つなぐ、つなぐ。パッチワークのいろんなかたち

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兵庫県宝塚市山本。ちいさな商店街に真っ白なたたずまいの一軒の雑貨屋さんがあります。
インテリアデザイナーでありモダンキルトの教室を主宰する丸井 康司さんにお話をうかがいました。

モノから人へつなげていく

「パッチワークする時間を通じて、あなたの世界がもっと楽しくなるように」をコンセプトに掲げた「Patch-Work-Life」は、インテリアデザイナーの丸井さんが主宰する少人数制のモダンキルト教室です。

 

三角や丸などシンプルな形で構成された16パターンで基礎レッスン。無地布とシンプルな形が描き出す躍動的なデザインが楽しい

丸井さんは業界ではめずらしい男性のキルター。講座は、丸井さんが修行しながら構築したカリキュラムで進められ、デザインは丸井さんが教えつつ、パッチワークの技術は、丸井さんが信頼するキルターさんが講師をしています。

大学で建築を学び、設計事務所勤務を経て家具メーカーのデザイナーへ転身した丸井さん。そこで目にした、生地資材などがわずかな時間だけ使用され捨てられていくことにふと疑問を持ち、生地の再利用方法として小さなハギレもパーツになるパッチワークに着眼したそう。「ヨーロッパやアメリカの、自由な発想から生み出されるモダンキルトが、めちゃくちゃかっこいいなと思ったんです」と、まずそのデザインにほれ、日本のインテリアや文化にもこの幾何学模様を取り入れたいと閃いたそう。

丸井さんのデザインが生まれる場所。

一方で、デザイナーとしては、とある本から「コミュニティデザインで社会課題を解決するのも、デザインである」ということを知ったそう。モノよりも人をつなぐデザインに興味を持った丸井さんにとって、パーツをつなぎ合わせて大きな1枚を形成するパッチワークが、人やモノやコトをつなぐ概念に重なり合わさって、キルト教室を開きたい、という未来の夢につながったのだそうです。

白と黒の四角いピースをつなげた二次元コードキルト。実際にスマホをかざすとちゃんとページに移動し、その場の空気が賑わう。「作品がモノではなくコトにつながる……そんな融合が僕の中ではおもしろい」と語る丸井さん。

それからまずは丸井さんがキルト教室に通い、先生のもとで基礎から学ぶように。「キルトだけじゃなく、教室運営を学びたい、と目的をはっきりと先生に伝えることで、先生はそういう目線でいろいろと指導してくれたんです」 50~80歳の女性に混じり、いい意味でギャップを楽しみながら教室通いをし、半年後には先生のアシスタントに。いつも先生の教室運営を傍らで学びながら、3年間の下積みを経て、友人とともに独立しました。

インテリアと手芸の融合を目指して

「デザインから学べる」と評判の丸井さんのキルト教室は、柄布を使用せず、無地布のみで柄を作り出すおもしろさにフォーカス。

幾何学模様やシンプルな円形などを組み合わせたモダンなパターンと色の組み合わせが学べます。「一緒に何かやりたい」という仲間も次第に増え、デザイン講座を丸井さん、教えるのが好きな人が技術指導を担当する、現在の「Patch‐Work ‐LIfe」のスタイルになりました。

教室の場所も、都心のシェアオフィスから2年前に今の場所に移転。「空気感がのんびりしたところに、こもれる場所が欲しくなって」。雰囲気やたたずまいも教室に通いたいなと思う大切な要素だと言う丸井さんは、インテリアショップとアトリエとキルト教室とが共存する、一風変わったスペースを作りました。小さな商店街の中にあるので、「ここ、何屋さん?」と聞かれることもしばしばあるそうですが、おばあちゃん同士の会話で「あそこの兄ちゃん、感じええで」なんて言ってもらえて少しずつ街に溶け込んできたそう。

愛用の裁縫箱には糸巻きほどの小さな針山やハサミ。これだけあれば何でも作れる。

「今はイベントの準備をしたり、カリキュラムを見直したり、デザインの仕事も多く、パソコンをさわっている時間のほうが長いんですよね」と過去の作品をいとおしそうに見つめる丸井さん。針糸を持つ時間は少し減っているからこそ、たまに縫い物をすると時間を忘れてしまうほど没頭するそう。思考が煮詰まると30代のころはビジネス書を読んでいたのが、今では小説に手を伸ばすなど自分のエリアから出て、楽しむ方を選ぶようになりました。

風景写真から色を抽出して作った作品。微細なニュアンスはステッチで表現。

「ちょこちょこ制作するのが好き」と語る丸井さん。針糸を持つ時間は癒やし。

フットワークも軽く、遠方でも会いたい人に会いに行ったり、海外のアーティストにインタビューを試みたりすることも。そうしたリサーチから「人によって、好きな色や表現って驚くほど多様で、それをうまくパッチワークに落とし込みたいな……」とか「もっと針糸に慣れてない生徒さんが簡単におもしろくパッチワークできないかな」なんて、丸井さんの思考はめぐり続けているそうです。

絵を描く、図面を作る、縫う、建築もインテリアも手芸も実は近いと感じる。

カリキュラムを構築することでキルトを習いたい人と、キルトを教えたい人をつなぐ、お店がご近所さんをつなぐ……。「デザインを通じて、自分のやりたいことがちょっとずつカタチにできていているのかな」と手ごたえを感じる一方で、「自分が目指す理想にたどりつくには、きっと途方もなく『時間』がかかるんだろうと思っています。インテリアと手芸を融合させ、人と人とのつながりをデザインしていくという僕のライフワークはこれからも続いて行きます」

 

第28回潮風のキルト展

開催日時:2022年11月18日~20日丸井さんとさまざまなメンバーで結成された「Patch-Work-Life」が審査員を務める潮風のキルト展は、高知の砂浜美術館で毎年開催される野外キルト展。
詳しくはこちら⇒ https://sunabitempo.jp/sanka/detail.php?sc=1

 

 

Patch-Work-Life
丸井 康司(まるいこうじ)さん

インテリアデザインを専門とし、兵庫県宝塚市ではたらく人の家具と雑貨の店「The WorktuRe」を営業しつつ、キルト教室も主宰する。「あなたがパッチワークすれば、世界はもっと楽しくなる。」がモットー。
Instagram:@patch_work_life
HP:https://www.patchworklife.jp

はたらく人の家具と雑貨の店
「The WorktuRe」

阪急宝塚線 山本駅 徒歩3分
営業日: 水・金・土 11:00〜16:00 ※土曜日のみ17:00まで

Instagram:@the_workture
HP:https://theworkture.com/

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