-部員のつぶやき-
『「やりたいこと探し」に疲れたあなたへ』
やりたいことが見つからない私は、何かに熱中している人にあこがれていた。
たとえば、スポーツ漫画。
登場人物たちが、さまざまな壁にぶつかりながらも、勝利に向かって努力し続ける。
そのひたむきな姿に感化されて、漫画を閉じれば、私もがんばりたい!という気持ちが湧いてくる。
けれど、打ち込むべき課題が、見つからない。
仕事は充実していると思う。わくわくする瞬間もある。
でも、「熱中」とは、何かが違う。
ふいに聞こえてくる、「なんとなく退屈」の声。
本当にこのままでいいのかな?
そんなもやもやを解き明かしてくれたのが、『暇と退屈の倫理学』(著:國分 功一郎)だった。
哲学者である著者が、「退屈」について過去の偉人たちの言葉を手掛かりにしながら、わかりやすく論を展開してくれる。
この本は、いわゆる「やりたいことが見つかる本」ではない。
だけど、やりたいことを探し続けてさまよっている人には、昔の人たちが地動説にたどり着いたときのような、常識が反転する気づきがあると思う。
この1冊を読んだことで、たまに現れる退屈を気晴らしながら、傷跡だらけで生きるのも、悪くないなと思えたから。
本を読むことが好きな理由のひとつは、思考に潜る時間を過ごせること。
どんなに正しいことだったとしても、結論だけでは納得できずに通り過ぎてしまう。
著者の思考の過程をたどりながら、心のなかで突っ込みを入れながら、文字と対話する。
そして出会った一行で、涙が出る。
どうか、「やりたいこと探し」に疲れたあなたも、この本の一行に出会えますように。
text & photo :みう(フェリシモことば部)