-部員のつぶやき-
殻破りなたまごにギクリ

目が合ってしまったのです。このたまごと。

出会いは、長野県安曇野市にある絵本美術館でした。
すんっ…と、ひねくれた表情に誘われて。

しおたにまみこさんの「たまごのはなし」は、
あるたまごが、突然意思をもって目覚めてからのお話です。
クセになって何度も読んでいます。

ー主観で話しすぎていない?
ーそれって本当に伝わる方法なの?
ー怒りは、押し付けになっていない?
ーわからないから行ってみるんじゃないの?

たまごのユーモアな語り口調にのせて、
こんなことを素直に思い起こしたり、
ときたまギクリとさせられるのです。
哲学的要素も感じられます。

中でもすごく好きなのは、
たまごがキッチンを飛び出して
家中をさんぽするシーン。

さんぽ中に、おしゃべりな雑貨たちに出会います。
それが、人生の中で出会いそうな
実際にいる人たちのようでおもしろいんです。

「食べ物が動き回るのはみっともない」とブチギレる鉢植えは、
「当たり前だから」「そう決まっているから」と
自分の常識を逸脱する人を非難する人のよう。

「汚れるのが心配、心配」としつこく言うクッションは、
新しいことを始めようとする人に
「きっと失敗するよ、やめておけば?」と、釘を刺す人みたい。
同じことを試したこともないのにね。

「やらなくてもいいことをやっていてうらやましい。
僕の仕事はそうはいかない」と話す時計は、
「自分は大変なのに、他人は楽そうだな」と勝手に決めつける人みたい。
「やらなくてもいいいこと」なんて
他人には判断できないのにな。

でも、たまごはどんなふうに言われても臆さず、
なんならうるさい口をテープでとめてしまいます。
そんな殻に閉じこもらない姿に
勇気をもらったり、尊敬したりしています。

絵童話ですが、大人が読むと、
よりグッと引き込まれるはず。

ちょっとひねくれそうになったとき、
わたしは、また
「たまごのはなし」をパラパラとめくるのです。

text&photo:あんぱん(フェリシモことば部)


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