[2025/01.26]

ぼくの、シンプルレシピ

#28. 肉じゃが

肉じゃがほどつらい過去を持つ料理を、
ぼくは知らない。

今から数十年前の昭和の時代。
「肉じゃが」は、ある役割を与えられていた。

家庭料理の象徴として、
「肉じゃがをおいしく作れる女性は家庭的」
と判断され、男性が結婚相手に求める条件は
「肉じゃがをおいしく作れるひと」というのが
一般的な価値観だったというのだ。

さらに、大学ではフェミニズム論の教授が
「男性の気を引くために肉じゃがをふるまう女もゆるせない」
と、鼻息を荒くして言っていたらしい。

(なんじゃ、そりゃ……)

もちろん、そんなナンセンスな論争は
時代の移り変わりとともに消えていき、
理不尽な役割から解放された肉じゃがは
ようやく自分らしさを取り戻した。

今ではただ、じゃがいもをおいしく食べられる、その素朴な味わいで人々から求められている。

誰かが勝手に決めた価値や評価ではなく、
人間もありのままの自分を認めてもらえたら
どんなに生きやすいだろうか――

じゃがいもの煮え具合を確かめながら、
ふと、そんなことを考えた休日だった。

HOW TO COOK

具材を下ごしらえします

野菜はたまねぎ、にんじん、絹さや、そしてじゃがいもの4種がバランスよくておすすめです。玉ねぎは薄すぎない薄切り、にんじんは乱切り、絹さや(今回は豆がふくらみつつある「絹さやえんどう」を使用)は筋を取り、じゃがいもは4等分くらいに。長崎産の新じゃがだったので皮はむかずに使いました
正直な個人の感想ですが、肉じゃがは牛肉のほうがおいしく感じます。でも高いので、ふだん作るときは豚肉で。食べやすい大きさに切ります。あと、糸こんにゃくも大事な具材。「肉じゃが用」と書かれた、面倒な下処理が不要なものがスーパーで売っていました

野菜と肉を炒めます

フライパンに油をひいて野菜を炒めます。たまねぎが透けてきたくらいで寄せて、空いたスペースで豚肉を焼いてから、全体を炒め合わせます

調味料を加えます

水に顆粒和風だしを溶いて、砂糖と酒としょうゆを1:2:3の割合で合わせます。リズムがいいので、覚えやすいかもしれませんね
フライパンに一気に流し込みます

糸こんにゃくを加えて煮ます

真ん中に軽くスペースを空けて、糸こんにゃくを投入。クッキングシートを落としぶたにして全体をおおい、フライパンのふたもかぶせます
途中で何度かじゃがいもの煮え具合を確認。菜箸で持ったときに、少し箸が入っていく感じになったらOKです

絹さやを加えます

落しぶたを外して、絹さやを散らしてフライパンのふたをします。蒸気で絹さやを蒸らすようなイメージ。絹さやの中に入っている、小さな豆のシルエットがくっきり浮かんできたらOK

うつわに盛り付けて完成!

各具材のバランスを考えながら1食分をうつわに盛り付けます

【材料(ひとり分×2食くらい)】
◎じゃがいも 中3個
◎にんじん 小1本
◎たまねぎ 1/2個
◎絹さや 7,8本
◎豚肉 120g
◎糸こんにゃく 1袋

【調味料】
・和風顆粒だし 小さじ1
・砂糖 大さじ1 
・酒 大さじ2
・しょうゆ 大さじ1
・水 200cc
・サラダ油 適量(炒める用)

保存して明日のおかずに

今回の分量だと二食分くらいできます。残りは保存容器に入れて冷蔵庫に。「これで明日の夕食も大丈夫」と思うと心にゆとりができて、仕事帰りに寄り道でもしようかな?という気分に

STAFF
photo / text : けんち(このごろ編集部)
illustration:yuko