにいるだけで役割が自然と生まれ、汗をかくとありがとうと言ってもらえるところだと思います。そして、このひとりが稼ぐとか遊ぶだけではなくて、社会の中で役割を担っていくことは、見方を変えると、この人口減少社会においてはすごくニーズがあることだと思います。私や住吉君が感じたように、何か東京で物足りないなあと思うのは、その社会の中で役割があることを感じるシーンが薄かったのではないかなと。もちろん田舎のそれが嫌で出て行く方もいらっしゃると思いますが、一部の方にとってはこの田舎の役割の多さが人としての充足感につながるのではないかと。これが私が大人になって田舎に行った時に「こんな喜びがあるんだ」と意外に思った部分です。地方で得た想定外の喜びだったと思っています。

フェリシモ:
このひとりが複数の役目というのは4点目のキーワードに続くところですね。

吉田さん:
本当にそうなってくると思います。共通しているのは、求められることが多いし、いまはそうは思わない神戸や東京も、ゆくゆくこれが何年後か何10年後かわかりませんが、日本全体の人口が減っていった時に実はこうなるのではないかということで2番と4番を入れています。

起業家は田舎にいる

フェリシモ:
神戸も最近は人口流出で、2年ほど前に人口が福岡に抜かれたというニュースがありましたが、何年後かには神戸も人口がどんどん減っていくのを肌感覚として感じるところなのかと思うと、まさにその数歩先の現場を見ていらっしゃるのかなと感じます。

吉田さん:
もちろん神戸もそうですし、東京でも団地や集落で見たらもう過疎化や限界集落化していることもきっとあるのですが、なかなか町の全体感として感じづらいと思います。美波町とか過疎地に行けば、目に映るものすべてが過疎化していますので、すごく自分ごとになりやすいという意味ではそれが可視化されるのが田舎かなと思っています。

ただ、そんな田舎ですが、一方でこのテーマ「起業家は田舎にいる」ということもお話しさせていただこうと思います。起業家とかアントレプレナーとかベンチャーマインドという言葉をご存知かと思いますが、私自身、都会のもののイメージを持っていました。ですから、コンピューターの会社を立ち上げる時も、会社を作る、ベンチャーを作る、イコール東京だと。ビジネスは都会にあり、田舎にはビジネスはないと思っていたのですが、大人になって戻ってみると全然そうではありませんでした。

これは田舎の美波町のおっちゃんたちと飲み会をした時の写真です。この中でビールを飲んで満面の笑みをしている赤いシャツのおっちゃんがいますが、この方が親から譲り受けた仕事は漁船の造船業です。ところが、漁師さんが減ってきて商売がきびしくなった。その中で、お客さんは漁師さんなので、なら別の商品も売ろうと釣具屋を始めたそうです。まじめな方なので、釣れるかどうかわからない釣具は売りたくない、売る道具が釣れるかどうかを確認するということで、いまは漁師にもなられています。結構すご腕で、去年のとある種類の漁獲は1番だったそうです。すごい方です。さらに、日本のプロが使う道具は売れるということでネット通販を始め、時には海外から注文が来るそうです。ただ、そのおっちゃんは英語ができないので、ウイルスがきたと放っていたらアイルランドの大使館から「うちの国民があなたの通販で注文したらしいが全然返事がない」と電話がかかってきて、日本のプロ向けの釣具をお送りしたということもあった。

フェリシモ:
ウイルスではなく。

吉田さん:
注文でした。ここに止まらないんですね。漁師で魚を捕ってくるので、趣味で作っていた干物を私たちが「これおいしいですね」と言うと、「じゃあ売ろうか」ということで、いま、冬場は干物の製造もやっています。

フェリシモ:
船を造っていたのに、いまは干物も作っている。

吉田さん:
船から釣具も作り、釣具屋と書いていますが買ったものではなくて自分で作った釣具で、そして干物も作る。加えて、高齢化していまは船を造る人より壊す人の方が多いです。船を壊すと産業廃棄物になるので資格がいるということで、廃船業もされています。最後に私がすごいなと思ったのは、船を造る技術は究極の防水技術ということで、雨漏り対策の防水業まで手がけられています。全部つながっているのです。闇雲に始めているのではなくて、プロフェッショナルな意識と、このお客さまに別の商品も提供したら喜ぶのではないかという話で、ひとつ親から譲りうけたビジネスからプラス6個のビジネスを作っています。

私はその話を聞いた時にすごいなと思いました。これこそ起業家じゃないかと。企業に勤めながら「いつか起業してやる」と言っている方はいますが、なかなか起業できないじゃないですか。でもこの方は特別ではないのです。美波町には3つ、4つ、5つぐらいの仕事を持っている人がたくさんいらっしゃるので、ビジネスを作るというと東京っぽくなりますが、田舎にも充分いると思っています。

パブリックベンチャー、あわえの設立

そういう先輩や美波町を少し引いて見てみると、少子高齢化や限界集落、学校がなくなってしまう、買い物難民がもうでているとか最先端の課題がいっぱいあります。ビジネスの観点から考えて、世の中が拡大ではなく縮小していく時には縮小社会ゆえのビジネスと、あとは課題が最先端だとすれば、そこのビジネスというのは絶対あると思いまして、あわえという会社を美波町で出会った仲間と設立することになりました。

あわえの紹介を少しさせてください。パブリックベンチャーという言葉を聞いたことがありますか。最近、パブリックベンチャーとかソーシャルベンチャーという言葉が出てきていますが、要は社会のための部分、昔ならそれは国や神戸市さんがやるべきといわれるような部分を、必ずしも営利だけでなく、社会のためになるような地域の課題をビジネスにして取り組む会社のことです。私たちもそのジャンルになると思います。

「おまえ、何で飯食ってんだ」と言われそうなので、少しパブリックベンチャーのことについてお話しさせてください。これはこの間お越しいただいた私どもの会社のオフィスです。明治時代のもう使っていなかった銭湯をお借りしてリノベーションしてオフィスにしています。築110年くらいです。中は銭湯をそのまま使っていまして、脱衣所や番台もありますし、スタッフが座っているのは昔の湯船のふちをテーブルといすに変えて足湯状態にして入っています。こういうオフィスで私たちは仕事をしています。美波町にはオフィスビルがないので基本的に古民家を改修したりしますが、すごく歴史のある建物なのでなんとか残していきたいということでやっています。

