おそろい短歌 結果発表
たくさんのご応募
ありがとうございました。
〈 金賞 〉1名
絆創膏がすぐに出なくてその代わりに似たような傷を教えてくれた
名前:薄暑なつ
審査員コメント:「絆創膏」をさっと手渡されて解決とされるより、ずっと深い癒しを覚えているように感じられます。「傷」には必ず、それができた原因がありますよね。結果としての「似たような傷」を見せられたのではなく、そういえばね、と似たような経緯を分かち合おうとしてくれたのです。つらかった過去を打ち明けたときに、すぐに励ましたりせず、まずは静かに聞きとめてくれているような。一首の最後に「教えてくれた」が出てくるまで、自分が助けようとしている側のように読めることもポイントです。助けることと助けられることはたやすく入れ替わります。きっと、自分が助ける側になっても同じように、あなたに傷ができたなら、癒えていくまでの時間を一緒にじっと見つめようとするのでしょう。
〈 銀賞 〉2名
あのラストやだってあなたは言うおなじ光を浴びた二時間だった
名前:鳥さんの瞼
審査員コメント:「あなた『は』言う」だから、おそらくわたし「は」違うのでしょう。「ラスト」を巡っての感想は対立していそうですが、がっかりしている様子は感じられません。どうして「やだ」なのかを問いただそうともしていない気がします。感想をお揃いにするために映画館に行ったわけではないからです。何もかも「おなじ」を求めればお揃いになるのではない。互いの感じ方を尊重し、違いながらも惹かれ合っていて初めて、かけがえのないまばゆさに目を細めるような「おなじ光を浴びた二時間」が生まれるのです。
本棚を混ぜて暮らせばほんのりとキャラメルポップコーンのにおい
名前:asano
審査員コメント:眠たくなってきた犬からも同じにおいを感じることがあります。どういう化学反応が起きているのか謎ですが、「キャラメルポップコーンのにおい」は、ささやかな幸せのイメージから生成されうるものなのかも。蔵書を持ち寄って同じ棚に収めるのは、お互いの趣味や価値観に触れ合うこと。「本棚を混ぜて」まだ間もないからこそ、あのできたての、甘く香ばしいにおいが「ほんのりと」漂ってくるのです。映画館と結びつきやすいにおいだからか、どこか物語の始まりを予感させてくれます。
〈 銅賞 〉3名
お揃いを一つの愛と言うならばボウリング場は大きな愛だ
名前:村田凌輝
審査員コメント:同じようなシューズを履いて同じレーンに立ち、同じようなボールを投げる。「ボウリング場」は図らずも「お揃い」がたくさん生まれる場所です。お揃いの組が何レーンにも渡ってパノラマに広がる光景に、両腕を広げて抱きとめるような「大きな愛」の気配を感じます。そもそもボウリング場へ行くシチュエーション自体、同じような日常を過ごす人たちの、お揃いのちょっとした非日常だとも言えそうです。スコアまでお揃いになったら、もう何かしら契りを交わさずにはいられないのでは。
おそろいはおまもり ふたりでいない時あなたの分まで鳴らすつまさき
名前:太田垣百合子
審査員コメント:「おそろいはおまもり」とありますが、キーホルダーや財布など、具体的なお揃いのアイテムは出てきません。「鳴らすつまさき」がお揃いなのです。つまさきが鳴るのは踊りだす合図。わたしが今ここで踊っていることが、今ここにいない「あなた」にとってもおまもりになる。「ふたり」の距離や時間に関係なく、あなたをふと思いやる瞬間のきらめきが、私にとってもおまもりになるのです。二倍大きな音で二倍多く鳴らす心意気が、タップダンスをしているようなイメージを連れてきます。
二人分の不安で運転できている お金がなくても夜景が買える
名前:植垣颯希
審査員コメント:「不安」をガソリンにしています。一人分では前へ進めない、低い平熱を分かち合って暖を取るような動力です。「運転」は、二人で築く人生そのもの。先の見えない夜道に恐る恐る目を配るように営む生活。だからこそ、不意に現れる「夜景」の美しさは際立つでしょう。元よりお金を出さずとも見られるものをあえて「お金がなくても買える」と言うのは、お金がなくても二人でなら、何万ドルの夜景にも匹敵する美しさに出くわすことがあるはず、それを見逃しはしないぞ、という決意のように感じられます。
〈 審査員 〉
岡野大嗣さん
1980年、大阪府生まれ。歌人。単著に『うたたねの地図 百年の夏休み』『うれしい近況』『音楽』『たやすみなさい』『サイレンと犀』、共著に『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』『今日は誰にも愛されたかった』。がんサバイバー当事者による、闘病の不安に寄り添う短歌集『黒い雲と白い雲との境目にグレーではない光が見える』を監修。連載にmeets regional「レッツ短歌!」。2023年度 NHK Eテレ「NHK短歌」選者。
おそろい短歌賞とは?
11月11日は「おそろいの日」。
フェリシモが制定し、一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録もされた、このあたらしい記念日に合わせて、フェリシモことば部が取り組む「次世代短歌プロジェクト」が開催した短歌コンテストです。
くわしくは募集時の記事をご覧ください!