-部員のつぶやき-
弱いから、好き。

貧弱なからだつきで気が小さいわたしは、子どものころに「男のくせに弱虫」といやみを言われながら育った。

今思うと、とてもナンセンスな話だけど「男は強くたくましくあるべき」みたいな思想は世の中に根付いていて、まるで真逆のわたしは、申し訳なさそうに生きていくしかなかった。

10代後半からファッションにのめりこんでいったのは、そういった思想が一切ない、感性がすべての世界だったからかもしれない。

そんなころに出会ったある言葉が、ずっと心のおまもりになっている。

『弱いから、好き。』

この言葉を遺したのは、ファッション業界で知らない人はいない人物。

コム・デ・ギャルソンの川久保玲や山本耀司といった、世界で活躍するデザイナーたちを多く輩出したアートスクール「セツ・モードセミナー」を主宰した長沢節さんだ。

1917年生まれの長沢さんは、おそらく今よりももっとマッチョ信仰の時代に生きてきたはず。
そんななかで新しい男性美として「弱い男性美」を主張したのだから、当時はすごくセンセーショナルなことだっただろうと想像する。

やさしいひとは「弱い部分も好きだよ」と言ってくれるけど、「弱いから好きだよ」と言われたことはもちろんないし、そんな観念があるなんて思ってもいなかった。

弱いことは悪いこと――

子どものころに言われた「男のくせに弱虫」という言葉に呪われて、ずっとそう思い込んでいたのだから。

でも、弱いことは決して悪いことなんかじゃない。
むしろ、それが魅力に思えるひともいるんだ。

そのことに気づくことができてから、少しだけ胸を張って生きられるようになった気がする。


text & photo :しもざき(フェリシモことば部)