あわえがやっているビジネスですが、美波町という典型的な田舎で地域が元気になる新薬を開発しようと思っています。これから神戸も東京もゆくゆくは北京も上海も少子高齢化、過疎化が始まるのだとすれば、日本の最先端の田舎で作ったお薬はきっと売れるだろうという壮大な思いで地域が元気になるお薬を日々開発している会社です。地域を元気にしようと思ったら会社だけでは無理で、地域の方、それから地域に携わる行政の方と力を合わせながらトリプルウィンを目指していこうと思っています。

先輩たちがつないでくれた地域資源をもう1回磨き直す

具体的に行っていることですが、神戸も美波町もそうですが、地域には必ず昔から脈々と先輩たちがつないでくれた地域資源があると思っています。それをコト、ヒト、カネという3つに定義します。コトは歴史や文化、カネは地域の産業です。美波町なら一次産業で神戸なら二次産業、三次産業、たくさんあると思います。最後はヒトの力です。地域の持つコミュニティーの力ということで、この3つをもう1回磨き直そうということでやっています。

ひとつ目の事例について、これはコト、ヒト、カネでいうとカネです。残念ながら美波町の人口が減っているので、地域の食材を地域だけで消費しようとしてもなかなかむずかしいので、都会や離れた人に届けます。プラス、どんどん農家さんが減っているので、次の世代に農業を続けられるようなお手伝いをしようということで、試行錯誤して地元の農家さんたちと一緒にレストランを運営することになりました。阿波尾鶏という売れているけれども知られていない地鶏と徳島県南のお野菜にこだわった「odori(オドリ)」というなまえのレストランを美波町で運営しています。先ほど徳島県に行ったことあるよという方が結構いらっしゃったので、次に行く時は遠いですけれども、ぜひodoriに足をのばしていただければ。阿波尾鶏にこだわったメニューで、すべてのメニューが阿波尾鶏です。鶏肉を食べられない人には残念ですが、お店で食べてかつその場で食材が買えるお店です。

美波町で運営してる、阿波尾鶏という売れているけれども知られていない地鶏と徳島県南のお野菜にこだわったレストラン「odori(オドリ)」

フェリシモ:
実は先日、美波町にうかがった際、お昼ご飯はodoriでいただいたのですが、むちゃくちゃおいしくて、すごい大きなステーキでした。

吉田さん:
満点の回答をありがとうございます。次回お越しいただいた際には徳島県のグルメフェスティバルで優勝したどんぶりも食べていただければと思います。

ほかに取り組んでいることですが、コトですね。歴史や文化を未来につなぎたいということで、田舎の空き家にいっぱい残っている昔の写真、歴史や記憶をITの力で未来に残していこうとしています。おじいちゃんやおばあちゃんから写真をお預かりして全部スキャンし、地図情報の上に乗せて残していくクラウドサービスを作っています。残念ながら美波町に津波がもし来るとすれば家を守るのは現実的にむずかしいので、歴史や記憶を残すために、この写真がいつのどこかを知っている方がいらっしゃるいまのうちに残していきたいということでやっています。

それから、ITと観光の組み合わせということで、美波町にいらっしゃる観光ガイドさんにタブレットやアプリの使い方を私たちの方でレクチャーさせていただきました。タブレットの中に四季折々の動画や音声が入っていて、季節外れのものでもITを使って見ていただけるような観光支援もしています。インターネットやコンピューターの使い方として非常におもしろいということで、大手メーカーさんもスポンサーになっています。ITを使いこなしているおじいちゃんやおばあちゃんがいるのが取材の対象になることもあります。無料なので美波町にお越しになる時にはITを使いこなす観光ガイドさんに観光ガイドをしてもらうとおもしろいと思います。

地域のいまと未来を支える若者を地域に取り戻す取り組み

地方創生において、最後の点、ここが本丸だと思います。地方創生や地方活性化というと、あたかも地方に元気がないみたいな響きがあるじゃないですか。でも私は全くそうではない、むしろひとりひとりの力は地方の人の方がよっぽど元気で活性化していると思っています。問題は、若い世代がほとんど都会に流出してしまってバランスが悪くなっていることです。もう1度、地域のいまと未来を支える若者を地域に取り戻していくべきだろうと。

やはり国も危機感を感じているのは、若い人が全部東京に集まり、東京に集まるとなぜか子どもを産まなくなり縮小再生産され続けていく。人口のブラックホールみたいなものです。その結果、日本の人口が減ってしまう。ではそれをどう防ぐか。若者にもっと地方に行っていただいて、暮らしやすい中でたくさん子どもを産んでいただいてということでいうと、地方に若者が行くということは実は東京から奪うのではなくて、この国のためだという思いもあります。

集落再生ということで、ベンチャー企業誘致をしています。なぜベンチャーを呼ぶのかというと、パソコンひとつでいきなり仕事を始めることができるというフットワークの軽さもありますが、いちばん大事なのは地域が持っている力とのかけ算を起こしやすいことだと思っています。なかなかピンときづらいと思いますので、事例をふたつ出します。

徳島での地方創生で有名な神山町というところで、大阪からやってきたデザイン会社が地元の林業の人たちと一緒に、単に木を木で売るのではなくて、木を使った食器のメーカーを作りました。SHIZQ(しずく)というブランド名で、いま、関西でも阪急のうめだ本店で売っているということなので、みなさんぜひ買っていただきたいと思います。これは地元の林業とベンチャー企業がやってきた結果、起こったコラボレーションです。1000人の工場が来てもなかなか地域とのコラボレーションは起こりにくいですが、ベンチャーの経営者は新しい物やおもしろいことが好きなので、こういうことが起こるひとつの事例かと思います。

