あいまいでよくわからない
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「社会人として」ってなに?
気にしなくていいマナーや常識
「社会人としてこれはよくない」「社会人としての自覚が足りない」なんてフレーズを耳にしたことがあると思います。
でも、そもそも「社会人として」とはどういうことで、何ができていれば「社会人として」正解なのでしょうか?
この記事では、「社会人として」に含まれる意図や、実は気にしなくていいことを取り上げながら、モヤモヤをほどいていきます。
「社会人として」ってなんだろう
就職するとよく言われるようになる「社会人として」。当たり前のように使われていますが、納得できずにモヤモヤしたり、落ち込んでしまったりする人も少なくないと思います。
わたしも「社会人として」が苦手なひとりです。苦手な理由は二つあります。
一つめは、わたし自身を見てもらえていない気がするから。もちろん、成長のためにも指摘を受ける機会は貴重です。でも、「社会人としての自覚が足りない」などと言われると、わたし本来の形を無視して、大きなクッキー型に押し込められている気持ちになってしまいます。
二つめは、理論が不明確だから。たとえば「社会人として上司に従うのは当然だ」と言われたら、どう感じますか?「社会人であること」と「上司に従うこと」は、かならずしもつながらないはずです。でも「こういう状況だから、上司の指示に従うのが適切だ」と言われれば納得できます。そういう丁寧な理論づくりをせず、一言で無理やり片付けようとする姿勢も、わたしは苦手なのかもしれません。
もし「社会人として」が苦手なら、一度その気持ちに向き合ってあげるのがおすすめです。攻略方法が分かるとゲームをクリアしやすくなるように、自分を知ると感情に対策しやすくなりますよ。
どんなことが「社会人として」必要なの?
気持ちに向き合ったら、「社会人として」に含まれる意図や、相手の求めていることが気になると思います。ここでは、考えられることを三つ深掘りします。
苦労を美徳としている
ことわざ「石の上にも三年」にも表れているように、日本では古来「つらくても我慢強く耐えれば成功する」と考えられてきました。「社会人としてこれくらいは当然だ」という精神論には、我慢を美徳とする古い価値観が潜んでいるのです。
この価値観を掲げる人は、相手にも苦労を経験してほしいと思っています。「苦労した末に成長できたから」と前向きに勧めてくれている人もいれば、「若い人がらくをするなんて」と消極的な考えの人もいるでしょう。とはいえ、周囲の意見に流されることなく、苦労や我慢の有無やグラデーションは自分で選択してくださいね。
会社に尽くすべきと考えている
「滅私奉公(めっしほうこう)」という四字熟語を知っていますか?私利私欲を脇に置き、公や主君のために身をささげて尽くす……そんな考え方です。終身雇用と年功序列が一般的だった時代、会社に尽くすことは自然な流れだったかもしれません。
でも、社会が変化し、成果主義も浸透してきている今、この考え方を古いと感じる人も多いでしょう。プライベートを大切にしたり、副業に取り組んだりしたいのに、「社会人として会社に尽くすべき」なんて言われたら、嫌悪感を抱いてしまいますよね。
他人と違うことを恐れている
才能のある目立つ人は周りからねたまれることを意味する「出る杭は打たれる」。「多様性の時代」とは言われているものの、違いを受け入れる文化がまだ根付いていない面もあります。すると、若者に劣等感を覚えている人が、「社会人として」を掲げて、目立つ違いや短所を指摘するかもしれません。
ただその人は、相手を本気で否定したいわけではなく、うらやましく感じているだけだと、わたしは思います。それでもいやだと感じたら、程よい距離を取り、自分のペースを保てば大丈夫ですよ。
気にしなくていいマナーや常識
「社会人として」必要だとされていることにも、行き過ぎた要望や古い常識があります。ここでは、そこまで気にしなくていいマナーや常識をご紹介します。
上司にはかならず従う
意見を頭ごなしに否定されたり、「うちではこうなっているんだ」と明確な理由を提示されなかったりしても、「自分が間違っているんだ」と落ち込まなくて大丈夫です。もし、そうしたシーンが続くようなら、異動や転職も検討してみましょう。
また、たとえば上司がAだと主張しているけれど、自分はBだと思っているとき、「わたしはこう思います」と意見しても問題ありません。その際は理由を示すことが大切です。そうすれば、会社にとってもプラスな行動になりますよ。
会社のために身を削ることが美徳である
「身を粉にして働く」なんてフレーズもあるように、日本では昔から身を削って働くことに美徳が見いだされてきました。ただ、厚生労働省の調査によると、メンタルヘルスの不調で連続一ヵ月以上休業、または退職した労働者がいた事業所の割合は10.1%と、年々増加傾向にあります。
「身を削ってとにかく会社に尽くすべき」そんな考え方は行き過ぎた要望であり、古い常識です。もちろん働き方は自分次第ですが、周りの目を気にして心身にうそをつく必要はありませんよ。
かつてわたしも「社会人として」のことばに悩んでいました。
苦労することも会社のために尽力することも、決して間違いではありません。
でも、どんな花だって、美しく咲き誇る権利を持っているはずです。
行き過ぎた要望や古い常識にとらわれず、明日も健やかに過ごしましょうね。
STAFF
text:Kamiya Sayoko
illustration:iina