南米チリで活動する男性メンバーのみの編み物グループ / ニューヨーク散歩

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青空ワークショップで編み物を楽しむ、男性メンバーだけの編み物グループ

僕は世界中にたくさんのあみぐるみ作家の友人がいるのですが、ほとんどは女性。男女同権の考え方が比較的進んでいる欧米であってもそれは同じです。
編み物とはそういうものだよ、と漠然と思っている方も多いと思いますが、しかし、そこに一石を投じる「男たち」が今、世界で注目を浴び始めています。
友人たちに聞いてみると「え、知らないの? 彼らは世界を変える人たち。絶対に一度会うべき!」なんて、絶賛の嵐。これは興味がわかないはずがありません!

彼らの名は、Hombres Tejedores(オンブレス・テヘドレス)。編み物作家のクラウディオ・カスティージョさんを中心に、南米チリで活動する男性メンバーのみの編み物グループ。僕自身、「男性のニッターがもっといたら作品の幅が広がるのになぁ」と思っていたところだったので、その想いをぶつけてみようと取材の申し込みをしたところ、「喜んで!」とのお返事。メンバーのひとりであるビクター·ロハスさんにお話をうかがうことができました。

グループ結成のきっかけは、2016年6月に開かれた「Worldwide Knit in Public Day」。チリにおいて編み物は伝統的に女性がするものという固定観念がある中、「男性である自分たちが編む姿を多くの人たちに見せることで、何かが変わるかもしれない」と思い立ったそうです。

メインの活動は、月一回の都市部の野外スペースで行われる青空ワークショップ。インスタグラムなどで告知をすると、毎回80名もの人々が参加し、おおにぎわいになるとのこと。やはり参加者は男性限定なのかな? と思いきや、女性も子どもも歓迎していて、編み方もかぎ針編みでも棒針編みでも何でもOKと、とってもオープン。となると女性参加者が多くなりがちなので、男性の知り合いを多く招待するように気をつけているそうです。


現在はチリだけでなくアルゼンチン、コロンビア、メキシコにもメンバーがいて11名で活動をしているのですが、興味深いのは、メンバーの多様性。栄養士、ジャーナリスト、プログラマー、ダンサーなど幅広い職業の方々が所属しているため、グループの活動に関しての話し合いにもさまざまな意見が集まって、とても有意義だそうです。

編み方の違いなんて関係ない。ここはかけがえのない、友人との交流の場。

そんな彼らの活動ですが、性差を是正する活動を行う教育団体や公的機関の支援もあって、年々急速に広がりを見せています。特に近年世界的な広がりを見せるフェミニズムの活動が大きな助けになったそうです。女性が本来持っている権利を主張することで、男女にかかわらず自分の性について考えるきっかけができ、「編み物は女性だけがやるものって、本当にそうなの?」という彼らのシンプルな問いに多くの人たちが気づき始めたのです。


彼らはどうしても「政治的な活動を行うアクティビスト」というイメージをもたれがちですが、ビクターさんはHombres Tejedoresについてこう語ってくれました。「ここは社会に対してメッセージを発するアートを創る場ではあるけれど、それと同時に、編み物をしながらかけがえのない友人を創る場でもあるんだ。それぞれの編み方の違いなんてまったく関係ない。そんなことより、信頼する仲間たちと手を取り合ってひとつの目的に向けて協力し合い、心から感じるものを創り出せる場があるということは、楽しいなんていうレベルじゃなくて、最高の喜びなんだ。だから、僕らは他人が何を言おうが気にならないよ。自分たちが信じたことをやり続け、多くの人達に気づきを与えたい」


その活動に対して社会的な反発も常にあるそうですが、彼らが編むという行為を通じて築き上げた結束力は何よりも強い。そして彼らの活動の魅力はきっとこれからも多くの共感者を集めていき、より一層大きなムーブメントとなっていくだろうと感じました。ちなみに、常に新規メンバーを募集中で、興味がある方はまずは毎月のオンラインワークショップに参加してくださいとのこと。日本のみなさまもぜひ!

池澤 崇(いけざわ たかし)
「好きなこと以外はやらない」というポリシーのもと、自由の国アメリカ・NYで日本文化スペースRESOBOXを運営中。趣味は登山と居合道とバイオリン。 https://www.resobox.com/

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