もうひとつは私の事例で恐縮ですが、ITの経営者が美波町にやってきた結果、「なぜかレストランを始めました」みたいなことも時には起こるのかなと思います。私たちは素人なのであまり変なこだわりがありません。2016年、東京の女子大生が夏に1カ月くらい美波町の私たちのレストランにインターンでやってきました。シェフと新商品を開発して、1000個売るまで帰ってはいけないということで、がんばって1100個くらい売って無事東京に戻っていきました。すごいですよね。最後は危機感を持って一所懸命ふたりで売り子になっていました。純粋にレストランをやっている人だとやらないかもしれませんが、私たちはレストランでもうけたいというよりも田舎にもう1度価値を取り戻したいということで、レストランも食べ物を売るだけの場所ではなく、学びの場所になるんだと。これは新しい田舎の価値のひとつだと思います。この子たちにとっては六次産業化とか、ものを売ることをリアルに実店舗で学んでいくことができたと思っています。

私たちはベンチャーを呼ぶことと、地域で働く若者をもう1度都会から呼び戻すことにいちばん力を入れてこだわってやっています。田舎の口癖は「いい仕事がないから若者がいない」なので、「じゃあ、いい仕事呼びましょう」ということでベンチャーの誘致をやっています。私はUターンな部分がありますが、実際どんな会社や人が田舎に来ているのでしょうか。

例えば、大阪から来られている、鈴木商店さんというクラウドのシステム開発の会社があります。こちらも築150年ぐらいの古民家をオフィスに変えて、サーフィンが好きなエンジニアたちが開発をしています。一昨年、そこの社員が結婚式をしたのですが、地元の漁師さんのサプライズ演出で「花嫁、漁船で登場!」みたいな、本当に地域になじんでいる会社です。そんな会社もあれば、ご夫婦で東京からお子さんを連れて会社を作るためにやってきたも人もいます。いろいろな会社が東京や大阪から人によってはサーフィンの場所、人によっては新しいビジネスの場所を求めて次々やって来て、この数年で20社近い会社が都会からやって来るという状況になっています。

地方で活躍する人材の育成

一方で、会社だけが来ても働く人がいないと困るので、働いてくれる人を育てることもしています。毎年、地方で活躍する未来の戦力を育てようという思いで大学生を呼んで、最近の言葉でいうとハッカソンになると思いますが、プログラム開発のインターンをしています。これは企業にインターンするのではなくて、美波町にインターンに来てもらいます。学生たちがどんなことをしているかというと、津波の避難路を事前にシミュレートできるゲームを作ったり、美波町名物のウミガメのぬいぐるみにIoTといわれるセンサーを組み込んで、熱中症対策とか、離れた都会のご家族にぬいぐるみがさわられたことがわかるとか、おじいちゃんがぬいぐるみに話しかけたら音声で飛ぶような見守りのぬいぐるみを作ったりしました。こういうことを通じて美波町の課題を知ってもらい、ファンになってもらえるようなことをしています。すると、東京の大学生でも1週間とか10日、地域の課題に真正面に取り組むと、自分のふるさと以上の関係になって、卒業したタイミングで美波町の会社に入るということも起こっています。

地方で活躍する人材の育成する様子。

地方で活躍できる社会人の育成もしています。美波クリエイターズスクールというなまえです。地方で働きたいけれども食べていく自信がない方は多いと思います。そんな方に技術を学んでいただきます。私やこのクリエイターズスクールを企画しているメンバーが思うに、地方には地方の魅力の情報発信をうまくできる人がすごく少ないです。いわゆる広報とかPRというスキルを持っている方はいま、地方ですごく必要とされていますので、カメラやウェブやテキストを書くスキルを学んでいただいて、地方で活躍してもらえるようにスクールをしています。

神戸にいらっしゃると「本当に田舎に行く子なんているの?」ともしかしたらお思いかもしれませんが、ちょっとこの数字を見てください。毎年、クリエイターズスクールで半年くらい美波町に移住してもらって、地域で食える技術を学んでいただいていますが、このわずかな4名とか13名という定員にすごくたくさんの応募があります。そのほとんどが都会で、半分以上が若い女性です。地方から見るとのどから手が出るほど欲しい層がちゃんと地方を向いている。ただ、どうやっていけばいいのかがわかっていないという意味ではマッチングがうまくいっていないのかなと思っています。自分ごとではないという方も多いかもしれませんが、実は若い一部の女性を中心に、地方に答えを求め始めているというのがこの数字が語っていることだと思います。こういう子たちもスクールを卒業して美波町に移住したり、またほかの地域で活躍するプレーヤーになっています。

美波町はおかげさまで若い人たちが増えてきて盛り上がっています。私たちも努力していますし、地域の魅力もありますが、1番の要因は地域の人たちが移住者をおもしろおかしく大事にしてくれるところだと思っています。これは美波町の社会動態人口です。人口は自然に生まれたり亡くなったりというのと、出て行く人、入ってくる人ですが、先ほど話題にでた神戸も社会人口が減り始めたということは、以前は人が引っ越してくるのが多かったのが、いまはたぶん出て行く人が増えているということですよね。これも東京のひとり勝ちみたいなところで、神戸も含めいま、日本中の田舎で出て行く人が増えて入ってくる人が少ない。美波町も実は50年ぐらい社会人口が減り続けていた町です。様々な努力の結果、たった6人ですが2014年には社会人口が増える。たった6人で小さな1歩ですけれども、毎年60人が減り続けている町にとってはすごく大きなことだと思っています。

本来、社会人口は国全体で見るとプラスマイナスゼロですよね。もちろん海外に出て行く方がいらっしゃいますけれども、たぶん日本の場合、いまは出て行く方より海外から入ってくる方の方が多いと思うと、少なくとも国全体でいうとプラスマイナスゼロになると思っていますが、東京圏は毎年、社会人口が10万人増えています。ということは、神戸や美波や九州から東京に10万人を送り込んでいるということです。社会人口が減っていくというのは町の魅力が下がっているということです。日本中で総人口で亡くなる方が多いのは高齢化時代は仕方がないと思います。ですが、町から人が出て行くということは、町の魅力を上げることで防げると思います。私たちもたった1年で甘えている場合ではなくて、もっとやりたいと思っています。

