お魚嫌いの買い物
まめさち
私はお魚が嫌いである。小さいころにうなぎを無理やり食べさせられて、リバースしたのがトラウマになっている。親としては、「こんなにおいしいものをなぜ食べないの!」と思うのだろうが、自分たちが「うまい!」と思ったものが、子どもたちにも「うまい!」と思うのかどうかをよく考えてほしいと思う。
そのときの魚の皮のぬるっとした感じとくさみが今なお感覚に残っているのだ。大人になって多少その感覚は軽減したものの、あえて自分から手を出そうとは思わない。なのに昨今の健康ブームはどうだろう!老化予防、血流改善、美容効果と、かまびすしい。
そこそこ健康の気になる年齢になってくるとなおさら、この魚ブームは気になってくるのだ。栄養があると言われる「尾頭付き」は、皮と骨をきれいに取ってくれて、ツナ缶状態にしたら大丈夫。しかも魚のくさみが残らないよう下処理を丁寧にしてくれていないとだめである。
「それは栄養のあるところをみんな捨ててる」と友だちは言う。だいたい私のわがままを聞いてそんな丁寧なことをしてくれる人はいない。生来のめんどくさがり屋なので、「自分で」などありえない。財布をはたいたら、有名料亭はやってくれるだろうが、毎日の食卓にはかなり遠い。
この話を会社でしたら隣のF子が、「これ」と自分が担当するサンプルを出してきたのがさかなのが缶詰。缶のデザインがかわいい。それだけでくさみがなさそうに感じる。
「かわいいやん」と言ったとたん、解説が始まった。
南海トラフ巨大地震での被害想定「津波予想高34.4m」と発表された高知県南西部の黒潮町。「そんなこと言われたら、黒潮町に人は住まないやん。で、人口がどんどん減っていってさびしい町になっていったんやて。そこで残った人が考え出したのがこれやねん!」(ジャジャ~ン)「黒潮34.4!」
「津波を怖れて逃げるだけじゃなく町を守るため、地場産業を守るため、過疎から逃れるため、日本一防災を考える町にしようと防災時の非常食になる缶詰を作ってん」
なるほど、ものすごく前向きな発想だ。「しかもおいしい」というのである。F子の大きくて丸い目の中に炎が燃えている……
ものすご~く前置きが長くなったが、燃える炎に気おされて、買ってみることにした。これでお魚問題が解決できると問題のいくばくかは解決できるかもしれない。
届いた缶詰のふたをあけるとこんな感じ。お魚以外にしめじとかも入っている。このオイル、まさか魚くさくないだろうな、と不安がよぎる。
あったかいごはんと混ぜてみた。かいわれなども入れてみる。「ごはんのあたたかさと魚のくさみがまじりあったら、すごいな……」あいかわらず、私の頭は魚くさい味を警戒している。
見た目は、いけてる。食べてみると……
お!あんまり魚を感じさせない!!食感もふにゃ~っとつぶれる魚っぽさがなく、しっかり歯ごたえがある。もう少し塩味がきいていると思っていたので調味料は何も入れていなかったが、醤油を一滴たらしてみた。うま~い。これは、いける。
一缶目の安心感で、次の缶「黒潮オイルのごろっとカツオ」は卵とじにしてみた。こっちは味がしっかりしていたので、調味料なし。これも魚くささは気にならない!う~ん、魚嫌いに展望が開けてきたぞ!
3缶目、お魚のパテ。これはいかん!そもそもパテは苦手である。しかもパテって、パンにつけるしかないではないか。というわけで、オリーブパンにクリームチーズを塗り、パテを置き、思いっきり荒めの胡椒をまぶす。
これはぎりぎりだなあ。生臭くはないけど応用が利かない。とはいえ、不合格とは言いがたい。お魚嫌いの私としては、60点くらい。だけど3缶あわせると80点くらい。問題は3缶1300円と少しグルメなお値段。とはいえ、安いけど食べない缶詰を置いておいてもいかがなものかとお買い物続行。問題は、ローリングストックしすぎて、ちっともストックできないところだな。
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