[2025/01.26]
ぼくの、シンプルレシピ
#28. 肉じゃが
肉じゃがほどつらい過去を持つ料理を、
ぼくは知らない。
今から数十年前の昭和の時代。
「肉じゃが」は、ある役割を与えられていた。
家庭料理の象徴として、
「肉じゃがをおいしく作れる女性は家庭的」
と判断され、男性が結婚相手に求める条件は
「肉じゃがをおいしく作れるひと」というのが
一般的な価値観だったというのだ。
さらに、大学ではフェミニズム論の教授が
「男性の気を引くために肉じゃがをふるまう女もゆるせない」
と、鼻息を荒くして言っていたらしい。
(なんじゃ、そりゃ……)
もちろん、そんなナンセンスな論争は
時代の移り変わりとともに消えていき、
理不尽な役割から解放された肉じゃがは
ようやく自分らしさを取り戻した。
今ではただ、じゃがいもをおいしく食べられる、その素朴な味わいで人々から求められている。
誰かが勝手に決めた価値や評価ではなく、
人間もありのままの自分を認めてもらえたら
どんなに生きやすいだろうか――
じゃがいもの煮え具合を確かめながら、
ふと、そんなことを考えた休日だった。
HOW TO COOK
具材を下ごしらえします
野菜と肉を炒めます
調味料を加えます
糸こんにゃくを加えて煮ます
絹さやを加えます
うつわに盛り付けて完成!
【材料(ひとり分×2食くらい)】
◎じゃがいも 中3個
◎にんじん 小1本
◎たまねぎ 1/2個
◎絹さや 7,8本
◎豚肉 120g
◎糸こんにゃく 1袋
【調味料】
・和風顆粒だし 小さじ1
・砂糖 大さじ1
・酒 大さじ2
・しょうゆ 大さじ1
・水 200cc
・サラダ油 適量(炒める用)
保存して明日のおかずに
STAFF
photo / text : けんち(このごろ編集部)
illustration:yuko