若者や子どもを奪いあわず分かちあう時代

東京に奪われ、地方はどんどん人口が減っていく。これは本当に困ったことですし、見方を変えると人口が減っている中で奪い合うなんて、一体何が生まれるのかと思いませんか。奪い合いをしている場合ではないと私は思います。

ひとりの若者が複数の場所に暮らす、複数の場所で生産する、複数の場所で消費する、こんな時代を作っていかないといけないと思っていますが、美波町でさらに1歩、歩を進めた取り組みがありました。デュアルスクールといいます。知っていらっしゃる方はあまりおられないと思いますが、2016年、徳島県美波町で日本で初めて取り組まれた教育の制度です。この写真に写っている男の子は東京の子ですが、引っ越しや正式な転校なしで美波町の小学校と両方通えるようになりました。お母さんは東京から美波にやって来て二拠点居住をしたかったのですが、なかなかお子さんがいるとできませんでした。けれども、このデュアルスクールという制度が始まったことによって、お子さんも一緒に二拠点居住ができることになりました。これが何を語っているかというと、若者だけではなくて子どもも複数の地域がわかちあう時代がきたのではないかと思っています。

若者や子どもを奪いあわず分かちあう時代について話す吉田さん

神戸の状況は私もまだ詳しくありませんが、田舎に行くと廃校や合併が近づいている学校がたくさんあります。ひとつの地区から学校がなくなると、子供がお祭りに行けなくなったり、だんだん地域の文化と活力がなくなっていきます。一所懸命たくさん子どもを産んでくださいと言ってもすぐには無理だと思います。だとすれば、ひとりの子どもが複数の地域でお祭りに参加したり、複数のところに通うことによって、少しでも廃校が先延ばしにできるかもしれないし、別の対策を打てるようになるかもしれません。ITも進んできているので離れた場所でも同じように勉強できると思いますから、こういう考え方を入れていくべきだと思っています。

ひとりひとりが社会の中で役割を果たす時代がやってくる

最後のテーマは1億総パブリックベンチャー時代です。パブリックベンチャーの定義は先ほどお話しました。民間は稼いで税金を納める、そして政府が税金を富の再分配と公共投資にするという昔ながらの形ではなくて、ひとりひとりが社会の中で役割を果たす時代がやってくると思います。たとえると、野球は9人でやりますが、人口と若者が減っていくと5人とか6人でやるしかない時代がやってくるのだと思います。

フェリシモ:
外野にふたりとか。

吉田さん:
そうです。私は「ファーストとセカンド」みたいな形です。田舎の学校になるともう部活の数が減っています。スポーツさえ人口が減るとそうなっていくし、社会全体が以前は9人でやってたことを5、6人でやるという時代がたぶんくるのだと思っています。その時に、野球でいうと守備の隙間にフライが上がった時に、「僕知らねえ、これ国が捕ってくれんじゃねえの」と思うのか、「これを他人に委ねるんじゃなくて、社会の隙間ができればそこはみんなで埋めよう、自分も埋めよう」と思うのか。この差によってこれからの日本のあり方というか、日本が活力を持ち続けるのか、非常に寂しい国になっていくのかということが変わってくると思います。できれば日本人すべてがパブリックなことに汗をかくような時代にもう一度なってほしい。昔はきっとそうだったのが拡大社会の中で分業にした方が効率がよくなった、でもこれから小さくなっていくのだったらもう1度、ひとりの守備範囲を増やしてひとり何役みたいな時代になっていけばと思います。

フェリシモ:
野球の例でいきますと、9人だったところを5、6人で守るということはそうかもしれません。でも、「じゃあ自分は2役やりますよ」という人は、打席に2回立てるかもしれないと思います。世の中がこうなっていくとふまえて、どんどん積極的に手を挙げていく人ほど活躍の場がこれからもっと得られるのではないかと思います。

吉田さん:
本当にすばらしい。いまのお話、そうですよね。守りだけではなくて攻めもチャンスが増えるということだとすれば、縮小社会では積極的な人ほどチャンスが多くなるということかもしれないですよね。

冒頭にお話ししましたが、もう1回繰り返します。私の地方のお話は「美波はこうですよ」というのではなくて、いま、美波町で、過疎化や少子高齢化もそうですが、一部の若者が都会から美波に来て昔ながらの風習を楽しんだり、もしくは息子さんが都会に行ってしまったおじいちゃんやおばあちゃんを移住者が助けたりすることが起こっています。人口減少社会がこれから本格化するとすれば、美波町に起こっていることは必ず神戸でも東京でも起こります。人口減少社会を拡大社会に戻すようにコントロールできないとすれば、「人より先にこの変化の先頭に立つ」というドラッカーの言葉が何か示しているとすれば、ぜひ日本の最先端の町を見に来ていただきたいと思っております。

ちょっとお誘いですが、美波町には私どもで古民家を改修したゲストハウスも用意しています。1階で仕事をして、2階で宿泊できる古民家ゲストハウスもございますし、何よりおいしい食材がたくさん、四季折々ございます。おもしろい漁師のおっちゃんや農家のおっちゃんたちが待っております。日本の最先端を見ていただくということで、徳島や阿波踊りだけでなく、ぜひ美波町に1度足を運んでいただきたいと思っています。ご静聴ありがとうございました。

第2部

お客さまの質問に答える吉田さん

フェリシモ:
第2部ではお客さまからいただいたご質問にお答えいただきます。それでは早速、いただいた質問用紙の中からいくつか代読させていただきます。「古民家のゲストハウスが素敵でしたが、どこかに載っていますか。予約サイトはありますか」というご質問です。実際に美波町に行ってみたいという方だと思うのですが。

吉田さん:
建物のなまえは戎邸(えびすてい)と言います。ひらがなでいいので「えびすてい、美波」と検索すると出てきます。予約サイトがございますのでそこから予約もしていただけますし、どんなお部屋があるかとかも全部出ているので、そこから申し込んでいただければと思います。

フェリシモ:
ありがとうございました。続いてのご質問に移ります。いまのとちょっと関連しますが、「2泊3日で楽しめるプランを教えてください」ということですが、どんなことがおすすめですか。

