手編み用の糸ができるまで 〜FACTORY TOUR REPORT〜

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いつも手づくりで使う糸ってどうやってできるんだろう? やさしい糸の風合いにふれていたら、ふとそんな疑問がわいてきました。そこで今回は人気のキット「オーガニックコットンの植物染め かぎ針編みマルチクロスの会」で使用している糸に注目して、生産している糸工場さんを取材し、糸が生まれるところを見学させていただきました。

 

手間に撚りをかけて糸ができるまで

手芸好きさんなら身近な「糸」。綿やウールなど糸の種類はいろいろありますが、素材が違っても基本的な製造工程は同じだそうです。今回はオーガニックコットンを原料にした先染め手編み用糸のできるまでを教えていただきました。

 

1.綿花を育て収穫

オーガニックコットンの原料となる綿。トルコ・エジプト・インドなどの農家が大切に育て、収穫します。

 

ぎゅうぎゅうに圧縮された状態で運搬されます。

2.原綿に加工する

綿の果実の熟してはじけた綿毛の部分だけを集めます。製品によっては着色などの加工をし、運びやすいように圧縮します。

3.ほぐす

圧縮された原綿を放置しふくらませた後、ほぐすところから、この紡績工場での加工が始まります。

4.綿カスを取り除く

混打綿(こんだめん)工程という、原綿に混ざっている綿カスやごみを取り除く工程です。その際に出る綿カスは布団の中わたに使うなどエシカルな取り組みも積極的に行っています。

 

混打綿工程でシート状に伸ばした状態。

5. 調合する

着色済みと生成りの混打綿を調合します。先染めの原綿を使うことにより染料や水の使用量を少なくできます。(生成りの時はこの工程はありません。)

6.混ぜる

空気で攪拌し、層になるように降り積もらせたりしながら、むらなく混ぜ合わせます。機械だけでなく人の手が加わることで、よりむらのない仕上がりになります。

 

色糸の場合、混ぜるタイミングや割合でほどよい色ムラが出ます。

7.繊維をそろえる

繊維をそろえながら、混打綿工程でも取り除けなかった細かいかすや短い繊維を取り除きます。この際に出るカスが落ち綿といわれます。

 

コーマ糸というよりなめらかな糸を作るときはコーミングというさらに繊維を整える工程を加えますが、今回のオーガニックコットン糸はあえてこれをせず、素朴な質感を生かしています。

8.引き延ばす

練条(れんじょう)といわれる工程で、繊維を束ねつつ引き延ばします。繊維がそろって糸に近づいてきたのがわかります。

9.撚りを加える

ここで初めて撚りを加え、粗糸といわれる糸の赤ちゃんができあがります。まだまだ弱く、引っぱると切れる状態です。

10.さらに引き延ばす

必要な太さになるよう撚りながら引き延ばし、単糸ができあがります。いちばん細い状態の糸です。

11.撚り合わせる

⑩でできた8本の単糸を、風合いをつけながら撚り合わせれば完成です。

 

目的の糸に合わせた本数の単糸を撚り合わせ、糸が完成します。

12.巻く

運びやすい状態に糸を巻き取ります。その後、製品に最適なサイズに加工されます。

 

機械化が進んでいますが、人の手が不可欠です。

こうして、適度に縮れのあるやさしい風合いの糸として、編む手に心地よく、春夏の手編みにもピッタリな糸になりました。

 

取材協力

ナイガイテキスタイル
1887年創業の紡績メーカー。日本で初めて「杢糸」を製造するなど高い技術力で高品質・小ロット・短納期生産のよりよい素材や製品を開発。国内外、幅広く展開しています。

 

石井撚糸株式会社
異なる2本以上の糸を組み合わせ、撚り数、糸の供給スピードを調整することでさまざまな糸を生産。特殊な表情を持たせた意匠撚糸を企画、製造しています。

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