#02 [2023/11.13]

せんぱいたちの、このごろ

自分の心にしまっていた感情がジュワッと溢れ出す、そんな写真を撮り続けたいです。

諏訪涼子さんRyoko Suwa

現在、ウェディングフォトや前撮り写真の撮影・編集を手がける会社で、フォトグラファーとして勤務する諏訪涼子さん、28歳。

学生時代、カメラとファッションが
大好きだった彼女。
大学卒業後、ファーストキャリアとして
選んだのはアパレル業界だった

諏訪さん:当時、カメラを仕事にすることは考えていませんでした。ちょうど海外から服を仕入れて自分のブランドを立ち上げる人が増えてきたころで、私もいずれはそんなふうになれたらいいなと。まずは知識をつけようと、アパレル業界への就職を決めました。

しかし、就職して一年ほど経ったころ、好きだったはずのファッションがだんだん自分から遠のいていく感覚に気づき始める。

諏訪さん:毎月、会社に新しく入ってくる服の中から自分でコーディネートを組み、服を購入するのですが、トレンドやほかの社員が買う服の兼ね合いで、毎回自分がいいと思うものを購入できるわけではありませんでした。自分の好きな服を着るというより、売るためにコーディネートを組む日々。好きなことをするためにこの業界に入ったのに、いつの間にか服のことを考えるのも嫌になってしまって……。

好きなものを好きでい続けられる距離感は、人それぞれ。ファッションは、純粋に消費者として楽しむ距離感が自分に合っていると気づいた諏訪さんは、新たな道を模索する中で、カメラの業界を考え始めたという。

ファッションがダメならカメラかなと、
とても自然に考え始めた

諏訪さん:好きなことを仕事にしたいという思いに変わりはなかったんです。ファッションがダメならカメラかなと、とても自然に考え始めました。

諏訪さんが今の会社を見つけたのはSNS。求人募集はしていなかったが、一か八か連絡してみると、面接をしてくれることになったそう。

諏訪さん:カメラは趣味でしていただけなので専門的な知識はほぼない。でも仕事にしたいと思っている旨を伝えると、研修というかたちで入らせてもらえることになりました。ただ、その期間は無給。基礎を学び終えて、カメラマンとして使えるようになったら正社員として雇ってもらえる、というようなグレーな感じでしたね。

ファッション業界から離れ、アルバイトをしながらカメラの研修を始めた諏訪さんでしたが、その期間は同世代の友人たちとの生活のギャップを感じて、苦しかったと話す。

自分だけ
社会から取り残されているような
気持ちに

何度も心が折れそうになりながらも、自分にはもうこの道しかない!絶対に正社員になってやる!と気持ちを奮い立たせ、ようやく半年後に正社員としての採用が決まったという。

本格的にカメラマンとして活動をはじめて今年で約2年。最後に今の目標を聞かせてくれた。

自分の中にしまっていた感情が
急にジュワッと溢れ出すような
写真を撮りたい

諏訪さん:ある程度のカメラの基礎は習得して、撮影を卒なくこなせるようになってきたぶん、型にはまった写真ではなく、自分の本当に撮りたい写真や自分らしい写真について深く考えるようになりました。最近思うのは、自分の中にしまっていた感情が急にジュワッと溢れ出すような写真を撮りたいということ。本を読んでいるとき、旅行に行っているとき、音楽を聞いているとき、感激や感動とは違う、言葉にはならないけど、なぜか泣きそうになる時ってないですか?そんな、感情がジュワッと溢れるような写真を撮ることが、今の目標です。

学生のころはなんでもできると思っていた。あれもしたい、これもしたいと次々にやりたいことが出てくる。しかし、社会に出ると自分の未熟さに気づいたり、責任感が大きくなったり。いつの間にか安定が約束されないことよりも、精神が安定する道を選ぶようになってしまう。しかし、やりたいことを突き詰めるバイタリティーを持つことは、何歳になっても人生を豊かにするのだと、諏訪さんの話から改めて教えてもらった。

諏訪さん:自分の撮りたい写真が分からなくなったときに、答えをくれた本。何をするにも『意味』や『理由』を求められる社会にちょっと違和感を感じていたのですが、『自分の心がただ動くから』という曖昧なことを大事にしようと思えた本です。何かを選択するときには周りがどうかではなく、自分の心がどうか、それを大事にしてみて!

STAFF
photo/text : Nana Nose