[2024/06.13]

ぼくの、シンプルレシピ

#14. きほんのおひたし

いつの間にかぼくは、
おひたしを作るおとなになっていた。

『あのときかもしれない』という、
長田弘さんの詩を読んだ。

子どもの「きみ」が
おとなの「きみ」になった瞬間をつづった、
うれしいような、少しさみしいような瞬間――

自分自身と重ね合わせて、
しばらく感傷的な気分に浸った。

浸るといえば、
子どものぼくは、おひたしを食べたいなんて
思ったことがなかった。

「おひたしも食べなさい」と母に言われて
鼻をつまんで無理やり口に入れていた。

ところがある日
「いただきます」のあとに箸をつけたのは
ほうれんそうのおひたしだった。

そのときだったんだ。

ぼくはもう、ひとりの子どもじゃなくて、
ひとりのおとなになっていたんだ。

HOW TO COOK

浸す野菜を用意します

おひたしの定番といえばほうれんそう。一年中、比較的お手ごろな値段で買うことができますが、下ゆでが必要なのでちょっとめんどうな野菜。このくらいの量でひとり分×2食のボリューム感になります
ボウルに水をはって、根もとを中心によく洗います。このときにバラバラになってしまわないように気をつけます。柳宗理のステンレスボウル(23cm)
鍋でお湯を沸騰させて、塩を小さじ1ほど投入。ほうれんそうの根もとから入れます。少ししんなりしてきたら葉っぱも沈めて、30秒くらいゆでます。柳宗理のステンレスミルクパンを使用
流水で洗って、手でやさしくしぼり水気を切ります。しぼるといってもぞうきんみたいにねじるのではなく、上から下に少しずつ握る位置を変えて水気を落とすイメージ。柳宗理のパンチングストレーナー(16cm)
包丁でほどよいサイズに切りそろえます

おひたし液を用意します

水に和風顆粒だし、みりん、しょうゆを合わせます。今回のほうれんそうの量だと、おひたし液はごく少量のため逆に作りづらくなります(化学の実験レベル)。なので作りやすい量にして、余ったものはめんつゆ感覚で他の料理に使っています。

浸します

容器にほうれんそうを並べて入れて、おひたし液がかぶるくらい入れます。時間を置かずに、わりとすぐに食べても充分おいしいです。野田琺瑯のホワイトシリーズ(スクウェア S)

お皿に盛り付けます

豆皿に盛り付けて、かつおぶしを振りかけて完成!ほうれんそう以外に小松菜もおすすめです。豆皿は1枚300円くらいの美濃焼

【材料(ひとり分×2食くらい)】
◎ほうれんそう 2株
・塩 小さじ1 ※ゆでる用

◎おひたし液(作りやすい量)
・和風顆粒だし 小さじ1
・みりん 小さじ1
・しょうゆ 小さじ3(=大さじ1)
・水 180cc

STAFF
photo / text : けんち(このごろ編集部)
illustration:yuko