吉田さん:
美波の夏というと1番はウミガメの産卵が見られる時期です。ただ、1週間泊まっても見られない人は見られないし、たまたま1泊で2頭の産卵が見られることもあるので、こればかりはカメの気分次第というところですが、ぜひカメの産卵を期待していただければと思います。美波町の役場のホームページに「ウミガメール」というちょっとふざけたなまえのメールがございまして、そこにメール登録しておけば、「カメが上陸していますよ」というメールが来ます。春くらいからウミガメールの登録が始まると思います。もしくは美波町の山の上にウミガメのパトランプがあります。ウミガメが上陸し始めるとパトランプが回り始めて、「いまから行けば見えるよ」と教えてくれます。

カメは普段は夜しか来ないので、夜はウミガメを楽しみにしながら、美波町に2泊するならお昼はやはり海や川で時間を過ごしていただく。もしお子さんやお孫さんもいらっしゃるのであれば、ひとつの場所で海、山、川のよさが味わえるのが美波町のいいところだと思いますので、ぜひともお越しいただきたい。1個だけ忘れてはいけないのが、お昼ご飯はodoriで食べていただくというところかなと思います。

徳島は1番から23番までがお遍路さんのお寺ですが、徳島で最後の23番札所の薬王寺というお寺があります。厄払いできるというので有名なお寺ですので、もし厄年の方が……

フェリシモ:
いらっしゃったらodoriでお昼ご飯を食べて、厄を落とし、ウミガメの産卵を見ると。

吉田さん:
そして戎邸に泊まっていただくのがいちばんいいと思います。ぜひ夏にお会いできればと思います。

フェリシモ:
続いての質問に移ります。「若者をターゲットとしたお話がメインとなりましたが、70歳を目前にした方にとっての活躍の場というのはどういったものがあるでしょうか」というご質問です。

吉田さん:
今日のお話は若者中心になっていますが、美波町はいま、リタイアした方も含めて移住希望者がすごく多いです。いま、美波町でいちばん困っていることは何かというと、移住者さんに住んでもらう空き家がなかなかないと。

フェリシモ:
いま、全国区で空き家問題と言われている中・・・…

吉田さん:
正直言うと空き家はあるのですが、貸家ではないのです。家の中に荷物がたくさん残っているので貸せないというおうちも含めると、なかなか空き家がないのですが、美波町に移住希望の方向けの空き家探しを私の会社もしていますし、町をあげてやっています。美波町としては年は関係なくいろいろな方に来ていただいて、美波町の暮らしはいいなあと思っていただける町にしようとしていますので、ぜひ来ていただきたいです。

活躍の場はどうなのかというところですが、70歳を手前にということであれば、お仕事の面でいうと私の母は70少し前ですが、地元にある食品加工のところで、社員でバリバリとやっております。いつも人が足りないそうなので、そういうのも含めてお仕事はあります。

「いやいや、ゆっくりしたいんだよ。だけど何か美波町の中でお役目がないかな」ということであれば、先ほど美波町をガイドしてくれるおじいちゃんやおばあちゃんがいるとご紹介しましたが、移住の方もたくさんいらっしゃいます。不思議なもので、移住で来た方ほど美波町の良さをみんなにもっと知ってほしいと思ったり、興味を持って美波町の歴史や自然を調べられたりして、ヘタな美波人間より活動に取り組まれています。ボランティアガイド会日和佐(ひわさ)という団体ですが、ガイドスタッフも絶賛募集中と聞いております。美波町の住人だから見える景色と外部から来てくださった方だからこそ見える景色は絶対あると思います。観光の側面でいうと、美波の人が素敵だというものよりも、むしろ外から見に来て素敵だと気づいたことの方が観光客にとって重要なことかもしれないので、ぜひ美波町にお越しいただいて、観光にもご興味があれば、外からきた目で見た美波の素敵をこれから来られる方に伝えるお仕事というお役目を担っていただけるといいなあと思います。

フェリシモ:
特に今日のキーワードの3つ目の「起業家は田舎にいる」という話とも関連すると思いますが、70を目前にして美波で起業ということもそれこそ。

吉田さん:
全然できるのではないでしょうか。去年(2016年)ぐらいに県外から移住されてきた結構高齢のご夫婦で、小さなカフェをスタートされている方もいらっしゃいます。どれだけの現金を必要とするかによって違ってきますが、小さな生業を作りながらということでいえば、何歳で来られてもやれることはいっぱいあると思いますので、来られたらぜひ相談いただければ。美波町にないものとか困っていることはいっぱいあるので、それがビジネスのネタかなと思います。

お客さまの質問に答える吉田さん

フェリシモ:
それでは続いてほかの質問に移ります。「若者の年収はぶっちゃけどれくらいですか」という結構突っ込んだご質問をいただいております。

吉田さん:
私どもみたいに東京や大阪からサテライトオフィスを出しているところはたぶん地域収入格差はほとんどないと思います。東京だから高い、美波だから安いではなくて、同じ会社なので同じ給料という方が一般的だと思います。なので、もし美波町で働くことになった時には、美波町にサテライトオフィスが来ている企業に就職するのは、おそらく都会と全く給与水準が変わらないと思うので、ひとつの選択肢だと思います。先ほど見ていただいたサーファーのエンジニア君は私の会社の社員ですが、給与水準が同じなのでもしかすると東京の上司より暮らしぶりはいいかもしれません。

フェリシモ:
暮らしぶりがいいというのは?

