世界最大規模のキルトフェス「International Quilt Festival」/ ニューヨーク散歩

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NYの街は徐々に活気を取り戻しているとはいえ、まだアートイベントは再開されないものも多く、少し寂しい冬になりそう……。そんな時、手芸好きの友人が「やっぱりテキサス州は元気だなぁ」とひとこと。一体何のことかと聞いてみると、世界最大規模のキルトフェス「International Quilt Festival」が開催予定とのこと。質の高い作品が世界中から集まることで有名なこのイベントこそ、アートが見たくてずっとウズウズしていた僕の欲求を満たすのに打ってつけではないですか!?

NYから飛行機で3時間半、やってきたのはテキサス州の大都市ヒューストン。ヒスパニックと白人のカルチャーが美しく調和したこの街は、近年多くのアーティストが移り住み、アートの集積地としてこれから益々注目度が上がりそうなホットな街です。


会場であるGeorge R. Brown Convention Centerに着くと、入り口はキルトバッグを持った手芸愛好家でいっぱい。1975年から毎年開催されているこの老舗フェスも、去年はコロナウイルスの影響で中止したので、みなさんこの2年間、どれだけ待ちわびたことでしょう。

世界中から集まったさまざまな生地を見ればインスピレーションが湧くこと間違いなし!?

入場してまず目の前に広がるのが、手芸関連商品を扱うメーカーのブース。今年は例年の半分の規模にはなりましたが、それでも全米各地から集結した大小さまざまな300近いブランドが、所狭しと並んでいます。針や生地などベーシックなアイテムはもちろんのこと、ショッピングサイトでもなかなか見つけることができないユニークなビンテージボタンや装飾品でフロア全体が満たされていて、キルティングの初心者から上級者までみな思い思いに楽しんでいます。また、近年需要が伸びてきているロングアームキルティングマシーンの最新商品を売り込むメーカーもたくさん出店しており、体験できるブースには行列ができるものもありました。

糸は日本製のものもとても多い。抜群に高品質で大人気とのこと。

これらのブースをまわって行くだけでもおなかいっぱいの満足度なのですが、やはりこのフェス最大の見どころは「Judged Show」。17の異なるテーマ別に作家の受賞作品が展示されているセクションです。アメリカだけでなく、世界中から厳選された作品数百点をこの目で見ることができるので、これはめったにない機会! 作品の一部はウェブサイトでも見ることができるとはいえ、キルト作品特有のやわらかさ、立体感が生み出す光と影、また写真かと見間違えるほどの作品の精緻さは、この会場でしか味わうことができません。アーミッシュキルトのような幾何学模様の、これぞキルトといった作品が僕にはたまらなくいとおしく、特にまるい模様を多用した作品には曼荼羅のように吸い込まれるような感覚があって、何枚も欲しくなってしまうほどでした。たくさんの素晴らしい作品を生で見ることができて、これは本当に来てよかった!

最高賞を獲得した、千葉 幸子さんの「Rondo」。百花繚乱、まるでひとつひとつの花が輪をなって踊っているかのよう。

さまざまな文化を反映した作品が一堂に集結。自粛によるトイレットペーパーの買い占めをテーマにした作品も。

フェス運営チームのボブ・ルジエロさんにもお話を聞くことができたのですが、開口一番「コロナの危機を乗り越えて、なんとか開催できて本当によかった。まずはそれに尽きます。一緒にがんばってくれたチームに感謝したい」とホッとした表情。パンデミック中にマスク作りから手芸を始め、キルト製作に興味を持つようになった方々が多くいたようで、そのおかげでキルト業界は大忙しとのこと。実際にこのフェスは初日から想像以上に多くの方々が訪れていて、これから彼らがどのような作品を作ってくれるのか、大いに楽しみだとうれしそうに語ってくれました。

最後にボブさんにオススメの作品を訊いてみると、19世紀から続くアフリカンアメリカンの女性達の参政権運動を表現した作品群「Access Delayed」、南アフリカ共和国のマプラ刺しゅうでパンデミックの苦難を表現した「Women from the Winterveld」の2点を挙げられ、アメリカの人種問題にアートを通して向き合おうという、このフェスの姿勢を感じました。


フロリダ州やテキサス州など米国南部、また南アフリカ共和国から、黒人コミュニティーの文化、歴史を取り上げた作品群。独特の色味に魅せられる。

例年に比べて日本からの参加者が少なかったようですが、来年は日本からも参加しやすい状況になっているといいですね! ちなみにテキサスはBBQも最高においしいですよ。

※ 池澤さんがおとずれたInternational Quilt Festivalの公式サイトはこちらです。

池澤 崇

「好きなこと以外はやらない」というポリシーのもと、自由の国アメリカ・NYで日本文化スペースRESOBOXを運営中。趣味は登山と居合道とバイオリン。NYに住む日本男児3人でポッドキャスト「オールナイトニューヨーク」も配信中。ぜひ聴いてみてください。https://www.resobox.com/

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