母に編む 手編みの贈りもの / いとしい手づくり

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トマト色の手編みのセーター

母にセーターを編んでいます。モヘアとメリノの2本どりで編む、軽くてふわふわのシンプルなセーターです。ここ何年か、販売しているパターンの試作を兼ねて、年に2〜3着、編んでは贈っているのです。

 

実家の母は、五人の子を育てた専業主婦です。わたしと違ってたいへん社交的な人で、お友だちがたくさんいます。少しおっちょこちょいで若干落ち着きはないのですが、明るく素直で、人生と人を肯定的にみることのできる、楽しい人でもあります。ちいさいころのわが家には、そんな母に悩みを聞いてほしい、いま思うとちょっと変わった人たちが、時々ふらりとやってきてはお茶を飲んでいきました。

わたしが編んだセーターを、母はいつも喜んで着てくれます。なんといっても、それはとてもいい話のきっかけになるからです。


「あらまあ、それ、新しいセーター?」。お茶を飲みながらお友だちがこう云います。すると母は「そうなの、これ、娘が編んでくれたの」(胸に手をあてながらニコニコと)。
当然(そうせざるを得ないとしても)お友だちは盛大に褒めてくれ、母はうれしく、話はここから子どもたちの近況、互いの毎日のあれこれと、幾重にも広がっていくというわけです。

セーターを編むときは、どんな色がいいか、母に聞くことにしています。シックな色を選ぶときもありますが、彼女が選ぶのはたいてい元気な色で、それがまたよく似合います。今回、選んだのも、冬空に映えそうな真っ赤なトマト色でした。

市川 慎子
海外の手芸・手仕事関係の書籍を扱う「ひるのつき」を営むかたわら、編み物パターンを制作販売。元・古本屋「海月書林」店主。

Instagram:@noriko_ichikawa_(編み物) @hirunotsuki(店)

Shop:hirunotsuki.jp

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