みなさまはプラナリアって知っていますか?
編集部でも初めて聞くこの生物、生体を知れば知るほど、どんどん深みにはまることに。見た目もかわいく(初めてみるとぎょっとしますが、だんだん愛らしく思えてきます)再生医療へ活用のためのに研究されている“プラナリア”。
今回は、基礎生物学研究所でプラナリアの研究をする阿形清和所長と、プラナリアの生体を生かしたグッズを開発したフェリシモのYOU+MORE! 企画担当のお話を紹介します。
阿形 清和(あがた きよかず)
基礎生物学研究所所長、京都大学名誉教授。プラナリアの再生研究の分子・細胞レベルでの解析を展開
プラナリアってどんな生き物?
川などに生息する体長5〜30mmほどの大きさで、魚でも虫でもない扁形動物門三岐腸目に属する生物です。
三角形の頭に小さな目が2つ並んであり、平べったく細長いからだで水中を滑るように移動します。からだのどこからでも再生できる生き物で、切るほどにどんどん増える“再生のチャンピオン”なんです。
プラナリアの魅力はどんなところですか?
ユニークな見た目や、頭の横の「耳葉」と呼ばれる部分をヒラヒラさせながら動くところがかわいいんです。
私は血が苦手なので、切っても血が出ないのもいいですね(笑)。プラナリアは雌雄同体で、環境によって卵で殖えたり自ら2つに分裂して殖えたりします。
人工的に3つに切断すれば、それぞれの断片から再生して3匹になるんです。
この不思議な生態はダーウィンをはじめ、多くの学者たちを魅了して
きました。私も30年以上プラナリアの研究をしていますが、魅了され続けています。
プラナリアがヒトを救うってどういうことですか?
プラナリアが再生できるのは、失われた部分を補い、再生できる「幹細胞」を全身に持っているから。さらに切り離された時にどの部位や組織が失われたかを把握して、どこに脳や目を作るかという位置情報を制御する遺伝子もあるんです。
幹細胞から臓器やからだが再生されるプラナリアのメカニズムを解明したことが、ヒトの再生医療の進展にもつながっているんです。実際にプラナリアという生物がこの世界に存在していることが何よりも心強く、私の研究の励みになっていますね。
フェリシモにもいた!プラナリアに魅了された人
「ポケットを叩くとビスケットが2つ、3つとどんどん増える歌があるじゃないですか。そういう感じで、ポーチが3つになったら面白いなと思って考え始めたところが最初のきっかけです。」
プラナリアのように、分裂して増えるポーチ。
「3つのポーチを裏側の綿テープで繋ぎ合わせて、接続できるようにしています」
「内側に頭や尻尾が隠れていて、生地を引っ張ればニョキニョキっと再生されていきます。」
「こんな感じで短めの子がでてきます。」
「ファスナーが短くてとても使い勝手がいいとは言えないのですが、それでもあえて3つのポーチにするというところにこだわりました。バッグからプラナリアが1匹出てきて、またもう1匹でてきて「何それ?」って盛り上がってほしいです。
リップクリームやイヤホン、ヘアピンなどを入れるのにちょうどいいサイズにしています。」
プラナリアと一緒に暮らせるクッション
「商品の企画前に「プラナリア クッション」で検索すると、すでにプラナリアのぬいぐるみを抱っこしている人の画像が現れて。実はそれが基礎生物学研究所の阿形所長との出会いです。
研究所の広報の方が、阿形所長を紹介するときにどうすれば何をやっている人かが分かりやすいか考えて、思いついたのがプラナリアを大きくしたクッションだったようです。」
「きちんと研究に基づいた 生体を表現できた方が、プラナリア好きの人も喜んでくれるかなと思ってお声掛けをしたら”ちょうど商品にしたかったんです”とお返事をいただいて、監修していただくことになりました。」
今回モチーフにした、研究所にいる岐阜の入間川で採れた「GIプラナリア」の目は、18度傾いていて光の方向を感知でき、明るいところから逃げる性質があります」
「実はプラナリアの体表には繊毛が生えていて、毛の向きは頭から尻尾に向かっているので、起毛素材を使ってそれを表現しました」
「所長がプラナリアの生体表現で1番大事にしていたのは、胴体にある咽頭でした。餌を食べるときに、おへそのような位置にある咽頭と呼ばれる管を伸ばして吸い込むように体内に取り込むのですが、その咽頭の出入り口を刺しゅうで表現しました。」
「この子は双頭(そうとう)というのですが、頭がふたつあります」
「プラナリアの頭を縦にカットすると双頭として再生します」
「右巻きの子は、頭から尻尾にかけてまっすぐカットすると、カットした断面がぎゅっと縮むのでこんな形になります。
5mmから3㎝と言われるプラナリアは、犬や猫みたいに抱きしめたり撫でたりできないけれど、クッションにすることでギュッとできるのでプラナリア好きさんに喜んでもらえるとうれしいです」
切っても切ってもプラナリア
今回再現したプラナリアは、岐阜県の入間川で採取した「GI(ジーアイ)」という、基礎生物学研究所で育てているプラナリアです。採取場所の違いで、色や形がちがったり、目の角度が全然違うのだそう。
どんな動物でも自然の中から採取してきたものを実験室で増やすことはむずかしいが、今では10万匹にも増えて、日本だけでなく、世界中の研究室に配られて実験に使われています。
プラナリアについてもっと知りたい!と思った方は、阿形所長の著書「切っても切ってもプラナリア」がおすすめです。採集、飼育ガイド、実験方法がかわいいイラストとともに紹介されています。
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