吉田さん:
家賃が圧倒的に安いです。いま、彼は庭付き一戸建てに住んで賃貸で3万円とか。東京で多少給料が高くても、家賃が10万とかするのを思えば、物価が、特に居住の物価が安いので暮らしの質は上がると思います。

ただ、そのサテライトオフィスやIT企業に入らないという前提に立てば、やはりどうしても給与は一般的には低いと思います。けれども、都会にいるとひとつの立派な会社でフルタイム働くというのが未だに日本では固定的な概念であると思いますが、田舎の場合はたくさんの仕事があるので、それを組み合わせることができると思います。ひとり複数のお仕事ということでいうと、例えば午前中はとある会社でお仕事をして、午後は別のところで働く。それってなんとなく不安定なようですが、私が今日申し上げたとおりで、社会が変わって行く中で、先ほどの7つの仕事の漁師のおっちゃんではないですが、ヘタに都会で1千万、2千万稼いでいる人より余裕があるんですよね。ひとつの仕事を失っても7分の1失うだけだとか、6分の1失うだけだという余裕が、心のどこかにあると思います。複数の仕事を組み合わせて必要な金額を稼ぐというのは、実は精神的にも安定するし、これからの生き方、稼ぎ方としてはすごく理にかなっていると思います。そして、田舎は仕事にすごく季節性があります。春はタケノコの○○の仕事、夏は観光の○○の仕事、秋は○○、冬は○○みたいなお仕事を組み合わせると、季節の中で違う仕事をして、スキルをそれぞれ持っていくというハイブリッドなこともできると思うので、少し勇気を持っていただければ充分に食べていける収入を得られる町だと思っています。

フェリシモ:
ありがとうございます。別の質問ですが、吉田さんが大学生活を住まわれた学園都市駅でいま、大学生をされている方です。現在就活中ということで、「IT系は学んでいないのですが、そういった人でも美波町とか地域に行って活躍できる場はありますか」というご質問です。確かに今日のお話の中でも半X半ITという話がありました。Xの部分は自分のサーフィンだったり農業だったりというところで埋めていく、もうひとつの半分はITということで一応固まっていましたけれども、IT以外のことでもあるのでしょうか。

吉田さん:
私のあわえの会社の社員に同じ大学の20代の社員がおりまして、その子の後輩かなと思いますが、IT系である必要は全くないです。ITという言葉でちょっと私の説明も混同してしまったかもしれません。

ITを作る側として稼ぐというのもありますが、ほとんどの方が仕事にITを使っていると思います。ITで稼ぐ仕事というのはプログラマーとかハードメーカーとかそういう方だと思いますが、パソコンは業務で使われていますよね。という意味では、ITを使って稼ぐというお仕事もいっぱいある訳です。いま、美波町にある会社でコンピューター業界もあれば、私どもあわえのように全くコンピューター業界ではない会社もたくさんあります。ただ、いまの時代、仕事をしていくにあたってはワードを使う、パソコンを使う、メールを使うというツールとしてITは必須です。でもそんなにむずかしい話ではなくて誰でもできることですから、使うという意味ではITをぜひ修得いただいて、ただITで食う必要はないということです。

地域には本当にたくさんの仕事があります。お役目はたくさんあります。あわえもIT業ではなく、地域を活性化する仕事です。レストランもやっていますし、時には東京の会社を誘致する仕事もあります。これはもう全く心配なくて、例えばあわえに手を挙げるというのもありますよね。あ、それは苦笑い? 興味持っていただいた? ありがとうね。あわえも絶賛募集中ですし、サテライトに来ている会社にはすごくおもしろい会社がいっぱいあります。美波町のホームページには進出している会社の一覧がありますから、ぜひ見ていただいて、できれば1番上に来るのはアイウエオ順でいうと……、そうですね、お願いします。

フェリシモ:
いまの点と関連しますけれども、私自身、神戸の移住施策の委託事業を担当させていただいた経験もあって、実際神戸で大学生や少し上の社会人、30代、40代の方、また定年を越えられた方、もうみなさま結構都会を離れて神戸から外へ移住してそっちでやってみたいと思っておられる方がかなりいらっしゃるという肌感覚があります。

一方で、その働き先とどう出会ったらいいかがわからないし、なかなか出会えない。吉田さんのような方と出会えたらラッキーだと思いますが、これから行きたいと思っていて、でも出会えない人にはどういうことが求められるのでしょうか。

吉田さん:
いま、日本中でおらが町おらが村に来てよと思っていますが、そこがすごく弱いところで、来てほしい気持ちはわかるけれども、どうやって行けばいいのかわからない時に「誰に聞くの?」「どこで見るの?」というところです。あわえや美波町も含めて、本当に来てほしいのなら来れるようにしてよというところにどれだけよいサービスができるかというのは課題だと思っています。

一方で、美波町もそうですが、移住を希望される方向けのホームページも増えてきていますし、SNSなどで移住者のコミュニティーとか、例えば美波町に集まるような人が集まっている場所もあるので、少し積極的にそこに入っていくと情報があります。移住している先輩たちは自分たちが世話になっているので、次に来ようとする人たちを助けたいという思いがすごく強いです。例えば「徳島のあたたかいところに住みたい」とつぶやいていただいたら、お節介な先輩たちがアドバイスしてくれることもいっぱいあります。いまの時代はしたいと思うことを言葉にすれば、実現する確率が高まる時代だと思います。なので、「実は行きたい」ではなくて、「行きたいんだ」とインターネット上でつぶやいていただいたら、先輩たちが見つけていろいろ世話をしてくれる、みたいなことが本当にあると思います。もしお知り合いの方で徳島でもいいなという方があれば、吉田につないでいただければご案内させていただきます。

フェリシモ:
実際に美波町に行ってみようということももちろんですが、もうちょっと手前でツイートするだけでも何か変わるのではないかということですね。

吉田さん:
そういうアンテナを張っている方はたくさんいらっしゃると思うので、つながっていってキーパーソンに出会うことはいっぱいあります。若い人がいなくてみなさん困っているので、地元のおっちゃんや知り合いから「こういう若い子、いないか」と聞かれます。仕事をお探しならいっぱいネタがあるので、今日は神奈川から美波町に移住してきた私の会社のスタッフも来ていますが、私や彼にも相談してもらえれば、いいお仕事と出会えると思います。

お客さま:
今日は貴重な講演をありがとうございます。藻谷さんが提唱されていた里山資本主義ではNHK広島放送局と組んで広島や島根や鳥取の過疎社会で非常にまずい状態になっているのをときおこされました。藻谷さんは中国山地はそもそも林業社会だから林業をどう復活させるかという取り組みで、木材チップの生産や木材チップを生かして発電所を起こすということをされていました。吉田さんのやり方はITを中心に、東京から来たサテライト的なものも含めて起こしていくと。町の方たちは、いまは非常に乗ってくださっていると思いますが、最終的な落としどころとして吉田さんが目指しているものをお聞かせいただけたらと思います。

