今回の和モノづくりでは、『特紡糸』を使ったチェック生地で仕立てたシャツを作りました。特紡糸というのは、愛知県の三河地方で大正初めごろから生産が始まった、特殊紡績で紡がれる糸の呼び名で、廃棄される繊維原料や繊維工場関連で発生する糸くずや生地の端切れなどを再生利用した、いわゆる反毛糸です。空気を多く含んだふんわりとボリュームのある糸で、この糸で織った生地はとても軽いのにふっくらとした厚みのある風合いが魅力。反毛したワタだけでは繊維が短くて紡げないので、ポリエステル繊維と半々に混紡しているのですが、その分染めると片染め状態になり霜降り状のムラが生まれます。またツブツブとしたネップ感もあり、ナチュラルな雰囲気も魅力のひとつです。日本の生地ブランド「シャトルノーツ」では、昔からこの糸を使った生地をラインナップしており、サニークラウズでも何度か使ったことがあったのですが、今回この紡績工場が廃業することになってしまったと聞きました。ほかの紡績屋さん数軒に同じくらいのバルキーな糸が作れるか持ち込んだみたいですが、このふんわり感は結局どこも無理だったそうです。なので、このシャツに使っている生地は今ある糸を使い切ってしまうともう作れなくなっちゃいます。そんな貴重になってしまった生地を、袖幅が太くちょっと着物のようなデザインのシャツに仕立てました。生地はシャトルノーツの本拠地である兵庫県播州織り、縫製は長崎県の五島列島にある富江工房さんにお願いしています。軽くて厚みがあってふっくらやわらかなシャツができました。