プリント生地メーカーの北高さんで見つけた生地で仕立てました。このプリント生地はロータリープリントで作っています。ロータリーは筒状の版を使い、切れ目のない連続した柄を刷ることができます。ロータリープリントの現場を実際に見たことがなかったので、名古屋にある工場に取材に行かせてもらいました。ロータリープリントの版は、細かい穴の空いた金属板を使います。穴を蝋のようなもので閉じたあと、プリントしたい部分のみ蝋を溶かして染料が出るようにします。穴の形は丸ではなくハチの巣のような六角形で、穴の大きさが違う数種類の板をプリントしたい面積や線の細さによって使い分けています。版づくりでむずかしい点は、図案を版にトレースする際、にじみを計算して線の太さを変えないといけないところ。版では0.1mmの線もプリントすると0.5mmほどになってしまうそうです。もうひとつは版が重なる重版による色の変化。基本は濃い色から順番にプリントしていくのですが、プリントの上に色を重ねるとその部分は薄くなってしまうので、重ねても大丈夫か、重ならないように下にくる版を削るかなど匠の長年の経験で判断します。削ると今度は版ズレの危険性も出てくるので、そのへんも考慮しないといけません。そんな技術を駆使して作った生地をロングシャツに仕立てました。柄は枯れ枝ですが、あたたかみのある服に仕上がっています。