-部員のつぶやき-
○○な君

新入社員として入社する少し前、わたしは地元から離れて人生初の一人暮らしを始めました。
すべての家電を自分で選んで、家に運んで。
家事の一つをするにも曲を選んで踊っていいし、どんな場所でご飯を食べてもいい。
とても新鮮な毎日でした。

そんな新しい部屋で、土地で、慌ただしく日々が過ぎていく中、
「なんだかこの街好きになれそうだな」と思った出来事を紹介します。

2023年3月28日(火)

まだ入社前のこの日、
冷蔵庫が届いていないのに餃子を包んだ日の翌朝でした。

「タバコポイ捨て〇〇な君 道徳心はどこに」
前から貼られていたのかもしれませんが、この日初めて張り紙の存在に気が付きました。
「オイ!ポイ捨てやめないか!」とは書かずに、道徳心はどこにあるのかと問う気持ち。
なんだかすごく「この人」を感じられます。
どうにも気になり写真を撮っておきました。

2023年6月10日(土)

少し経ったある日、張り紙に変化がありました。
左下にコメントが。

道徳心はどこへ。

この行為に対しての良し悪しは置いておいて、これを見つけた時、街が生きている……!と謎の衝撃がありました。
端っこに小さく書かれている反発の言葉。
言葉の荒さに反して、この文字の小ささも気になるポイントです。
ポイ捨てをした人が道徳心をつつかれ、ムッ!となり、つい書いたのでしょうか。
自分でもポイ捨てが悪いことは知っている。しかし指摘されたことにちょっとした反発が生まれたのかも……。
などなど、知る由もない人の心情に思いを馳せたところで第三者にはわからないのですが、この行為にも色んな背景があるのだろう……と思い、更にこの張り紙が気になる存在となりました。

2023年8月18日(金)

8月中旬。
新人研修期間を終え、配属先も決定し、この日は担当媒体の撮影の帰り道。
あの張り紙は剥がされていました。(しるかバーカを残して……)
張り紙が貼られて約五か月。
私が入社して、研修を受けて家に帰り、ご飯を食べて寝ている間に色んな人が色んな思いで生きている。
このことは忙しなさの中でも覚えておきたいことだなと、個人の存在を街を通して強く認識した出来事でした。

余談ですが、この道徳張り紙の一件から、街の変化を追うのが楽しくなっています。
今ではすっかり芝生ぼうぼうです。かわいいですね。

text&photo:たん(フェリシモことば部)