2024.12.17

「喫茶ソワレが大切にしてきたこと、三代目店主に聞きました」

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暮らしの文化プロジェクト

暮らしを彩る文化を守りたい!

FELISSIMO / GO! PEACE!

昭和23年創業、京都・四条西木屋町にある「喫茶ソワレ」は、世代を超えて愛されるお店。
青い灯りに包まれた店内は、壁やついたてにいたるまで、彫刻家によってレリーフがほどこされ、東郷青児や小磯良平の絵画が飾られています。看板メニューは、カラフルなゼリーポンチ。心ときめくものと出会える、喫茶店の文化が次の時代へ続いていくように、「喫茶ソワレ」の夢のような世界から素敵な雑貨をつくりました。
創業時の雰囲気を大切に受け継ぐ、三代目店主、下山純子さんにお話しを伺います。

喫茶ソワレ

昭和23年創業。京都・四条西木屋町で三代続く、行列ができる人気店。青い灯りの中、BGMはなし。ぶどうのレリーフや東郷青児の絵など乙女心くすぐるものばかり。看板メニューはカラフルなゼリーポンチ。
https://www.soiree-kyoto.com

喫茶ソワレ

喫茶ソワレの世界観を愛するプランナーの、念願のコラボ企画。
ゼリーの色合いや透け感、店内の青い光やインテリア、空気感まで再現したいと、こだわり抜いて作った3商品です。

「ゼリーポンチ」、「ゼリーワイン」、4月13日の喫茶店の日や7月14日のゼリーの日などにお目見えする限定メニュー「夜会のゼリーポンチ」をポーチに。
ソーダを注ぐだけであこがれの「ゼリーポンチ」が再現できるグラス。
店内の青い灯りをイメージしたブルーのソックスには、店内のインテリアやモチーフが散りばめられています。

戦後まもなく創業した、店主の思いを大切に

―昭和23年創業、戦後間もないころに、こんな素敵なお店をつくられたなんて驚きです。
下山さんは創業者、元木和夫さんのお孫さん。お祖父さまとの思い出はありますか?

祖父は、新京極の花遊小路で雑貨店を営んでいました。幼稚園のころ、プレゼントしてくれたおもちゃはフランスのもので、ほかの友だちが持っているものとはちょっと違うなと、子ども心に思いましたね。
戦時中、祖父は40歳になっているにもかかわらず、召集されましたが、戦地には送られず、1年ほどで戻りました。
こんな年齢で召集されるなんて終戦も近いと感じ、戦争が無事に終わったら、やりたいことをやろう、そう思ったそうです。

―その思いが、店づくりの原動力になったのですね。壁や梁(はり)、ついたてにまでレリーフがほどこされていて、美しい装飾に感動します。

祖父の友人で、フランス留学経験のある、彫刻家の池野禎春さんが手がけられました。壁や梁、ついたて、メニュー立てもそうです。階段を上がったところの間仕切りは、フロア側に大きく咲いたひまわり、階段側は、その後ろ姿が彫られているんですよ。ぜひ見ていただけたら。

階段を上がったところにある、ひまわりのレリーフ。裏側もぜひ、お店で。

―店内を包む青い灯りも、「喫茶ソワレ」ならではですね。

友人である、大学教授で染色研究家の上村六郎さんから「青い光は女性を美しく見せる」と聞いて、創業時から。スタッフの女の子たちも「肌がきれいに見える」って言いますね。
当初は、蛍光灯に青いセロファンを巻いていたんですよ。
年月がたつと色あせるので、取り替えながら。私が学生のころには青い蛍光灯に変わりました。
コロナ禍に工事をして、今は以前と変わらない青色が出せるLEDになりました。時代による変化はありますが、創業時の思いを守っていきたいと思っています。

青い灯りに包まれた1階奥の席。

―雰囲気そのままに受け継ぐのは、やっぱり大変なことですね。

古いものですので、次々と不具合が見つかり、直すのが大変ですね。年に1度は、1、2週間にわたって休みをいただき、メンテナンスしています。椅子を張り替えたり、修理したり。各テーブルの木彫りのメニュー立ても、ポキッと折れてしまうことがあるんです。木彫の修繕は、だれにでもできることではないので、今は池野さんのお弟子さんのお孫さんに、修復を受け継いでいただいています。

母の愛情から生まれた、ゼリーポンチ

―下山さんは、お店を受け継ごうと思っていましたか?