吉田さん:
ありがとうございます。地域を元気にする手法やアプローチはたくさんあればあるほどいいと思っています。どの手法が正しいかはやっている人もわからずにやっていると思います。もしそれがわかっているのであれば、そもそも地方はこうはなっていなかったということですので、みんながいま挑戦している、私も含めて挑戦者だと思いますが、明確なゴールがわかっているのではないのですが、ゴールを一所懸命求めながらがんばっているという意味では、いろいろな角度で挑戦することが大事だと思っています。

言っていただいた「私はITを中心に」ということですが、ITに特にこだわっているつもりはまずないんですね。なぜITかというと、いま、地方で仕事がすぐできるということを考えると、ITの人たちは「工場を作ってから行きます」ではなくて、パソコンを持ったら次の日から仕事ができるという意味では非常にスピードが速いという部分があります。そして途中でお話しさせていただいたIT系のデザインの会社が神山という町に行った結果、神山の人たちではできなかった杉を杉として売るのではなくて、おしゃれな食器に変えて、デザインをして、ブランディングして売るということが生まれました。餅は餅屋ではありませんが、同じスキルの人が努力してうまく行かない時に、違う能力を持っている方が来て、そこでかけ算が起こって初めてイノベーションという、いままでとは違う売り方が生まれてくると思います。

最後のゴールイメージについて、私自身はひとつ明確なイメージを持っています。私は美波町に生まれ、親に育ててもらってすごく感謝していますが、私の時代はなんとなく無言の教育として「田舎には仕事がないよ」「田舎にはいい学びがないよ」と言われて育ってきたと思っています。その結果、大学は神戸に行きましたし、ずっと東京で仕事をしていました。けれども、親はどこかで「戻ってこい」と思っているんですよね。すごくそこに矛盾があって、出て行くようなことをなんとなく社会的には言いながら戻ってきてほしいみたいなところで、いまも美波町ではそういう状況なのかなあと思っています。

ただ、いま、私ども含めて、外部からきた連中が美波の中で一所懸命仕事をして、年収は外から来ているメンバーは高いと思いますがたくさん稼いで、一所懸命遊ぶ、そして地域の中の役割を一所懸命果たしています。そういう人間が町の中に増えてきた時に、いま、美波町にいる子どもたちが「あんなお兄ちゃんみたいになりたいな」「あの人たちかっこいい」「あこがれだ」と思ってほしいです。田舎には大学がありませんから、1度は必ず美波町を出ると思います。けれども、東京や神戸、大阪に行く時に片道チケットで行くのではなくて、「あのお兄ちゃんみたいなスキルを持ってこの町に戻ってきて活躍してやろう」という子どもが育つ町にしていきたいです。

その意味では、私たち、私もスタッフも美波町に来ている人間は、地域の中で子どもたちからかっこいいと思われる本当の大人にならないといけません。日本中で地域で生きるかっこいい大人が増えれば、子どもたちの選択肢として地域に残る、戻ってくるということが絶対に増えてくると思います。そんな社会を目指してやっていければ、外から来たよそものも地域のために本当にいい活躍ができたということになると思っていまして、そんな循環をもう1回日本の地域の中に作っていくという思いで日々やっております。ちょっと答えになっているかどうかわかりませんが、そんな思いでございます。

フェリシモ:
ありがとうございます。では、続いていかがでしょうか。では、前方にいらっしゃる男性のお客さま。

お客さま:
しあわせの村の神戸シルバーカレッジの学生です。70歳前ということで、この年になったら、いいことを聞いたらその逆も考えてしまうわけで、吉田さんが自由な時間がとれるとか、サーフィンができるとか、農業ができるとかいろいろおっしゃいましたけれども、やはりその逆もあると思うのです。青いネオンが恋しいというようなこともあって、1度、美波町に就職されて離職された方もいらっしゃると思うのです。離職率は都会の一般企業に比べて高いのかどうかということを知りたいです。

吉田さん:
わかりました。私は複数会社をやっていますが、まずその経験上の話をさせてください。サイファー・テックというコンピューターの会社で、東京や大阪からやってくる人は本当に離職率が低いです。サーフィンがしたい、釣りがしたい、農業がしたいということは美波町に来れば実現します。そして、仕事の中身に関しては、東京にある開発の仕事と美波にある仕事はプログラマーにとっては一緒なのです。そういう意味ではギャップがほとんどない。だから続く。私どもは採用の時に東京にいながら採用することはなくて、必ず美波町に来てもらうようにしています。来てみてやはり違うなというのはあると思いますので、ミスマッチをできるだけなくすために1度は来て滞在してもらうということをしているからかもしれませんが、ほとんど退職はないです。

もうひとつ、あわえという地域のパブリックベンチャーの方は残念ながら退職する人も結構多いです。なぜかというとパブリックベンチャーという仕事の中身はたぶん100人いてもほとんど見えないんですよね。車の会社に入れば車を作るイメージがだいたいわかると思いますが、パブリックベンチャーに入って何をするのかは、そんな産業がほとんどなかったので、たぶんイメージできずに入ってくる方が多いのかなと。そこの仕事のミスマッチで、こんな大変だとは思わなかったとかも含めて辞めるかたはやはりいらっしゃるので、それはもう新しいジャンルの商売だから仕方がないと思います。

おそらく質問の中でいちばん重要なのは、田舎の大変さみたいなところとのギャップで辞めていく方がいるのかどうかというところですが、すべての田舎かどうかはわかりませんが、幸いにして美波町はすごく少ないと思っています。なぜかは完全に分析できませんが、わりと外からの人慣れしてるというか、昔からお遍路さんで見知らぬ人が町の中をぞろぞろ歩いている町なので、外から来る人に対して過敏な反応が少ないと思います。移住者慣れしているところもありますし、結果的に先輩たちがたくさんいるところがあって、比較的、合わずに出て行く方が少ない町なのかなと思っております。

暮らす上で大変なことがもしあるとすれば、車がないとどこにも行けない側面があります。都会では最近車を使わない方もいらっしゃるので、そんな方にとっては慣れるまでの間は大変だったりするし、近くで買い物ができないケースもあります。町中にはちゃんとお店はありますが、そういう暮らしの面はあるかと思います。

