-部員のつぶやき-
日々の色を取り戻すには
社会人になり、仕事に追われ、時間に押し流されるように日々が過ぎ、
自分の生活や人生が色褪せたものに感じられる時期があった。
自分の感性が少し鈍くなり、いつも何かが満たされていない。
仕事は楽しく充実しているはずなのに、どうしてだろう。
そんなもやもやとした思いを抱えていた時、
『うたうおばけ』(著:くどうれいん)に出会った。
歌人、小説家、エッセイストである著者の愉快なともだちとの出来事や、
日々の生活を綴ったエッセイ本だ。
著者のユーモアがあり、かわいく時にほんの少しひねくれている視点で
描かれる日々の出来事が不思議であたたかく、読み終えた時心がぽかぽかした。
特に、あとがきのことばに強く心を打たれた。
『気がつかないだけで、わざわざ額に入れて飾ろうとしないだけで、どんな人の周りにもたくさんのシーンはあるのだと思います。ハッとしたシーンを積み重ねることで、世間や他人から求められる大きな物語に呑み込まれずに、自分の人生の手綱を自分で持ち続けることができるような気がしています。』
そうか、私はハッとしたシーンを見逃して、流して生きてしまっていたのだな。
なんとなく日々が味気ないと感じていた理由がわかったような気がした。
それから私はできるだけ毎日、1行〜3行程の日記を書くようになった。
大学生の時書いていたような長い日記はきっと続かないから、ハードルをぐんと下げてみた。
その日ハッとしたシーンを書き留める。
どんなに些細なことでも書き留めて、読み返すと自分の生活は案外おもしろい瞬間で溢れているように思えた。
日々が色を取り戻した。
自分だけの、1度きりの人生だから、
ハッとしたシーンを逃さずに書き留めて宝物みたいに集めたい。
text & photo :たっきー(フェリシモことば部)