二代目である父が倒れた時、どうしようか、やっぱり悩みましたね。
まだ子どもが小さかったですし、スタッフの退職も重なりましたので。
それでも、なくしてしまったら、同じものは二度とつくれない。
母が考案した、ゼリーポンチを残したい気持ちも大きくて、とにかく一回、やってみようと思い継ぐ決心をしました。

5色ゼリーがかわいい、ゼリーポンチ。神戸の地サイダーが注いである。

―看板メニューのゼリーポンチは、お店の雰囲気にとても合っています。ゼリーミルクや、ゼリーワインもあるんですね。

もっと女性に来ていただけたらという思いもあって、はじまりました。創業時は、大人のサロンといった趣で、コーヒーを飲みに来る男性客が主体。お酒も出していて、深夜2時まで営業していた時期もあったんですよ。
ゼリーミルクは、牛乳嫌いだった私のために、作ってくれたことがきっかけなんです。
牛乳を砂糖で甘くして、カラフルなゼリーと、牛乳臭さを消すためのミントも入っていました。まだ幼稚園くらいのころでしたが、食べた時のことは覚えています。
ゼリーはおいしかったけど、牛乳嫌いは治りませんでしたね。
ミルクに代えてサイダーを入れたのが、ゼリーポンチ。2025年に誕生50周年を迎えます。
母は若くして亡くなったので、なおさら、セリーポンチが母の生きた証に思えて、店を受け継ぐ決心につながりました。
流行に流されず、続けてきたおかげで、いまはゼリーポンチをお目当てに遠くから来てくださるお客さまも多く、うれしく思っています。

世代を超えて愛される、喫茶店は宝物

創業者が店のイメージに合うと東郷青児の絵画を飾っていた縁もあり、東郷青児本人が画家の佐々木良三と来店し、以来たびたび訪れた。コースターやタンブラーなどに入るイラストは、この店のために描いたもの。

―素敵な空間も、ゼリーポンチも、「喫茶ソワレ」に来てこそ、楽しめる。ここだけのものと出会える、喫茶店は宝物だなと思います。

京都は、長く愛される喫茶店があって、店ごとに雰囲気が違っておもしろいですね。それぞれに個性があって、ここにしかない。長く続けていらっしゃることに、とても励まされます。
私は、学生時代にここでアルバイトをしていたおかげで、なんとなく店のことがわかっていたから、継ぐことができました。私の子どもたち4人も、同じく、ここでアルバイトを経験しているので、いずれどうするか、みんなで考えてくれたらいいなと思います。

シースルーソックスのモチーフにした、ステンドグラス。

―受け継いでよかったなと思うのは、どんな時ですか?

母娘三代でお店に来てくださるお客さまも多く、「こんな素敵なお店を知っているなんて、おばあちゃん、すごい」って、話されているのを耳にして、うれしかったですね。
久しぶりに来て、懐かしんでくださるお客さまもいらっしゃいますし、できるだけ長く続けたいと思っています。
―扉を開けたとたん、わくわくする、このときめきをたくさんの方に、楽しんでほしいと思います。
お話をありがとうございました。
今回、ゼリーポンチをモチーフにしたポーチやグラスは、商品ができあがるまでに何度もサンプルを見せてくださって。
ゼリーの透明感やフルーツまで、こだわってつくってくださって、思いを感じました。
シースルーソックスにも「喫茶ソワレ」のモチーフが散りばめられていてかわいいですね。
たくさんの方に楽しんでいただけたらうれしいです。

GO! PEACE!なポイント✌🏻️

心をこめてつくられたものだから、時代が変わっても、愛され続けるのだとお話をお聞きして思いました。
喫茶店はときめきをくれる。日常の中で楽しむことで、つないでいきたいですね。

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