長期でお試しで住んでいただけるようなおうちとかも町が用意していますので、ミスマッチをなくすために、1週間、次は2週間、1カ月みたいな感じでお試しができるのであれば、そういう時間を過ごしていただくのがいちばんいいと思っています。よろしくお願いします。お待ちしております。

フェリシモ:

実際私も美波町でみなさまと一緒にお酒を酌み交わさせていただく機会があって、本当に人慣れというか、すごくウェルカムに迎えていただいたなあという印象があります。初めてお会いした方も初めて会ったような気がしないというか、いつのまにか私、源田と申しますが、ゲンちゃんと言ってくれる人たちがたくさんいて、素敵なコミュニティーだと思いました。でもすべての町がそうではないというのは、自分の話になりますが、父の実家が福井のほうで、あまり開かれた雰囲気でないのは身内としても感じていまして、それぞれいろんな町の色によるのかなというところではあります。神戸から移住するとなると、その先の町がどういうことなのかをTwitterとか、ちょっとしたことをきっかけに出会って、まず行ってみる、次は滞在してみると、いろいろなステップで出会っていくのが、ミスマッチがないということでは大事なのかなと感じました。

吉田さん:
やはり人もそうで相性があると思うので、空気を吸う、水を飲む、食べてみる、しゃべってみる、飲んでみるみたいなことをぜひお試しいただければと思いますし、おそらく気に入っていただける町だと思っております。

フェリシモ:
ありがとうございます。では、続いていかがでしょうか。

お客さま:
今日は貴重な話、ありがとうございます。私も釣りが好きでして、学生の時に岩手県のほうに住んでいたことがありました。卒業してからずっと神戸暮らしですが、最近、田舎に住みたいとすごく思っています。50代前半で若くもなく、リタイアしているわけでもないちょっと中途半端な年代です。岡山や鳥取の移住体験会に何回か参加させていただいて、実際移られた方の話をうかがうと、今日吉田さんがおっしゃっていただいたような感じでなるほどと思いました。実際移るとなったら、ネックとなるのはやはり仕事だと思います。いずれ僕もスモールビジネスをやってみたいと思いますが、いきなり田舎に行って生活できるのかという不安があります。実際行ってみないとどういう仕事があるのかわからないと思っていますが、アドバイスをいただけたらありがたいです。

吉田さん:
ありがとうございます。ごもっともで、たぶん年齢に関係なく地方でと考えた時に思う不安だと思います。ひとつは、あわえもそうですけれども、地域で活動しているパブリックベンチャー的な会社は少しずつ増えてきています。そういう会社のホームページはFacebookとかも含めてまめにチェックしていったほうがいいです。いま、おっしゃっていただいた不安は地域移住を止めかねない最大の要因だと思います。その辺をどうクリアーしていくのかということを国も行政も真剣に考えており、あわえのようなパブリックベンチャーにそういった方が入りやすくなるような、例えば地域で起業することに関して制度的な助成金とかを打って、一定期間勉強して住むことに慣れ、かつ地域の課題を知る期間もあり、その先で独立するような制度を用意していたりします。

ひとつ代表的なのは、総務省の地域おこし協力隊という制度です。あれは3年間、給料と活動費、居住費が出て、充分な収入かどうかは人によって判断があると思いますが、その3年を通じて地域の中で何で生業が作れるのかを学んでいただいて独立する制度です。3年間の準備期間がもらえるという意味では活用できると思いますし、あわえもそうですがパブリックベンチャー的なところのホームページを見ていると、定期的に地域で独立するとか、地域に移住する人向けの行政が用意した事業があります。当社でいうとクリエイターズスクールという地域で食えるスキルを、と言っていたものですが、あれは給料を出しながらです。厚生労働省が職業訓練という制度を民間に委託し、私どもは委託事業者として受けて給料を払いながら地域でのスキルを身につけてもらうことをやっています。そういうのは全国で行われていますので、お好みの地域があれば、その自治体のホームページもそうですが、むしろそういう地域ビジネスをしている会社が民間でカリキュラムを組んでやっているので、そういう会社やNPO、一般社団法人のページを一所懸命見ていたらチャンスがあると思います。アドバイスになっていたらいいのですけれども。

フェリシモ:
私も神戸の移住関係で事業を作る側にいて感じましたが、事業を作っているとその先まで用意したいと思いつつ、実際そこまでは橋渡しできない部分があり、吉田さんのお話にあったような民間がやっているもうちょっと現場に近いところに飛び込んでいただくと、もっと世界が広がるのかなというのは事業者側としても感じました。官邸の資料でも「パブリックベンチャー」が地域の稼ぐ力のキーワードになるのではないかと報告されており、これからアンテナを張っているとどんどんいろいろな情報が入ってくるので、僕自身もそういうところにアンテナを広げていきたいと思います。

それでは吉田さん、これにて2時間半の神戸学校も終了となりますが、神戸学校から最後にひとつだけうかがいたいことがあります。最後に、一生の中で成し遂げたい夢についてお聞かせいただけませんか。

吉田さん:
私は、小学生の娘と息子がいるので人の親としてというところかもしれないのですが、いまの日本で私が残念だなと思うのは、子どもがあこがれる大人が本当にいるのかなということです。昔なら坂本龍馬だとか太閤さんだとかがでてきたと思いますが、いまのビジネスマンや政治家で、芸能人とかスポーツマンとかは別として、身近な人たちの中に子どもが本当にあこがれている大人がいるのかなというのをすごく疑問に思っています。

いまの時代に子どもがあんな大人になりたいという自分になりたいなというのと、自分の携わっている地域には、子どもたちが「あんなおっちゃんになりたい」「あんなお兄ちゃんになりたい」と思うような大人がいっぱいいる社会を作りたいというのが自分の子どもと社会のために私が絶対にやりたいと思うことです。後のことは時代によって変わっていくと思うので、いまは地方かもしれないし、ビジネスも何で食べていくなんて私にとっては些末なことです。かっこいい大人、あこがれる大人になりたいし、そんな社会にしていきたいというのが私の夢です。

吉田 基晴さんと記念撮影
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